「は、はやくしなさい!! ケガ人が出てしまいます」
どうやら、お嬢様が戻って来たようです。
「はははは、いくら何でも我らは三十四人います。怪我ではすまないはずです」
「おばかーー!! 誰がアーサー様の心配をしていると言うのですかーー!! 騎士団の心配をしているのですよ!!!! ぴゃあぁぁぁぁーーーーー!!!!」
……「ぴゃあぁー」なんて悲鳴初めて聞きました。
「な、なんと!! こ、これは!!」
お嬢様をかばうようにしている騎士が言います。
「ああああああぁぁぁ!!!! だから言ったでしょーーーー!!!! アッ、アーサー様ーーーー!!!!!!」
お嬢様がひざからガックリ崩れ落ちました。
「はい!?」
「殺してしまったのですか? いえ、殺されても文句はありませんがそれでも……ああああぁぁぁぁー!!!!」
私の目の前には、武器を構えて襲って来た騎士達が、三十人以上倒れています。
「うふふ、安心して下さい。全員生きているはずですよ。力は入れませんでしたから」
「な、なんと、精鋭三十四人を手加減して倒したと言うのですか」
「ふふっ、殺す気ならこの刀で、一刀両断にしています」
私は、大和魂を半分ほど抜いて、刃文を見せました。
「な、なんという美しさ。身震いがおこります。な、なんという名の名刀ですか?」
騎士が言いました。
「これは、大和魂という名の刀です」
お嬢様が、騎士の肩にいたずらっぽく、ちょんちょんと触れました。
「な、なんですか? うおーーー!!!! こ、こちらもすごい!!」
お嬢様は、レンカの宝刀を抜いて、騎士に見せています。
「これは、わが家の家宝になったばかりの、レンカの宝刀です」
「こ、これが……レ、レンカの宝刀……ほぉぉーー! す、すごい!!」
騎士の両手が、ワキワキ動いています。
触りたいけど恐れ多くて触れない、そんな動きです。
お嬢様が鞘に納め、騎士の前に差し出しました。
「よ、よろしいのですか?」
聞くと同時に、もう手に持って抜いています。
「いいですよ。どうせ、貴方が持つ事になるでしょう。ですが、その前にお父様に一度献上します」
「わ、わかりました。いや、すごい。聞きしに勝る名刀です。クラクラしました」
騎士は鞘に納めると、お嬢様に返却しました。
「ラーケン、アーサー様の実力はわかっていただけましたか? それとも一度手合わせしてみますか?」
どうやら、この騎士の名はラーケンと言うのでしょう。
レンカの宝刀を所持するかもしれないと言う事は、一番強いと考えて良さそうです。
「ふふふ、それには及びません。私でも手加減してこの者達と戦って、勝てる自信はありません。恐らくアーサー様は私より実力は数倍以上、上でしょう」
「わかって、もらえたのならそれでいいです。アーサー様は私のお客様です。以後失礼の無いように周知徹底して下さい」
「ははっ!!」
「ギャング達は、森の奥ですがアーサー様が森を切り開いてくれました。それを進めば岩山の洞窟に閉じ込めてあります。全員逮捕してください」
「ははっ!! アーサー様、重ね重ねお手数をおかけしました。この御礼は後ほど、おい! 者ども行くそーー!!」
そう言うと、倒れている騎士を次々起こしていきます。
「う、ううっ」
騎士達が起き出しました。
「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」
ラーケンさんが驚いています。
「ど、どうしたのですか?」
お嬢様が、ラーケンさんの声に驚いて目を見開いて聞きました。
「見てくださいこれを!」
見ると、騎士の鎧に拳の形の跡があり、そこがべっこりへこんでいます。
「す、すごい!」
お嬢様がさらに驚いています。
「アッ、アーサー様。もしかして、もしかしてですが、この者達と、……武器を持つこの者達と素手で戦ったのですか?」
「ええ、まあ、その、弱すぎだったので……」
「…………」
お嬢様とラーケンさんが無言で私の方を見ています。あごが外れそうな位、口がひらいています。
その後、洞窟へ行った騎士達は、蓋の岩が動かせないと増員をして動かしましたが、中から飛び出して来た賊達に蹴散らされ十名以上が命を落とし、取り逃がしたと聞きました。
お嬢様いわく、あのギャング達は滅茶苦茶強い者だったそうです。
「ええっ、滅茶苦茶、弱かっ……」そこまで言ったら、お嬢様が驚きの余り、目玉がポンと音を出して飛び出しそうだったので、言うのを途中でやめておきました。
「うーーん」
私は、鉄人達を楽々倒す、子供達を見て腕を組んでいます。
「レイカ姉、どうしたのですか?」
四人の子供達が私のそばに心配そうに駆け寄って来ました。
相変わらず、可愛い子供達です。
「いいえ、気にしないでください。独り言です」
既に、人数分の紫の短刀が出来上がり、次々鉄人を倒していきます。
宝石が、その都度地面に落ちますが、もう誰も感心がありません。
後で木人に拾わせますが、既に大きな倉庫が半分ほど宝石の樽で埋め尽くされました。
このままでは成長が出来ない……
どうやら、子供達の成長は次のステージに来てしまったようです。