あたしの家はおもちゃ屋さんだ。
お店には、毎日たくさんのお客さんが訪れる。お客さんたちは棚に並べられているおもちゃに夢中で、表情はとても明るく皆一様に楽しそうに見えた。
だけど……あたしは嫌いだ。
お店が繁盛するのはいいことかもしれないけど、そのせいであたしは友達と一緒に遊んだりする暇がなくなってしまった。毎日が退屈で、つまらないと感じていた。
二年ほど前に入荷したおもちゃの名前は〝時の迷宮〟といい、今一番人気のあるカードゲームだ。お父さんやお客さんたちから遊ぼうと誘われることもあったけど、あたしはその誘いを断り、今もずっとお店のレジで仏頂面を続けている。それはある意味、お店の手伝いを任されているあたしからの唯一の反抗でもあった。
お店の奥の部屋には対戦用のテーブルが設置されていて、一ヶ月に一度、カードゲームの大会が開かれている。その度にあたしは忙しくなるし、せっかくの休日が台無しだ。
はぁ……、早く閉店になってほしい。
どうせカードゲームなんかつまらないんだ。あたしには興味すら沸かない。
ほら、お店のドアが開いたと思ったらまた二人お客さんが入ってきた。あたしと同じ歳くらいの男の子と女の子が、仲良さそうに手を繋いでいる。なにがそんなに楽しいのか、あたしにはまったく理解できないよ。
つまらない日常があたしのことを狭い空間に閉じ込めて、無常にも時の流れは過ぎ去っていく。あのときのあたしは、きっと憂鬱だったに違いない。
だけど……あたしは知ってしまった。
あいつと初めて言葉を交わすことになる春先の出来事は、一生の思い出になるはずだ。
そう、これはあたしとあいつが織り成すちょっとだけゲームなおはなし――…