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0033 証拠

「なぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」


ゾングが大きな口を開けて、あごが外れそうです。

そして、少し目玉が前に飛び出しています。

人がこんなに驚く様を見るのは、日本にいたときにギャグ漫画を読んだときに見たぐらいしか思い当たりません。

十人位の警備員が一瞬で白目をむいて、口から泡を吹いて倒れています。


「こ、この人達、木人よりはるかに弱いです」


シノちゃんが驚いています。

チマちゃんとヒジリちゃんがしきりにうなずいています。


「何事だーー!!」


太った衛兵が騒ぎを聞きつけてやって来ました。

ゾングの顔に悪い笑顔が浮かびます。


「隊長!! この餓鬼共が、この私に暴力を振るったのです」


「なにぃーーっ!!!! 餓鬼共、この方を誰だと思っている。世界一の大商人ゾング殿だぞ!!」


「衛兵様、でも悪いのは……」


私が話していると、太った衛兵の隊長は私達の姿をジロジロ見ています。

まあ、みすぼらしい格好をしていますからね。


「やかましい。小汚い餓鬼共!! ゾング殿に暴力を振るった罰だ少し痛い目を見てもらおう」


そう言うと、太った衛兵の隊長は腕まくりをします。


「シノちゃん! かまいません。少しこらしめてやって下さい」


「ふんっ! 小僧が生意気な!! うおぉぉーー!!!!」


「ほいっ!」


シノちゃんは殴りかかってきた衛兵の隊長の腕を取ると、石畳の道路にたたき付けました。


「ごふっ!! ぐぅぅーーーー!! くそぉーー!! きさまーー許さんぞーー!!」


衛兵の隊長さんは、さすがに隊長だけあってタフです。

失神しませんでした。

衛兵の隊長が笛を出して大きく息を吸い、口に笛を加えると思い切り吹きました。

ピーーッと大きな音が響きます。


「わわっ」


あちこちの路地から衛兵がゾロゾロ出て来て、シノちゃんが驚いています。


「ひゃはははは! 餓鬼共、よく聞け! 衛兵に手を上げると言うことは重罪だ。観念するんだな」


衛兵の隊長は、尻もちをついたまますごんでいます。


「馬鹿な餓鬼だ。これでお前達はお終いだ。ひゃはははは」


ゾングまで得意げに笑います。いやな笑い声です。


「レイカ姉……」


シノちゃんとチマちゃん、ヒジリちゃんが私にしがみついて、心配そうにしています。


「うふふ、かまいません。弱い木人だと思って、こらしめちゃって下さい」


「いいのですか」


三人が不安そうに聞いてきます。


「はい!!」


私が、満面の笑顔で返事をします。

それを見て三人の顔が、キラキラ輝く表情になりました。


「うぎゃああーーーー!!!!」

「どわああーーー!!!!」

「ぎゃあああーーーー!!!!」


次々倒される仲間を見て、攻撃に参加せず笛を吹く人が出て来ました。

ピーピー笛が鳴り響き、王都中の衛兵が集るのでは無いかというほど衛兵が集って来ます。


「うがあああーーーーーー!!!!!」


やってくる兵士より、三人の子供達がやっつける速さの方が勝るため、次々倒されていきます。


「な、な、なんだこれはーー!! 一体この餓鬼は何者なんだー?」


ゾングが事の重大さに恐ろしさを感じているようです。

倒れている衛兵は、既に二百を越えているでしょうか。

周りの建物から顔を出して見物する人や野次馬が集り、何事かとジロジロ見ています。


「静まれーー!!!! 静まれーー!!!!」


騒ぎを聞きつけた騎馬隊が、道路に出来た人垣を割って入ってきました。


「終わった。ひゃはははははーーーー!!!! 餓鬼共ーー!! 終わったぞお前らーー!!」


ゾングが勝ち誇っています。


「騒がしいなあー!! 何事だ!!」


騎馬隊の隊長が騎馬の上から声をかけました。


「ひゃはははは!! 餓鬼共、この方はなあ、今や破竹の勢いのアーサー騎士団、その四番隊の隊長メジカ様だ!! もうお終いだ。ひゃはははははーーーーーー!!!! メジカ様、この餓鬼共を捕まえて下さい。大罪人です。衛兵隊をこんなにしてしまいました」


ゾングは、有頂天になっています。

ひょっとすると、知り合いなのかもしれませんね。


「むっ……」


メジカ隊長はじろりとまわりを見回し、倒れた衛兵の数を確認しているようです。


「この馬鹿共――!! お前達は何てことをするんだ。この方をどなただと思って居るのだーーーー!!!!」


「ひゃははははははははははーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


ゾングの高笑いが街中に響きました。


「アーサー騎士団、団長の育ての親、レイカ様にあらせられるぞーー!!!!」


メジカ隊長は、ゾングをにらみ付けました。


「ひゃははは……ははは……はは……は……???????」


ゾングは笑いながら段々表情が凍り付きます。

最後には目が点になっています。

まるでぬいぐるみのような可愛い目になりました。


「メジカ!! レイカ様に失礼であるぞ!! 騎馬から降りませい!!」


紫色にピカピカ輝く甲冑の、立派な剣士が言いました。

全く、イサちゃんはそんなことをどこで憶えたんでしょうか。


「はっ、ははあぁぁぁぁーーーーーっ!!!!!!」


メジカ隊長は、素早く騎馬から降りるとひざをつき、臣下の礼をしました。

でも、うつむくその顔は、てへぺろってなっています。


「あ、あのーー……」


ゾングはガタガタ震えながら、メジカ隊長に声をかけました。


「なんだ!!」


「こ、この方は?」


「ふん、この方はレイカ様だ。又の名をレンカ様。貴様も世界一を名乗るのなら聞いた事があるだろう。レンカの宝刀を、その制作者でもある」


「うそだろう。そんなことが!?」


「聞いた事はないのか、レンカ様の特徴を」


「俺は、世界中の国に行っている。フト帝国も例外じゃない。大帝ゲンシン様にだってお目にかかった事がある。たしか六歳ぐらいの幼女で、はな、話し方が……話し方が……お、おばっ、おばさんのようだと…………!? ま、まさか、そんな」


「じゃあ、人違いでございます。私は、おばさんのようになど話したりいたしません」


「いや! そのしゃべり方がおばさんだーーーー!!!!」


ゾングやメジカ隊長、子供達だけでなく、周りの野次馬まで言やがりました。


「いや、まだ信用できねえーー!! 証拠、そうだ証拠がねえ、証拠を見せてみろーー!!」


ゾングは往生際が悪いですねえ。どうしましょうか。

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