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「これは去勢だ」

 「た、助けてくれぇ!」「俺が悪かったぁ!」「もう逆らわないから!」「こ、殺さないでくれぇ!」「嫌だ、嫌だぁ!!」


 今まで何度も大人たちに反発して、色んな学生たちをいびり続けて威張り散らしていた、巷で悪名高い不良集団が、たった一人の少年を相手に命乞いをしている。


 「う、あああ……!」

 「だ、だから止めておこうって言ったんだよぉ!」

 「仕方ねーだろ!傷だらけの俺たちを見たリーダーがあいつを潰すって言い張ってたんだから……!」


 一度シュートにボコされている不良たちは、前回の惨劇のことも合わさった恐怖にかられている。シュートが自分たちに目を向けた瞬間、さらにガクガク震えだす。


 「お仲間をたくさん連れてきたから、俺に存分に仕返しができるって、思ってた?あんなにいた仲間たちがみんなやられちゃったんだけど、それについてどう思ってる?ねぇ、どう思ってんの?」


 三人の不良たちを見下ろして歪んだ笑みを浮かべて煽るように問いかけるシュートに対しても、彼らは怒るどころか恐怖に震えることしか出来なかった。


 「俺たちが悪かった……。もうしない、何もしないから、許してくれ、下さい!」

 「はぁ?あんなに仲間を連れて、しかも俺に対して嫌な笑みまで浮かべといてさぁ。それって明らかに俺を今のあいつらみたいにする気満々だったよな?初めから俺を潰すつもりだったよな?」

 「ち、違う、違います!先輩たちがあ、あんたを締めるって言ったんだ!ボコされた俺たちを見て、舐められてたまるかって!」


 金髪の不良が必死の形相で言い訳をまくしたてる。他の二人もそれに乗っかってしきりに頷く。


 「 嘘だろ、それ 」


 しかしシュートはそれを嘘であると斬り捨てようとする。


 「い、いや嘘じゃねー、じゃないですよ!?」

 「ほら。またどもったじゃん」


 指差して嘘を指摘するシュートだが、彼は別に確信してそう指摘してるわけではない。むしろ完全に当てずっぽうである。彼はいわゆる魔女裁判にかけようとしている。この不良たちが不良である以上、彼らが言うこと全てが嘘でありその場しのぎの言い訳に過ぎない、と完全に決めつけているのだ。


 「し、信じてくださいよぉ!!」

 「そう、それ!俺もさぁ、学校で虐められててさぁ。そのことをいくら先生どもに言っても誰も信じてくれないんだよな。あーこれが理不尽なんだって、いつも思い知らされるんだよ。で、お前らも今さぁ、そんな理不尽な目に遭ってるんだけど、分かる?」


 シュートは指差したまま少しおかしなテンションでそんな話をした。彼のペースについていけない不良たちは完全に放心していた。因みにこの不良たちの言ったことは実際嘘であり、シュートが指摘した通り彼らからシュートを潰すよう先輩たちに頼み込んでたのだ。


 (ん?……スキル“看破” “嘘を見破れる”だって?)


 不良たちの嘘を偶然見破ったことが引き金となって、新しいスキルを体得した。しかしここは異世界ではない。それなのにスキルを体得したことを、シュートは疑問に思った。


 (異空間のここでも何かアクションすればスキルがまた得られるのかな?まぁラッキー)


 気を取り直して三人の不良に向き直り、金髪の不良の腕をつかみ取った。


 「え……な、何を?」

 「だから何度も言ってんじゃん。手足を完全に壊して二度と外に出られなくしてやるってさぁ―――」


 ベキャ……ッ「~~~~~~~っっっ!!」


 有無を言わさず、掴んだ腕を捻じって骨を粉砕したのだった。金髪不良の口から声にならない絶叫が上がった。


 「あああ!あああああ!!」


 しかし金髪不良への惨劇は終わらない。シュートは続いて不良の脚に容赦の無いスタンピング踏みつけをして、同じく骨を砕いたのだった。


 「いぎゃああああ”あ”っっ」


 片腕と片脚それぞれから骨が飛び出して複雑骨折を負った金髪の不良を、シュートはゴミを見る目て見下している。ピアスと派手シャツの二人は「どうしてこんなことを」と疑問を呈する。


 「どうしてって、これは“去勢”ってやつだよ。お前らクズどもが今までみたいに誰かを傷つけないよう、手足を完全に壊して、自分の足で歩けなくしたり何も持てなくさせたりして、外を自分で出歩けないようにしてやるんだよ」


 シュートが言い放った悪魔の提案を聞いた異空間にいる不良たち全員が、顔を凍りつかせるのだった。



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