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0013 ギャング

私は、北へ北へと進みました。

一歩進む度に、ヤマト村から遠くなるのかと思うと寂しさに負けそうになります。

深い森は、終わりが無いのかと思えるほど続きます。

背中に大きな樽を背負って移動していますが、背負いやすくベルトが付けてあり、たいして重さを感じる事も無く進む事が出来ます。

樽は、レイカ姉が災害脱出用として、何かあったときに持ち出せるように用意してくれた物です。

中に生活必需品がコンパクトにまとめられた物で、全員分準備して部屋に置いてあったものです。

樽の空いているスペースに、好物を少しだけ詰めて、刀と金の小袋と一緒に持ち出しました。


「あああ、道だーー!!!!」


とうとう森を抜けたようです。

思わず声が出ました。


「誰が、こんなことをしたんだーー!!」


「置き石に倒木で道がふさがれています。今からどけます。お嬢様、少しお待ち下さい」


道の向こうから声が聞こえてきます。

ですが道が曲がりくねっているのと、かなり遠くのため姿は見えません。


「馬鹿め! 騎兵が馬を降りてどうするよ!」


「ひゃはははは」


どうやら、賊にでも襲われているのでしょうか。

私は、道には出ずに森の中を声のする方へ、少しずつ警戒しながら移動する事にしました。


「俺は、元王国騎士団の、隊長をやっていた。悪い事は言わねえ、逃げていった方が身のためだと思うぜ」


ガシャリと武器を構える音がしました。

騎兵と言われた一人でしょうか。

王国騎士団の隊長とはとても強そうですね。


「ならば、俺も教えてやろう。俺はジャング人の盗賊だ。そして、持っている刀は、レンカの宝刀、おめー達が、フトの妖刀と呼んでいる刀だ」


「なっなにーー!! 貴様らはギャングか!! そしてレンカの宝刀だと?」


ジャング人の盗賊はギャングと呼ばれているようです。


「そうだ。王国騎士団なら見た事があるだろう。世界に四百本しかねえ宝刀だ。見て見ろ! この妖しい輝きを。脱走するときに盗ってきた物だ」


また、武器を構える音がしました。

どうやら、ギャングの一人が、レンカの宝刀を構えたようです。


「お金なら有ります。これで見逃していただけませんか」


女性の声がしました。


「はあーっはっはっ!! その金も、女も全部いただく。男は皆殺しだがなあ」


「ふん、ギャングが、しねーーえぇぇぇーーー!!!!!!」


どうやら、護衛の一人が斬りかかったようです。

ガシュンという音が聞こえました。


「うぎゃあああーーー!!」


「な、なんだと、剣も鎧も紙のように斬られてしまった。それはまさか本物のレンカの宝刀なのか?」


「ふふふ。だから、そう言っているだろう。しねぇぇぇーーー!! きええぇぇぇーーー!!!!」


「ぎゃああーーー!!!!」

「ぎゃっ!!」

「ぐわあああっ!!」


ギャシュ、ガシュンと金属が擦れる音が聞こえると、それに続いて悲鳴が次々聞こえてきます。


「おい、おめー達、ぼさっとするな!! 馬車から女を降ろすんだ。降ろしたら身体検査をしろ、武器でも持っていたら面倒だ」


「ひひひ、御頭、念入りに丁寧にやらしてもらいます」

「おい、こいつ、パンツの横に短刀を仕込んでいます」

「こ、こいつもだ」

「こっちは太ももだ」


「全部取り上げて縛り上げろ! 袋に押し込んでさっさと運ぶんだ!!」


ようやく、姿がみえました。

賊は十人います。みすぼらしい服を着ています。

うふふ、私と同じような服です。ですが、私は頭を隠すためのフードが付いているので、そこだけは違います。

これは私も、ギャングと間違えられそうです。


倒れているのは、全身に美しい金属の鎧を着けた騎士でしょうか六人倒れています。

全員一刀両断にされています。

どうやら、レンカの宝刀を持った人が一人で全員を殺してしまったようです。

剣まで斬られ、鎧も斬られています。

切れた鎧から大量に血があふれ出しています。


あいつが、やったのでしょうね。

体の大きな男が、一人だけ雰囲気の違う刀を腰に差しています。

あの刀ですね、レンカの宝刀は、何と言う切れ味、私の大和魂でも斬られてしまうのでしょうか。

いいえ、レイカ姉の刀は誰にも負けません。最強のはずです。


女性が四人、袋に入れられたようです。

きっと、お金持ちの娘さんなのでしょうね。

男達に担がれてしまったので、容姿は見る事が出来ませんでした。


――助けた方が、いいのかなあ。


でも、私が、騎士を六人も倒すような奴と戦って、勝てるのでしょうか。

助けを呼ぶ……。

無理よねえ。きっと、ギャングの仲間と思われてお終いですよね。

とりあえず、後をつけるかなぁ。


ギャング達は、森を風の様に突き進みます。

手慣れていますね。

まあ、私にとっては遅いと思えるほどのスピードです。

ふふ、カツより遅いもの。

そういえば、カツというとレイカ姉はいつも、いのししと訂正してくれました。

なんだか、とても懐かしく感じます。


森の中を、数時間すすむと岩山にでました。

そこに、洞穴があります。

次々、ギャング達が中に入っていきます。


「おい、降ろせ!!」


「きゃっ! 痛い!」


どうやら乱暴に降ろされたようです。


「まずは、味見だ。そのドレスは俺の分だ。そっちの侍女三人はおめー達の好きにしろ!!」


「おかしらーー!! ありがとうごぜーます!!」


「ふふふ、盗賊なんざー、いつ殺されるかわからねえ。たっぷり楽しみな」


「へいっ!!」


「きゃーー!! いやあー!! やめてーー!!」


悲鳴が上がります。

そして、服が破られる音がします。


「俺はよう! 紳士だから服を破るのはなあ。嬢ちゃん、服は自分で脱いでくれねーかなー」


「い、嫌です!!」


「ひゃあーはっはっ!! てめーに拒否権はねえんだよ。このレンカの宝刀で切り刻まれてえのか!!」


「た、助けて下さい。おねがいします」


「はあーはっはっ、だめだ、さっさと脱げ!!」


「う、ううっ」


お嬢さんと呼ばれた女性が、泣きながら服を脱ぎ始めました。

歳は二十代前半、とても美しい女性です。


「おい、おめーら、その侍女をやるのを一時中止しろ!! お嬢ちゃんあんたももういいや!」


「えっ!??」


侍女達はほっとした表情になりました。

お嬢さんも、驚いた顔をしています。

侍女の三人は少し破かれていますが、薄緑色のメイド服を着ています。

三人とも整った顔をした美人です。

助かったみたいで、よかったです。

私は、助かったのならいいやと思って、先を急ごうと思いました。


でもなんで、やめたのでしょう。少し気になりますね。

もう少しだけのぞいていきましょうか。

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