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「どうせロクでもない女どもだ」2

 「何言ってるんですかー、お兄さんはどう見てもイケメンですって♪」

 「服装はちょっと微妙だけど、着替えたらさらにカッコよくなりそ~!何なら今から一緒に服でも見ない?」

 「……………」


 まさかの逆ナンであった。シュートにとって予想もしていない事態が起こった。


 (そういえば、異世界の急成長で顔も良くなってたんだった。でもこんな風にナンパされるなんてな。一目惚れまでされるなんて………いや待てよ?本当に一目惚れなのか?)


 改めて逆ナンしてきた女子大生たちの装いを見る。耳にはピアス、首には高そうなアクセサリー、高そうな服に鞄、近くにいると漂う香水の匂いなど。いかにも遊び慣れた女子そのものである。


 (どうせ他の男から買ってもらったんだろうな、そのアクセサリーも鞄も。で、今回は俺をターゲットにして何か買ってもらおうって魂胆なのかもな)


 シュートは数日前、クラスメイトの板倉ねねから酷い仕打ちを受けている。嘘の告白で教室に呼び出されて、嘘告とバラされた挙句彼女をストーカーしていたという濡れ衣まで着せられている。

 以降シュートは異世界で出会ったサニィという例外を除いて、女性からのアプローチを信じないと心に誓っていた。向こうから寄ってくる女にロクな奴はいない、まだ十三年と少ししか生きていないシュートは勝手にそう学んだのだった。


 「他の男から貢いでもらえよ。じゃあ、そこどいて」

 「え……?」「ち、ちょっと?」


 前方にいる黒髪の女子を軽く押しのけて、二人の声に耳を貸すことなく先を急ぐシュートであった。


 「うーん、逃げられちゃったかー。残念」

 「ですねー。でも、本当にカッコいい人でしたよねー」

 「そうそう!私本当に惚れちゃったかも!あの冷たい反応もなんかあり!」


 段々と遠ざかっていくシュートの背中を、茶髪の女子大生はどこか熱っぽい目でずっと見続けていた。





 あれからも一度、二度も女性から声をかけられたシュートだったが、全て無愛想に拒否した。


 (どうせ見た目だけで判断してるような、ロクでもない女どもだ。ああいう奴らは全員板倉みたいに性格がクズに決まってる)


 唾を吐きたくなる衝動を抑えながら先を急ぎ、目的地に着く。店に入って順番を待つこと十数分、シュートの番が回って係員に金塊を見せる。今回シュートが持ち込んだ金は、生成した物の十分の一程分の金品(金塊を“作製”で指輪やネックレスなどに変換している)だった。500gも持ち込んでしまうとかなりの金額になり騒がれると思っての配慮である。

 手続きの中で身分証を求められるシュートだったが、家にあった父親の健康保険証や公共料金支払い表の写しを提示してどうにか通したのだった。

 それからしばらく時間が経ち、ようやく換金が完了する。金塊約50g分の金品が30万円へと変わったのだった。


 (おほ^ぉ~~)


 シュートは心の中でほくほく気分に浸っていた。中学生にとっての十万円台は大金と言っても過言ではない。これで好きなゲームや食べ物、ついでに服も買える、と俗物的な思考を走らせたのだった。



 夜になっても自宅にはシュート一人だけとなっている。親がいないことを良いことに高い寿司を注文してそれを食べることで、シュートは明日への英気を養っていた。明日から学校への登校である。

 今までであれば虐めに対する屈辱や憂鬱に満ちた日々が始まるのだ、と嘆いていたシュートだったが、今となっては明日が待ち遠しくて仕方がない様子でいる。


 「いよいよ明日、あいつらに復讐するんだ……!けれど、殺しはしない。あいつらに殺されるようなことまではされていないから。でも死んだ方がマシだって思わせるくらいの地獄は見せてやりたいな……!」


 自身を虐めてきた中里をはじめとするクラスのカースト上位生徒および他クラスの不良生徒といった主犯グループ。嘘告で自身を嵌めた学年カースト上位の女子。それらを優先して復讐する。余裕があれば自身が虐められてるのを見て見ぬふりをしたり笑ったクラスメイトと担任の先生にも酷い目に遭わせようと計画している。


 「思い知らせてやる……俺の恨み・憎しみを買ったお前らがどういう目に遭うかを。お前らなんか俺にとって必要無いクズで、ゴミムシどもだってことをっっ」


―――

――――

―――――


 迎えた翌日、快眠から覚めたシュートは朝食もしっかり済ませて身支度もきちんとする。体の成長のせいで制服がキツくなってること以外は万全な調子だった。


 「カッターシャツは親父のを使えば大丈夫だけど、ズボンだけどうしようもないのがなぁ」


 こればかりは仕方がないと割り切って自宅を発つ。学校へ行くのがこんなにも楽しみだと思えるのはいつ振りだろう、と考えながらコンビニへ行って昼食を買いに行く、その途中のことだった。


 「ん……?」


 シュートが歩く道の反対方向から、十人ほどの集団が彼の目に入った。


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