「レイカ姉ー!! カツを捕まえてきたぞーー!!」
一番体の大きいイクサちゃんと二番目に体の大きいライちゃんが、ぶたを捕まえて帰って来ました。
棒に足をくくりつけて前後で支えて持って来ました。
「イクサちゃん! ライちゃん! それはカツじゃなくて、ぶた……じゃなくて、いのししですからねー!」
二人は、200キロを超えようかという、大きないのししを山で捕まえて帰って来ました。
既にここに来てから、一年が経ちました。
二人はとてもたくましくなっています。
私達のヤマト村でもたくましさでは群を抜いています。
私は皆で住むこの地を、ヤマト村と名付けました。
全員が素敵な名前と褒めてくれました。私も気に入っています。
「レイカ姉ー!! オラ達はカラアゲだーー!!」
トウカちゃんが言いました。
トウカちゃんやイクサちゃん、ライちゃん、アサコちゃんは、自分の事をオラやオレと男言葉で話します。可愛いのだから女の子のようにちゃんと話せばいいのに、とは思いますが無理強いはしません。なにか、考えがあるのかもしれませんからね。
「トウカちゃん、アサコちゃん。それは、カラアゲではありません。鳥です!」
二人が捕まえた鳥は、トサカがあってまるでニワトリみたいです。
羽がカラフルで、空を飛ぶので原種かなと思っています。
「どうせ、今日カツとカラアゲになるのだから一緒です」
四人が笑って言います。
「まあ、そうですけどね。これで二ヶ月分のお肉が手に入りました。ありがとう」
「うふふふふ」
四人が自慢そうに、それでいてとてもうれしそうに笑います。
とても美しくて、かわいい子達です。
「カラアゲとカツーー!!」
川から残りの子供達が帰って来ました。
川で魚取りをしている時に、大きな砂金が見つかったので、最近は休みの日に小さい子達は鉄人ゴーレム同伴で砂金取りがブームになっています。
鉄人ゴーレムは、水難救助には向いています。
水中から空までフルに活動できますからね。子守りに最適です。
「沢山取れましたか?」
「ううん、少しだけ。でもね変なのが取れたの」
一番年下のチマちゃんとヒジリちゃんが見せてくれました。
手には赤い金属と青い金属が乗っています。
「綺麗ね」
「レイカ姉、持ってみて」
「えっ? なにこれ!?」
小さな欠片なのにとても重い。
なんの金属か分りませんが、高価な物かもしれません。
「みんな、金色と赤と青は集めて下さい」
「はーーい」
五人が良い返事をしてくれました。
ヤマト村では少し問題が起きています。
最初は、小バエでも少しはレベルが上がっていたのですが、最近は木人を何体倒してもレベルが上がらなくなりました。
恐らく、日本でやったRPGのように弱い敵では、レベル上げがしにくくなっているようです。
木人より一段強いゴーレムは、ここでは鉄人しかいませんが、鉄人はここの子達では倒す事が出来ません。
鉄製の武器ではダメージを与えられないのです。
鉄小バエなら鉄の棍棒でつぶせますが、おそろしい数を倒したところで、何ヶ月かかっても成長がありません。
鉄小バエより。木人の方が、効率が良さそうなので、今では毎日木人を飽きずに倒しています。
だから、ヤマト村では、週休二日制にしました。
毎日、毎日、代わり映えのしない木人倒しはつらいので、気分転換に週に二日お休みを取るようにしたのです。
休みの日は自由と言ったら、大きい子は狩猟へ、小さい子は川へ砂金取りに行くようになりました。
まるで昔話のようですね。
子供達は、それぞれわかりやすい特徴が出て来ました。
魔法が全く使えない子供達。この子達は全員からだが大きくて筋肉が発達しています。
まだ九歳なのに、身長は百五十センチを越えています。具体的にはアサコちゃん、イクサちゃん、トウカちゃん、ライちゃんです。
そして、体は、魔法を使えない子達に比べれば劣る物の、体も大きくて、魔法も使える子達。具体的にはイサミちゃん、シノブちゃん、チマちゃんです。
さいごに、魔法の力が強くて、体が余り大きくならない子達。具体的には、ヒジリちゃんとマイちゃんです。体が大きくならないと言っても、他の子達に比べればと言う事です。私よりも、はるかに大きくなりました。
日本のあった地球では、魔法は誰も使えませんでした。この世界でも、魔法を使える人を魔女と言って駆逐すれば、すぐに魔法を使える人のいない世界になりそうです。
案外、地球もそうやって、魔法を使える人を絶滅させてしまったのでは無いでしょうか。
この世界にいると、そんな感じがします。
晩ご飯のメニューは皆が期待している、とんかつと唐揚げにしました。
ほかほかご飯と、お味噌汁で食べれば最高です。
自宅の大テーブルで、全員で一緒に食べます。
「レイカ姉のご飯はおいしいー!!」
「うふふ、お替わりもありますからね」
「おかわりーー!!!!」
全員がお茶碗を出しました。か、かわいーーい!! 全員可愛すぎます。
夜は個室があるのに、全員で私の部屋で体を寄せ合って眠ります。
木の床の上で、毛布も無しで直接眠ります。そう、あの時の船の中のように……。
私達は、今もどこかで運ばれている奴隷達の事を絶対忘れません。いつか力をつけて、泣いている奴隷達を助ける。その日のために……。