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魔力ゼロと判明した途端、婚約破棄されて両親から勘当を言い渡されました。でも実は世界最高レベルの魔力総量だったみたいです
ひじり
異世界恋愛ロマファン
2024年11月08日
公開日
30,579文字
連載中
生まれつき、ノアは魔力がゼロだった。
侯爵位を授かるアルゴール家の長女として厳しく育てられてきた。
アルゴールの血筋の者は、誰もが高い魔力量を持っていたが、何故かノアだけは歳を重ねても魔力量がゼロから増えることは無く、故にノアの両親はそれをひた隠しにしてきた。
同じく侯爵位のホルストン家の嫡男モルドアとの婚約が決まるが、両親から魔力ゼロのことは絶対に伏せておくように命じられた。
しかし婚約相手に嘘を吐くことが出来なかったノアは、自分の魔力量がゼロであることをモルドアに打ち明け、受け入れてもらおうと考えた。
だが、秘密を打ち明けた途端、モルドアは冷酷に言い捨てる。

「悪いけど、きみとの婚約は破棄させてもらう」

元々、これは政略的な婚約であった。
アルゴール家は、王家との繋がりを持つホルストン家との関係を強固とする為に。
逆にホルストン家は、高い魔力を持つアルゴール家の血を欲し、地位を盤石のものとする為に。
だからこれは当然の結果だ。魔力がゼロのノアには、何の価値もない。
婚約を破棄されたことを両親に伝えると、モルドアの時と同じように冷たい視線をぶつけられ、一言。

「失せろ、この出来損ないが」

両親から勘当を言い渡されたノアだが、己の境遇に悲観はしなかった。
魔力ゼロのノアが両親にも秘密にしていた将来の夢、それは賢者になることだった。
政略結婚の呪縛から解き放たれたことに感謝し、ノアは単身、王都へと乗り込むことに。

だが、冒険者になってからも差別が続く。
魔力ゼロと知れると、誰もパーティーに入れてはくれない。ようやく入れてもらえたパーティーでは、荷物持ちとしてこき使われる始末だ。
そして冒険者になってから僅か半年、ノアはクビを宣告される。

心を折られて涙を流すノアのもとに、冒険者登録を終えたばかりのロイルが手を差し伸べ、仲間になってほしいと告げられる。
ロイルの話によると、ノアは魔力がゼロなのではなく、眠っているだけらしい。
魔力に触れることが出来るロイルの力で、ノアは自分の体の奥底に眠っていた魔力を呼び覚ます。
その日、ノアは初めて魔法を使うことが出来た。しかもその威力は通常の比ではない。
何故ならば、ノアの体に眠っている魔力の総量は、世界最高レベルのものだったから。

【1話】魔力ゼロと判明した途端、婚約を破棄されました

 雨の止まない、ある日のこと。


 ノア=アルゴールは、婚約者に己の秘密を打ち明けた。

 そして返ってきた言葉は……


『ノア。悪いけど、きみとの婚約は破棄させてもらうよ』


     ※


 生まれつき、ノアは魔力がゼロだった。

 侯爵位を授かるアルゴール家の者たちは、誰もが高い魔力を有しており、長女であるノアも両親の期待を一身に背負っていた。


 同じく侯爵位のホルストン家の嫡男――モルドアとの婚約が決まり、両家は固い絆で結ばれることとなった。


 だが、ノアが歳を重ねるにつれ、両親たちは次第に焦り始める。

 それもそのはず、ノアの魔力量が一向に増えず、ゼロのままだったからだ。


『何故だ? 何故お前は魔力がゼロなのだ? それでも私の娘か?』


 父の言葉に、ノアは頭を下げることしか出来ない。

 魔力量を増やす為、私設兵を引き連れ魔物狩りに励んだのは、一度や二度ではない。

 それでも結果は空しかった。


 暫くすると、魔力がゼロであることを、ノアは両親から伏せておくように命じられた。

 もし、ホルストン家の耳に入れば、ノアとモルドアの婚約が破談になるかもしれないからだ。


 けれどもノアは、隠し事をしたまま結ばれることを望まなかった。

 己の秘密――魔力ゼロであることをモルドアに打ち明け、全てを受け入れてもらおうと考えた。


 しかし結果は、婚約破棄。


 元々、これは政略的な婚約であった。

 アルゴール家は、王家とのパイプを持つホルストン家との関係を強固とする為に。

 逆にホルストン家は、高い魔力量を有するアルゴール家の血を加え、地位を盤石のものとする為に。


 だからこれは、当然の結末だ。魔力がゼロのノアには、何の価値もない。


 雨に打たれながら岐路に着いたノアは、モルドアとの婚約を破棄された旨を両親へと伝える。すると、唯一の価値を失くしたモノを見るかのような視線をぶつけられ、一言。


『失せろ、この出来損ないが』


 その台詞を最後に、ノアはアルゴール家を追放されることとなった。


     ※


 雨はまだ止まない。降り続いている。

 とはいえ、ノアの胸は躍っていた。口元には笑みを浮かべている。


 アルゴール家を追放されたノアだが、己の境遇に悲観はしなかった。

 政略結婚の駒として利用されることは無くなり、その呪縛から解放された今、新たな一歩を踏み出す良い機会なのだ。


 魔力ゼロのノアが、誰にも言わずに秘密にしていた将来の夢がある。

 それは、賢者になることだ。


 アルゴール家の屋敷には数多くの書物があり、中には冒険譚も含まれる。

 それを目にして、文字を読み進め、冒険の世界に焦がれた。

 幾つもの魔法を扱う賢者に、憧れた。


 魔力ゼロでも冒険者になることは出来る。そしていつの日か、賢者になってみせる。

 その思いを胸に抱きながら、ノアは単身、王都を目指すことにした。

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