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0009 その日のために

「レイカ姉ー!! カツを捕まえてきたぞーー!!」


一番体の大きいイクサちゃんと二番目に体の大きいライちゃんが、ぶたを捕まえて帰って来ました。

棒に足をくくりつけて前後で支えて持って来ました。


「イクサちゃん! ライちゃん! それはカツじゃなくて、ぶた……じゃなくて、いのししですからねー!」


二人は、200キロを超えようかという、大きないのししを山で捕まえて帰って来ました。

既にここに来てから、一年が経ちました。

二人はとてもたくましくなっています。

私達のヤマト村でもたくましさでは群を抜いています。

私は皆で住むこの地を、ヤマト村と名付けました。

全員が素敵な名前と褒めてくれました。私も気に入っています。


「レイカ姉ー!! オラ達はカラアゲだーー!!」


トウカちゃんが言いました。

トウカちゃんやイクサちゃん、ライちゃん、アサコちゃんは、自分の事をオラやオレと男言葉で話します。可愛いのだから女の子のようにちゃんと話せばいいのに、とは思いますが無理強いはしません。なにか、考えがあるのかもしれませんからね。


「トウカちゃん、アサコちゃん。それは、カラアゲではありません。鳥です!」


二人が捕まえた鳥は、トサカがあってまるでニワトリみたいです。

羽がカラフルで、空を飛ぶので原種かなと思っています。


「どうせ、今日カツとカラアゲになるのだから一緒です」


四人が笑って言います。


「まあ、そうですけどね。これで二ヶ月分のお肉が手に入りました。ありがとう」


「うふふふふ」


四人が自慢そうに、それでいてとてもうれしそうに笑います。

とても美しくて、かわいい子達です。


「カラアゲとカツーー!!」


川から残りの子供達が帰って来ました。

川で魚取りをしている時に、大きな砂金が見つかったので、最近は休みの日に小さい子達は鉄人ゴーレム同伴で砂金取りがブームになっています。

鉄人ゴーレムは、水難救助には向いています。

水中から空までフルに活動できますからね。子守りに最適です。


「沢山取れましたか?」


「ううん、少しだけ。でもね変なのが取れたの」


一番年下のチマちゃんとヒジリちゃんが見せてくれました。

手には赤い金属と青い金属が乗っています。


「綺麗ね」


「レイカ姉、持ってみて」


「えっ? なにこれ!?」


小さな欠片なのにとても重い。

なんの金属か分りませんが、高価な物かもしれません。


「みんな、金色と赤と青は集めて下さい」


「はーーい」


五人が良い返事をしてくれました。


ヤマト村では少し問題が起きています。

最初は、小バエでも少しはレベルが上がっていたのですが、最近は木人を何体倒してもレベルが上がらなくなりました。

恐らく、日本でやったRPGのように弱い敵では、レベル上げがしにくくなっているようです。

木人より一段強いゴーレムは、ここでは鉄人しかいませんが、鉄人はここの子達では倒す事が出来ません。

鉄製の武器ではダメージを与えられないのです。

鉄小バエなら鉄の棍棒でつぶせますが、おそろしい数を倒したところで、何ヶ月かかっても成長がありません。

鉄小バエより。木人の方が、効率が良さそうなので、今では毎日木人を飽きずに倒しています。


だから、ヤマト村では、週休二日制にしました。

毎日、毎日、代わり映えのしない木人倒しはつらいので、気分転換に週に二日お休みを取るようにしたのです。

休みの日は自由と言ったら、大きい子は狩猟へ、小さい子は川へ砂金取りに行くようになりました。

まるで昔話のようですね。


子供達は、それぞれわかりやすい特徴が出て来ました。

魔法が全く使えない子供達。この子達は全員からだが大きくて筋肉が発達しています。

まだ九歳なのに、身長は百五十センチを越えています。具体的にはアサコちゃん、イクサちゃん、トウカちゃん、ライちゃんです。


そして、体は、魔法を使えない子達に比べれば劣る物の、体も大きくて、魔法も使える子達。具体的にはイサミちゃん、シノブちゃん、チマちゃんです。


さいごに、魔法の力が強くて、体が余り大きくならない子達。具体的には、ヒジリちゃんとマイちゃんです。体が大きくならないと言っても、他の子達に比べればと言う事です。私よりも、はるかに大きくなりました。


日本のあった地球では、魔法は誰も使えませんでした。この世界でも、魔法を使える人を魔女と言って駆逐すれば、すぐに魔法を使える人のいない世界になりそうです。

案外、地球もそうやって、魔法を使える人を絶滅させてしまったのでは無いでしょうか。

この世界にいると、そんな感じがします。


晩ご飯のメニューは皆が期待している、とんかつと唐揚げにしました。

ほかほかご飯と、お味噌汁で食べれば最高です。

自宅の大テーブルで、全員で一緒に食べます。


「レイカ姉のご飯はおいしいー!!」


「うふふ、お替わりもありますからね」


「おかわりーー!!!!」


全員がお茶碗を出しました。か、かわいーーい!! 全員可愛すぎます。


夜は個室があるのに、全員で私の部屋で体を寄せ合って眠ります。

木の床の上で、毛布も無しで直接眠ります。そう、あの時の船の中のように……。

私達は、今もどこかで運ばれている奴隷達の事を絶対忘れません。いつか力をつけて、泣いている奴隷達を助ける。その日のために……。

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