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「暴行(復讐)」②

 「“顔面を殴っちゃうと傷が目立つからそこだけは狙うな”……お前が俺を暴行するとき仲間たちにずっと言い続けてたことだったよな?俺もお前らに倣うことにするぜ。

 何より、顔をぶん殴ったらお前すぐに落ちちゃうだろうからな。他の急所も狙わない。

 俺の今までの痛みを存分に思い知れ。俺を虐めたことを存分に後悔しながら、俺に甚振られろ」


 怒りを、恨みを、憎しみを動力源にして、シュートは飽きることなく中里をひたすら殴り続けていく。


「ごめ、ごめ”……んなざっ………っ」

「はぁ?謝罪の言葉なんて今更要らねーよ。つーかどうせ本気でごめんなさいとか思ってねーだろ?この地獄から早く逃れたいからそう言ってるだけなんだろ、それ。そうなんだろ」

「ほっ、本当だ!本当にっ、悪かったと思ってる!反省しでる!」


 スキル「看破」を発動して中里の言葉を審議するシュート。予想通り、中里は恐怖しているものの心からの反省などしていなかった。


 「半分嘘をついてるってことで、さぁ続けようか」

 「ひっ、うあああああーーーっ」


 嘘を悉く見破られて説き伏せることも出来ないと悟った中里はさらなる地獄を想像して恐怖し、ズボンを自身の小水で湿らせる。ばっちぃ!とシュートは愚痴りながら馬乗りを解除して今度は踏みつけで甚振ろうとする。


 「や、止めてくれ!もう止めてくれえええ!!」


 中里への暴行を止めるよう、他の不良たちが呼び掛ける。シュートは不愉快そうに彼らに振り向く。シュートに睨まれた彼らは射竦められて身動き一つとれなくなっている。


 「止めてくれ…?じゃあ聞くけど、お前らは俺が同じようなことを言った時、虐めを止めたことあった?なぁ?

 俺が止めろと言ってもお前らはその後どうしてたっけ?ボロボロの俺を嘲笑いながらもっと甚振ってなかったっけ?」

 「あ………」

 「ひ、ぃ………」


 シュートから途轍もないプレッシャーが放たれて、全員それに圧し潰されるような感覚を味わう。スキル「威嚇」による精神攻撃だ。


 「お前らが俺を甚振りまくるのは良くて、俺がお前らを甚振るのはダメと?する側になるのは良くて、される側になるのは嫌、と?そんなことが通ると思ってんのか、お前ら、なぁ?」

 「う、うう……」

 「思ってもなかったんだろ、自分たちが弱者側に、甚振られる側に回るなんてことをさぁ」


 ドスッ 「ぐ、ぶぐおぇ……っ」


 胃がある腹の箇所を踏みつけると、中里は口から血が混じった胃液を吐き出して苦しそうに呻く。


 「都合良く、止めてあげるわけねーだろ。同じだよ。お前らが俺にやったことを、今度は俺がお前らにしてやるんだよ。だからもう喋るな。お前らが発していいのは苦痛に満ちた悲鳴と恐怖に震えた叫び声だけだ」


 再び胃や大腸が位置する腹の箇所を次々踏みつけて中里を壊していく。顔以外の全ての箇所を踏みつけたところで、今度は中里の手指を一本ずつ壊す「作業」を始める。骨を折り、爪を乱暴に剥がすという鬼畜極まりない行為を、シュートは一本一本実行していく。その間中里は激痛にのたうち回ろうにも脚が壊されている為それすら出来ずにいた。


 「どうだ、絶対的な強者だと思ってた自分がこんな目に遭った気分は?常に自分がカースト上位の人間で支配する側だと思ってたんだろうな?これからも、それが続くと思ってたはずが、弱いと思ってた人間に一方的に嬲られて、ゴミのように這いつくばされた気分は、どうだ?」

 「………っ、ぅあ……………」


 シュートの煽り文句に、中里は憤ることすら出来ないでいた。それどころか今は絶対的な強者となったシュートに対する絶望と恐怖しかない状態だった。

 シュートが指摘した通り、中里自身は今まで自分は強い…力も金も家の地位もある強者だと確信していた。自分はこの世の勝ち組で、絶対的な強者だと信じて疑わなかった。この学校では自分は強い者であり、弱い者を蹂躙して虐げる立場にあるのだと確信していて、それは中学を卒業した後もずっと続くのだ、と酔いしれていた。

 しかしそんな確信と理想は、突如牙を向けてきたシュートによってボロボロに打ち砕かれたのだった。絶対強者だと思った自分が、異次元で未知で強大過ぎる暴力を前に、為す術なく蹂躙されて地に這いつくばる様となっている。

 そしてその強大な暴力の権化であるシュートは、今も自分を徹底的に壊そうとしている。そのことに中里の心は既にボロボロに折れていた。


 (あァ……楽しい!ずっと復讐したいと思ってた奴を、自分の手で痛めつけて…痛めつけて痛めつけて痛めつけて痛めつけて痛めつけて、壊していくの、すっごく楽しいなぁ!!)


 シュートは心から笑っていた。普通ならこれだけの暴行をしたらどれだけ憎んでいようと気が引けるようなもの。しかし彼からそんな躊躇いは一切表れなかった。彼の中には線引きなど存在していない。殺しさえしなければどんな目に遭わせても良いのだ、と本気でそう思っている。

 こんなことしたら痛い、苦しい、惨い。自分がこうされたら堪ったものではない。だから止めておこう、という自制はもうはたらいてなどなかった。特に、自分を今まで虐めてきた中里たちに対してはそのような自制はとっくにぶっ壊れていた。


 「………あ、白目剥いてら。耐久性が低過ぎるおもちゃだなー。じゃあこいつへの復讐はいったん終わっとこ」


 白目を剥いて涙を流して気絶した中里を解放するシュート。しかし彼の復讐はこれで終わりにはならない。


 「んじゃ次…中里の次に俺を散々暴行しやがった谷本と大東!お前らな」


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