目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
「もう不愉快という感情しか湧かない」

 中里たちへの復讐を実行した翌日から、シュートは一週間の停学をくらった。2のAも三日間の学級閉鎖となった。シュートに壊された中里たちは全治約6ヶ月と診断され、失った目は全員二度と元に戻らないとのことだった。板倉の顔も全治約3ヶ月と診断されていた。

 停学をくらっている間のシュートは、暇つぶしがてらに異世界で建てたマイホームの改装にいそしんだり、モンスターと戦って鍛えたりなどしていた。

 自宅の地下室について、父・彰司はネズミなどが入ってこられないよう扉を厳重に施錠するようになった。これに対しシュートは土魔術の錬成で鍵を創り出して、それでいつも通り開け閉めするようにした。


 そしてあっという間に一週間が経って、シュートは中学校へ登校する。今度はショートカットとして「空間転移術」ですぐに学校へワープした。

 以前と同じ、多くの生徒から注目される中で校門を通過しようとしたところで、生活指導の教師と目が合う。彼は顔を真っ青にさせてシュートから顔を逸らした。シュートは何も言わずに校舎に入って自分の下駄箱へ向かう。


 すると自分の下駄箱の前に数人の生徒が立っている。彼らの手にはお菓子のゴミや何かを書いた紙が握られている。それを目にしたシュートは殺意を覚える。


 「あァそうか、こんなふざけた真似をしたクズどもは、お前らだったか」


 シュートの声に生徒たちはギョッとして振り向く。彼らが知るシュートはまだ異世界へ行く前の彼しか知らず、目の前にいる少年がシュートであることに気付いていない。


 「捜す手間が省けて助かるわー。とりあえず今すぐ復讐するか」


 そう言ってシュートは「空間転移術」で、下駄箱を汚そうとした生徒たちを異空間へ移動させた。ここなら誰の目に留まることもなく、時間の流れも遅いからじっくり復讐も出来る。


 「ひっ、何だここ……!?」「何がどうなってるんだ!?」「う、うわあああ……!?」


 突然異空間に飛ばされた生徒たちはひどく狼狽える。考える時間も与えるつもりはないシュートは、一番近くにいる生徒を掴んで、地面におもい切り叩きつけた。


 ベキャ 「ぎべぇえ!?」

 「お前らが、先週も俺の下駄箱と上履きを汚しやがった連中で良いよな?早く登校してみるもんだな、まさかあんな堂々と犯行に及ぼうとするなんて思わなかったわ。まぁお陰でこうやって、復讐ができるってことで!」


 その後もシュートは感情・本能のままに生徒たちを痛めつけて、虫の息になるまで壊した。


 「あ”……っ」「助け、て……」「なんで、こ…んな……」


 シュートは一人の生徒の髪を掴んで顔を合わせて話しかける。


 「お前らはあのクソ女のファンか何かなんだってな。あのクソ女と中里が流した、俺がストーカー野郎っていう嘘の噂を真に受けて、俺に陰湿な虐めをした、ということなんだよな?

 正面から殴ることもできない臆病者ども。安全なところから陰湿な攻撃ばかりして、満足か?」

 「こ、この悪魔……!板倉さんをよくも、傷つけやがって!」

 「その板倉が先に、俺を貶めたんだよ!だから復讐したんだ!つーか何、自分たちは悪いことしてない、みたいな感じ出してんの?嘘の噂を真に受けただけの分際どもが、正義漢ぶって俺を成敗した気にでもなってんのか?

 反吐が出るんだよクソゴミどもがっっ」


 ブチ切れたシュートは生徒たちの爪や歯も剥いで引っこ抜いた。断末魔の叫びを上げて苦しむ彼らの様を、シュートは冷たく笑いながらさらに痛めつけるのだった。



 復讐して壊した生徒たちを屋上へ放って捨ててからシュートは教室へ向かって行く。二年生のフロアに着いたところでいつもと違うことに気付く。すれ違う生徒が皆、シュートを避けているように見える。

 実際彼らはシュートの姿を見ると驚き、そして何やらヒソヒソと小声で何かを話し始める。そして誰もがシュートに関わらないように、わざわざ距離を取って避けていく。誰もがシュートに奇異や畏怖の視線を向けている。

 二年生たちは既に先週の事件のことを知っている。シュートが化け物みたいに強くなっていて、そんな彼に中里や板倉が病院送りに遭ったことなどを知らされている。


 「はぁ~~あ」


 周りが何を思い、何を考えているのかシュートには全く分からない。ただ良くない感情しか向けられていないことは伝わっていたのだった。


 廊下にいる生徒たちからの鬱陶しい視線を避けるべくさっさと教室に入ると、ここでもシュートに良くない感情が多数向けられる。


 「「「「「………………」」」」」


 教室を支配しているのは恐怖、そして不快感。すべてシュートに向けられているものだ。シュートが自分の席へ歩いている間も、皆は目を逸らしたり目を伏せながらも彼を見たりしている。

 ただ紅実だけには、そういった感情も態度もなく、シュートにどう話しかければ良いのかと躊躇しているだけだった。


 (あれだけ暴れたら、やっぱこうなるか。分かってても、さすがにこれはうざいなぁ)


 わざとらしく机に足を乗せながら、シュートはあーあーと声を上げる。


 「何なのお前ら?さっきから気持ち悪い視線たくさん向けやがって。言いたいことあるなら言えばいいじゃん?」

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?