昼休みの時間…屋上にて実行したあの復讐を、逆襲を、裁きを、制裁を、処刑を、シュートは再び行う。今度は2のAの教室の中で。クラスの生徒たちが全員見ている前で。
否、シュートにとっては見せつけるつもりでいる。彼らにも思い知らせようとしているのだ。シュートがどれだけ怒りを、憎悪を溜め込んでいたのか。彼がどれだけブチギレているのかを。
ミシメシ……ベキィ!「あ”あ”あ”あ”あ”っ 腕がああああ”あ”あ”っ」
ブゥン――バキィ、メキャア!「~~~っぐぅううう”う”う”あ”あ”あ”!!」
ガッ、ゴッ、ゴリッ、バキィ、ベゴッ、メキャ、ガキッ、バグンッ、ゴチャッ
「ひぐっ、や”っ、げぶっ、たのむ”ぐ!?、もう”ぅ…っ、やめ”げぇえ…っ」
中里の右前腕部を掴んで、スキル「怪力」でそれを割りばしのようにへし折る。紅実たちの耳に骨が嫌な音をして折れる音が入った。
次にローキックで同じく「怪力」で両の脚を砕かれた中里は床に倒れる。またも骨が砕けたり折れたりする音を聞き、折れた骨が中からとび出している様を目にしたクラスメイトたちの中には吐くのを堪えて口を押さえる者もいる。
仰向けに倒れた中里に馬乗りになったシュートは、昼休みの時と同じ、中里の顔以外の全身を固く握った拳で滅多打ちにする。首、肩、腕、胸、腹、腰、脚、足と、全身余すことなく殴打を浴びせる。
特に腹部を中心に殴っていた為中里の口から胃液や血が漏れ出てくる。その光景を見たクラスメイトの何人かは目を逸らしはじめる。彼らの何人かにも中里を嫌っている者がいるのだが、これを見てスカッとする者は誰もいなかった。
この状況を楽しんでいる者がいるとすれば、中里を存分に甚振っているシュート本人だけである。
ドガッ 「ぐ……ぅおおえええぇえ………っ」
馬乗りを止めて腹につま先蹴りを入れて中里を押しどけると、シュートは楽しそうに笑ったまま自分の鞄を漁り始める。何か道具を取り出すつもりである。
「ふ~~~う。ここまでが昼休みの中でやった分だったな。
で…ここからが、
「は…………え?」
さっきの蹴りで自分は解放されたのだと思っていた中里は、顔の血の気が引いていくのを感じる。目の前にいるこの悪魔は何を言ってるんだと思わずにはいられなかった。その悪魔ことシュートの手には、工具のペンチが握られている。
「ごほ、ごほっ……おい、みつ、き……!?なぁ、もう終わり、だろ……?何だよ、何でこっちに……来るんだよぉおお!?」
体を引きずって教室のドアへ逃げながら悲痛な声を上げる中里に追いついたシュートは、中里の髪を掴んでその顔を床にへばりつけさせる。
「だからぁ、何でお前が勝手に俺の復讐が終わったことにしようとしてんだよ?あれが……たったあれだけでお前に対する怒りと憎しみが全部吐き出されたと思ってんのか?
全然足りねーんだよ!だってお前まだ完全に壊れてねーじゃねぇか!俺は復讐でお前や他の虐め主犯どもを完全に壊したいんだよ!具体的には、しばらく…あるいは二度と、外を出歩けられない状態になるまで!」
「ひっっ!?ふざけんな……もういいじゃねぇかあああぁああ――っげがが!?」
「うるさい。もう言葉を出すな、人間のクズが」
中里の口の端を、手袋嵌めた手で掴んで歯をむき出しにさせる。そしてもう片方の手に持つペンチを、中里の口の中に突っ込んで奥歯にかけた。
「~~~~~!?(まさか……やめ、止めろぉ!!)」
「そぉれ!」
ブチィ!
「~~~!?いbるおおいbfhhfggjvんjっっ」
中里が必死に口を動かす中、シュートはペンチで中里の奥歯を乱暴に引っこ抜いた。直後中里の口からこれ以上ない絶叫が出てくる。激痛に全身を暴れさせるが拘束されてる為それすら満足に出来ない。
中里の口から出てきたペンチには、血で濡れている奥歯の一つが挟まれていた。
「抜歯って麻酔無しだともの凄い痛いらしいな?今のお前見てると実感するわー。もちろん、一本で終わらせねーよ?」
そう言ってシュートは奥歯をその辺に捨ててから、血まみれのペンチを中里の口に再び入れて、まだ生えている奥歯から一個ずつ順に、乱暴に引っこ抜ていく。
ゴリュ! メリィ! メキョ! グチィ! ゴキャ!
奥歯をほぼ全て引っこ抜いて、さらには前歯も上下一本ずつへし折るように抜いた。それは筆舌に尽くしがたい光景で、嘔吐する生徒が続出するくらいだった。
「ほら、靴と靴下が邪魔だ」
シュートの中里への復讐はまだ終わらなかった。中里を裸足にさせると足の指にペンチを挟み、その爪をベリィと剥がす行為を始める。
「あああああ!うあ”あ”あ”あ”あ”!!」
爪を剥がされる激痛に中里は再びのたうち回りだす。歯も爪も神経が通っている為、それらを引っこ抜かれ、剥がされるのは、神経を直接攻撃されてるのと同じだ。どんなに屈強な人間でも神経への攻撃には耐えられない。中里が無様にのたうち回って叫び続けるのは当然のことである。
足の爪に続いて手の爪も同じくペンチで乱暴に剥がしていく。爪を剥がし終えると指を全て割りばしのようにへし折って、中里の手は開閉が出来なくなり、その足はロクに歩くことも出来なくなった。さらには腕と脚の腱も断裂させて、手足の自由を完全に奪いもした。
(く、くくくくく……!)
シュートの顔には、今までの怒りや憎しみを晴らすことが出来て楽しいという感情が貼り付いていた。
ずっと憎み続けていた人間が自分の手によって壊されていくのが楽しくて堪らない、というのがシュートが今浮かべた率直な感想だった。
「さて、最後に……」
絶叫をあげ過ぎて声もロクに出なくなった中里の髪を再び掴んで立ち上がらせると、シュートは中里の左目にペンチを当て始める。
「~~っ~~~っっ(え……おい、まさか?冗談、だよな?さすがにそこまでは、しない、よな…??」
シュートがしようとしてることを、最悪な予想をした中里は首をブンブンと横に振る。逃げ出そうと体を必死に動かすが髪を強く掴まれてる為逃げられない。
「人間…というか生き物はみんな、最低限な暮らしをする中だったら、目玉ってさぁ……別に片方が無くなっても、生きていけるって思わないか?」
中里の目に映るシュートの顔は、以前と変わらず冗談を述べておちゃらけているなどといった感情や雰囲気など全く無かった。彼は本気で自分の目玉を一つ、抉り抜く気でいると、中里はそう悟った。
「~~~かひゅ…!~~~っひゅあっ!(やや止めろ!ごめん、ごめんなさい!止めてください!これ以上痛いことは、止めて下さいぃいい!!)」
涙を流しはじめる中里は、絶叫で痛めた喉を振り絞って許しを懇願する。何を言ってるのか分からない中里の言いたいことを、シュートは何となく察する。しかし彼の返答は、
「 止めるわけねーだろ。こんな
ズッ……グリィ……ブチッッ
慈悲の無い返答の後、シュートは中里の左目にペンチを突っ込んで、その目を抉り取ったのだった。
数秒後、中里のしゃがれた絶叫が教室中に響き渡った。
「~~~あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”んれうりpめr@p!!」
文字通りの声にならない絶叫あるいは悲鳴。クラスメイトたちは耳を塞いだり、目を逸らすあるいは閉じていたり、嘔吐したり泣いたりなどして、シュートの悪魔の所業にただ怯えるしかなかった。黒板にいる青野も背を向けて体を丸めてガタガタ震えている。
(シュート君……。憎い相手とはいえ、君が……あんなに優しくて正義感あった君が、そんなことを平気でするなん、て……)
紅実も同じく目を逸らして、こみ上げてくる嘔吐感を必死に抑えながら、シュートに対して恐怖していた。同時に、彼がそこまで中里のことを憎んでいたのかという畏れの感情も抱いていた。
(うへぇ…憎い憎い怨敵に対してとはいえ、さすがにこれはけっこうクるなぁ……)
さすがに目玉抉り取る行為に対する耐性がなかったシュートは、自分でやったにも関わらず気持ち悪く思っていた。失った左目部分から血を流してその激痛に悶えている中里に引いた反応を示している。
「………ふぅ。ここまでやればさすがに壊すところはもう無いかな。というかもう壊れてるか、そいつ………ぷっww」
見るも無惨な姿へと変わり果てた中里優太の全身を見たシュートは心からの嘲笑を彼に浴びせた。誰もが絶句してドン引きして怯えている中、シュートだけが面白がって笑うという異様な状況がしばらく続いた。
「~~~~~っはあああ……。うん、もういいや。目障りだから砂にでも埋もってろ」
そう言って中里をゴミ箱に捨てる感覚で蹴り飛ばす。蹴られた中里は錐揉み回転しながら土砂の山にめり込んだ。
中里優太への復讐はこれで終わり。そうして研ぎ澄まされた復讐の刃を、シュートは次の二人に突き付ける。
「じゃあ次、谷本と大東。お前らにも昼休みの時と同じことやって、その続きもやるぞぉ」