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「生配信での暴露」2

 それからシュートは、私立天成中学校の本性・闇を全て暴露した。今の校長や教頭が世間体に触れないよう校内の虐めの公表を隠蔽していたこと、教師たちに虐めは見て見ぬふりをしていろと命じて彼らがその通りにしていたこと、出資金の援助をしてくれている大企業の会長の子どもを贔屓していたことなども話した。

 そこからさらに、その大企業の会長の子ども…中里優太がシュートを虐めていた主犯であることも暴露した。


 『え……虐め?」『あの学校虐めあったのを無かったことにしようとしてるってこと?』『中里大企業って国内トップの超有名企業じゃん』『その息子が、SHOTに虐めを!?』


 次に自身の虐めの内容について暴露する。クラスメイト一人を虐めから助けたことがきっかけで虐められるようになったこと、助けてあげたクラスメイトからにも虐められたこと。虐めの主犯グループである中里と谷本と大東、助けてあげたのに虐めに加担した後原のことも明かし、さらにはシュートにストーカー犯の濡れ衣を着せて名誉をひどく毀損させた板倉ねねのことも明かした。


 『あの板倉ねねが!?』『読モで何回か見たことあったけど』『本性はそんな最低な見下し女だったなんて……』


 さらにシュートがいたクラスの担任の教師…青野の名前も出して、彼が教師の中で主だってシュートの虐めを見て見ぬふりをしていたこと。中里のご機嫌を取ってばかりで、彼が虐めをしたとシュートが報告しても、そんなはずがないと否定して中里を庇っていたこと。青野が悪者として認識されるようシュートは悔しそうな表情を見せたりして話した(実際あの時のことを思い出して、素で悔しさを出していた)。


 「担任教師のせいもあったと思うけど、2のAの元クラスメイトたちも、虐められていた僕を我関せずって感じて無視したり、リンチされているところを見て笑ってたりもしてました。誰一人として、僕を助けようと思う人はいませんでした。それどころか、虐められている僕を笑い者に……」


 ぎりり…とここでもシュートは悔しそうに話す。「誰一人」という部分は嘘なのだが、事を思い通りに進めるべく嘘を通すことにした。


 「そしてある日…理不尽な虐めに耐えられなくなった僕はとうとう、中里たちに反抗しました。彼らと同じ程ではありませんが(大嘘)、僕も彼らに暴力を振るうことで虐めへの復讐をしました。

 結果、僕だけが退学処分を言い渡されて、長い間暴力を振るい続けていた中里たちには何のお咎めも無しとなりました」


 『え、SHOTだけが悪者扱い?』『虐めグループの方が前から暴力振るってたのにね』『あいつらだって散々悪いことしてたんでしょ?』


 「もちろん僕はその時に校長先生たちに抗議しました。何故僕だけが処罰の対象なのか、卑劣な虐め行為を繰り返していた中里たちにも罰を与えるべきだと主張しました。

 でもあの人たちは……さっき説明した通り、中里大企業からの支援を失いたくないからって中里たちを罰しなかった。しかも虐めがあったことも学校内で隠蔽すると言って、トカゲの尻尾切りと言わんばかりに僕だけを学校から切ったんです」


 『うわぁ……』『虐めの加害者を庇ったのかよ』『SHOTも暴力振るったから仕方ないとはいえ、SHOTだけが罰されるのっておかしくね?』


 「それだけじゃありません。退学処分を言い渡された時、校長と教頭と理事長が同じ部屋にいたんですけど、彼らは僕の前で教育者にあるまじき発言をしていました。


 その証拠を、今から皆さんにお聞かせします」


 そう言ってシュートは、自身のスマホに搭載されている録音アプリを起動して、あの日…校長室で退学処分を出した後の校長…硲たちが発した本音を録った内容を流した。

 硲と教頭と理事長がシュートの前で散々口に出した教育者にあるまじきの本音。シュートはあの時携帯電話の録音アプリを起動していて、彼らの発言内容全てを録音していたのだ。

 虐めの一つ二つくらいどうってことないとのたまう硲、弱い者が見下されて虐められるのは当然だと地位が低い人間を貶す教頭。彼らの言葉全てが聞くに堪えない最低の発言だった。

 あの日の彼らは、これから退学する地位など無いシュート本音をバラシても問題になるまいと高をくくっていた。シュートを侮ったツケが、今ここに回ろうとしている。


 「……以上が、私立天成中学校が隠していた真実…僕が知っている真実です。憶測になりますが、天成中学校に今在籍している生徒、もしくはかつてそこの生徒でありもう卒業された人の中にも、僕と同じ理不尽を強いられているあるいは強いられていた人もいるんじゃないでしょうか。

 きっと、クラスメイトや教師、他の大人たちに助けを求めたけど、どうにもしてくれなくて泣き寝入りしたって人、いるんじゃないでしょうか。誰に取り合っても自分たちの言葉を聞き入れてくれなかった経験をしてきたのではないでしょうか。

 そんな人達の代弁者とか代表者とかを名乗るのは少しおこがましいのですが、僕がそんな人達の想いも込めて、この配信で言わせてもらいます」


 すぅ……とシュートは深呼吸をしてから、顔に貼り付けていた表情を、悲しみから怒りへ変えた―――



 「 僕は―――俺は、あの学校の全てを絶対に許さない 」

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