昨日の夜は空の上でしたが、今日はちゃんと地上です。
家の中にはきっちり十部屋個室を用意して、一人一人プライベート空間を確保しました。
「うわあっ!! ここが私の部屋!?」
皆が目をキラキラさせて喜んでくれました。
「お姫様みたい」
一番小さいヒジリちゃんが一番喜んでいます。
うふふ、私の故郷の家は粗末な掘っ建て小屋でした。
この家は転生前の日本の記憶にある、いつもうらやましかった、近所のお金持ちの大邸宅を真似して作りました。
中には入った事が無いので外観だけですがとても立派です。
私が部屋に入ってのんびりくつろいで、明日しなくてはいけない事を考えていると、扉がノックされました。
「はい、なんですか?」
「レイカ姉ー!!」
ヒジリちゃんが飛び込んできました。
私より少しだけ大きくなったヒジリちゃんを抱きしめていると、扉から恥ずかしそうに他の子達が全員のぞき込んでいます。
部屋の中に全員招き入れて、床に座りました。
「うふふ、まるで船の中みたいね」
狭い部屋の中に九人が入って来て、全員がひっついていると拘束具が無い以外はまるで奴隷船の中のようです。
ヒジリちゃんとシノブちゃんを両横に抱えて、奴隷船の中のように横になりました。
あれほど嫌だった奴隷船ですが、こうして皆で横になると、我が家に帰った感じがします。
すごく落ち着きます。
「すーすー」
「くーくー」
小さい子達は疲れているのでしょうかすぐに眠りました。
「ふひっ」
「くすくす」
すぐ眠った子供達がおかしかったのか。
奴隷船から解放された安心感からか、大きい子達が笑っています。
「あなた達は寝ないのですか?」
「うふふ、眠いけど、レイカ姉に御礼が言いたくて」
一番体の大きいイクサちゃんが言いました。
「ええっ! 何を改まって、いいよそんな事」
「ううん! ダメです。それでは気が済みません」
イクサちゃんの次に大きい、イサミちゃんがいいました。
「レイカ姉ー!! 助けてくれてありがとう!!」
起きている子達が全員で言ってくれました。
そしてグイグイ抱きついて来ます。
「コラコラ! 私が一番ちびですからつぶれちゃいますよ」
言いながら、うれしくて涙が出そうになりました。
私の方こそ「ありがとう」です。
あの船の中がつらすぎて、大人のくせに私は何度も死にたいと思いました。
でも、あなた達の顔を見て、頑張って生きている事ができたのですよ。
「ぐわああー!! おっとう! おっかあ! つぶれる! がああー!! だずげてーー!! おっとー! おっかあー! 死なないでーー!! うわああーーん うわああーーん」
ヒジリちゃんがすごい寝言を言いました。
皆に押されて、悪夢を見ているようです。
「おかあさん! おかあさーん!! うわあぁぁーーん!!」
シノブちゃんまでつられて、悪夢を見ているようです。
どんな夢を見ているのでしょうか。かわいそうに。
こんな小さな子にこの世界は、どれだけ悪夢を見せるつもりなのでしょうか。
私はこの子達が、笑顔で幸せな生活を送れるようにしてあげたいと思いました。
いいえ! 私なら、この子達を強く自分たちの手で、しっかり生きていけるようにしてあげられる!
そうしなければと心に誓いました。