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「暴行(復讐)」①

 シュートが放ったただの蹴りで、ありえない距離まで吹っ飛んだ中里のありさまを目にした不良たちは唖然とする。最初から唯一攻撃に参加していなかった後原は身の危険を察して屋上から逃げ出そうとする。それに目ざとく気付いたシュートは「空間転移術」で屋上の扉へ移動して、後原を谷本たちがいるところへ強制的に戻らせた。


 「えーと、昼休みはまだ三十分近く残ってるな」


 時間を確認しながら屋上の扉の前に移動すると、そこに土の魔術で土砂を大量に積もらせた。これで屋上から唯一の脱出口が塞がれた。

 突然の土砂の出現に狼狽する不良たち。そんな中シュートは中里のように谷本、大東、後原と順番に一発ずつ攻撃を入れて、彼らにシュートの力がどんなものかを思い知らせる。


 「う、動けな……っ」「お、重い……っ」「三ツ木に、こんな、力……っ」


 残りの不良たちにも一撃を入れて悶絶させる。誰もがシュートのデタラメな力を受けて苦痛に呻き、その脅威を理解し始める。


 「な、なぁ……ヤバくね?」「ああ、今の三ツ木…バケモンだ」「に、逃げた方がいいって!」「で、でも扉が土砂で塞がっちまって……」「は、早く逃げねーと殺される……!」「だ、誰か助け呼んでこいよぉ…!」


 口々に話している不良たちを見回したのち、シュートは不良グループのリーダーであり虐めの主犯でもある、中里優太のもとに移動する。最初に「壊す」のは中里だと決めていたシュートである。腹を蹴られて未だ地面にうずくまっている中里の脚に足を乗せて、一気に力を入れてその骨にひびを入れる。


 メキミシィ…… 「~~~~~っっ」


 声にならない悲鳴を上げ続ける中里を見るシュートは内心ほくそ笑む一方、今の力の振るい方について思考してもいた。


 (今…こいつの脚を踏み砕いた時、スキル“怪力”を発動した状態だった。その前の蹴りはスキルを発動しないで蹴ったけど、素の力だけでも人をあんなに吹っ飛ばすことができてたな。だったらここからはスキルを使わないでこいつらを痛めつけよう。それだけでも十分痛めつけられる)


 スキルを使ってうっかり殺さないようそれらをあまり使わないで甚振ることにしようと決めたシュートは、痛みに喚いている中里を見て笑い出す。


 「その脚じゃあしばらくサッカーできないだろうな?いい気味だ」


 シュートが次の攻撃に移ることを察した中里は、どうにか起き上がろうとするが立つことすらままならない。上体だけ起こして長座体勢のまま後ずさるが全くの無意味である。


 「わ、分かった!俺の負けだ!もう三ツ木のこと虐めたりしないから!みんなで暴力振るうようなことしないから……!」


 中里はなりふり構わずといった様子で降参を宣言した。谷本や大東に目を向けると意図を察した彼らも首を縦に振って同意を示す。全員が自分たちの負けを認め、シュートをもう虐めないと誓おうとする。

 シュートは無言で中里の腕を掴んで立ち上がらせるように引き上げる。許してもらえると思った中里は顔は安堵の表情を見せつつも、内心では上手く騙せたとシュートを嘲笑っていた。


 「……………」

 (ミシ……ッ)「………え?ちょ、痛い。痛いって?強く握り過ぎ……っ!?いたっ、痛いっつってんだろ!?」


 スキル「怪力」―――


 ベキャアア! 「うぎぇあああああああ!?」


 シュートは中里たちの命乞いなど、初めから聞く耳持たずだった。彼らがどれだけ許しを乞うても懺悔の言葉を述べても関係無い。

 逆襲を、復讐を、裁きを、制裁を、処刑をすることは、揺るがない決定事項となっている。

またうっかりスキルを使ってしまったシュートの腕力は、掴んだまま力を入れるだけで人腕の骨を割りばしのようにへし折ることも出来る。実際中里の前腕部分はシュートの掴み技によって嫌な音を立てながらへし折れている。


 「もう虐めはしない?それが嘘だってことバレバレだから。内心こいつまた騙されてやんの、とか思ってたんだろ?」


 スキル「看破」で中里の言葉が嘘であることを見破っていた。


 「あと…自分の負けだとか何とか言ってたけど……これってそもそも勝負とかじゃないから。

 俺が、お前ら全員を、徹底的に壊すだけの時間、だから。勘違いしないでほしいんだけど。最初から勝ちとか負けとか無いから。お前らはこれから俺に蹂躙されて壊されるの。分かったか馬鹿が」


 ヒュン――ベキバキィ!「うあ”あ”あ”あ”あ”……っっ」


 続いてローキックを放って中里の両大腿骨を完全に砕いて(折れた骨が皮膚から突き出て丸見えとなった)、再び地面に這いつくばらせる。それから仰向け状態で倒れた中里に馬乗りになると、シュートは両の拳で中里の顔面以外の全身を殴り始めた。


 ガッ、ゴッ、ゴリッ、バキィ、ベゴッ、メキャ、ガキッ、バグンッ、ゴチャッ


 「がっ、ちょ、や、やめ”……やめろ”っ、ごぇ、やめて……っ」


 殴って殴り殴りつけ殴る。ひたすら殴っていく。肩、腕、胸、腹、腰、脚と、全身余すことなく殴打を浴びせていく。その間シュートは中里の顔面には一発も入れなかった。谷本や大東、後原たちはそんなシュートの暴行を見て恐怖で顔を引きつらせている。

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