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「生配信での暴露」

 夜…時刻が二十一時を回ったと同時に、シュートは撮影カメラに向かって挨拶をする。


 『やぁ、ハローチューブ!SHOTです!今回はなんと、初めての生配信回でーす!』


 録画ではなくリアルタイムの配信…つまりは生放送である。撮影場所はいつもの異空間で、そこにちゃぶ台や座布団を用意したり壁を用意したりして生活感を僅かに漂わせている。


 『やぁ!』『ハロー!』『待ってましたー!』『今日は狐の面してるんだー!?』『楽しみー!』


 シュート…SHOTの挨拶に視聴者たちは一斉にコメントを送る。その様相は人気ユアチューバーの生配信と同じである。狐のお面で顔を隠しているSHOTは良い掴みだ、とお面越しでほくそ笑んでいる。


 『本日は予告していた通り初の生配信をさせてもらいます。今回皆さんに大変重大な事実をお伝えしたく、このような場を設けました。なおこの配信はユアツベ・ニチャ動・オンスタで同時生放送しておりますので、どちらからでもご視聴下さい』


 『重大な事実?』『何だろう、すごく気になる!』『おー、いくつか同時配信してるんだー』


 視聴者たちはSHOTの言葉に興味を示している。しかしSHOTはここで早速本題に入ることはせず、場をもう少し温まるのと同接(同時接続数)がある程度まで増えるまでの時間稼ぎとして、「何でも質問コーナー」企画を立てた。


 『え、中学生なの?』『身長からして高校生に見えるよねー』


 「正真正銘、僕は中学生ですよ。中学二年生です」


 『あの動画って特撮とか細工とか無しの、ガチなやつ?』


 「特撮のものもあるし、ガチなやつもありまーす!どれが嘘でどれが本物でしょうか!?」(本当は全て特撮・CG無し)


 『いつもどこで撮影してるの?』


 「内緒です。とっておきの撮影場所なので、誰にも教えたくありません!」


 『彼女いるー?』


 「………そんな人はいませーん!まだDTでーす!」


 そんな調子で質問コーナーを盛り上げていくうちに、同接が10万単位となった。他の配信サイトもそれなりの視聴者を集めて、全国からたくさん注目されている形となった。


 (………そろそろいいかな)


 頃合いだと判断したSHOTは、今までのおちゃらけた調子を潜めて、真面目な雰囲気を出しながら本題に入ります、と切り出した。


 「こんなにたくさんの人が僕の生配信を見て下さって嬉しく思います。そして今から話すことを多くの人に聞いてもらえると思うと、それも嬉しく思います」


 シリアスな空気を感じ取った視聴者たちが何だ、どうしたのと気に掛けるコメントを流す。


 「冒頭にも話した通り、今回の生配信の目的は、これから話す重大な事実を全国の視聴者さんたちに聞いてもらうことです。

 ぶっちゃけて言えば、先月程から始めているスーパーアクション動画投稿の活動は、今日の為にやってきたと言っていいです」


 この生配信に多くの人を集めさせる為の餌として、SHOT…シュートは数々の超アクション動画を投稿してきた。誰もやったことがないような動画を世に出して、それを起爆剤に人々から注目を浴びて有名になることで、今日のこの状況をつくり上げた。

 目論見は成功し、投稿動画という餌で、大量の視聴者という大魚を釣り上げたのである。


 「……………(スッ)」


 『!?』『!?』『え!?』『お面が……っ』『SHOTが顔を見せた!』


 SHOTは狐のお面を外して、「三ツ木柊人」の素顔を配信を観ている全国の視聴者たちに晒した。これもSHOT…シュートの目論見の一つである。

 因みに今のシュートの素顔は偽物である。特殊なメイクで別人の顔に仕上げている。今後の生活のことを考えて、素顔を易々と見せるようなことはしない。


 「もうお面で顔を隠すのは止めにします。こんな物もう意味が無いし。とりあえず、素顔を見せることで皆さんにより真摯に事実を伝えられるよう、僕なりの誠意と思っておいて下さい」


 『すっごいイケメン…!』『顔面偏差値高すぎだろ!』『ヤバい、SHOTさん益々好きになっちゃった』


 シュートの素顔を見た視聴者たちは大いに沸いた。誰もがシュートの顔を褒めるコメントを流した。特殊メイクで偽装しているものの、素体が良いからかシュートの偽装顔は尚も整って見えていた。


 「はははどうも…。ではまず、僕のことを紹介していきます。中学二年生と話しましたが、僕は実はある私立中学校の生徒でした。学校の名前は、私立天成中学校です。名前くらいは知っている人はいるんじゃないでしょうか」


 天成中学校の名を出すと一斉にコメントが流れる。ほとんどが『知っている』、『あの名門私立の』、『エリート校じゃん』、などというものだった。


 「僕は、あの学校の生徒でした。先月くらい前に、退学させられたんです」


 『SHOTはあのエリート校の生徒だったんだ』『どうして退学?』『させられたって、何か問題を起こしたの?』


 次々挙がる疑問のコメントを見てからシュートは話を続ける。


 「率直に明かしますと、


 僕はあの学校で酷い虐めを受けいたんです」


 数秒後、驚愕したコメントが一斉に流れた。それを見たシュートは心の中で笑う。


 「ここから話すことは全て真実です。全国で名門私立校として名高いあの学校が、本当はどういうところなのかを、噓偽りなくお話しします―――」


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