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0004 混乱に乗じて

「おい、タイゼン!」


「はい」


「見たか、あの魔法。物質を違う形状に変化させたぞ。お前、そんな魔法見た事があるか?」


「いいえ、見た事も聞いた事もありません。恐らく嵐の時、船がなんともなかったのも、あのレンカという幼女の魔法の力だったと思います」


「なにっ!? そうか! なるほど、船を沈まないように強化魔法をかけていたのか」


「そう考えるのが自然かと」


「ふむ、あの大きさの船全体に強化とは……。しかも二艘も。レンカとはどれだけの魔力総量を持っているのだ……」


「それに、いったい幾つの種類の魔法が使えるのでしょうか」


「恐るべき魔法使いだなあ。いや、あそこまでいくと大魔導師か」


あのー、私、まだ聞こえているのですが……。

それに私が使える魔法はゴーレム魔法だけです。

その他は全く使えない、へなちょこ魔法使いですよ。

魔法総量だって、毎日使役するゴーレムの数を少しずつ増やしただけで、大した量があるとは思えないのですが……。


「ここで、出会えたのはまさに天運。先の敗戦もこのためであったのだと思います」


「あーーはっはっはっはっ! お前はそれで自分の失策を帳消しにするつもりか? いやそうだな。レンカに会えたのはそれだけの価値がある。お前の失策はもはや過去の事忘れよう。ふふふ、なーんてな。人間、失敗の一つや二つ誰にでもある。最初から許している、気にするな。言う機会を逃していただけだ、すまなかった」


「ははっ!! ありがたきお言葉! このタイゼン、ずっと気になっておりました!!」


タイゼンさんは泣いているようです。

タイゼンさんの地位はどうやら軍師だったようですね。

どうりで頭が良さそうだったわけです。

……、ていうか、タイゼンさんの失策で、敗戦して奴隷になったのですかー。

それを笑って許しているのですか。

ゲンシンさんは、とても心の広い君主だったようですね。それに住民にも優しい。

信頼できる人なのかもしれませんね。さて、私は仲間のところへ帰りましょう。






外が暗くなると、船の中は真っ暗です。

何もみえません。

私の可愛いロリッ子達はどうしているのでしょうか。

ちゃんと待っていてくれるのでしょうか……。


「がふっ!!!!」


誰かが私にタックルしてきました。

みぞおちのいいところに入りました。


「レイカ姉ーーーー!!!!」


どうやら、全員いい子で待っていてくれたようです。

さっきのは、タックルではなくて抱きついて来ただけのようです。

私の幼女の体には、そう感じられただけのようでした。

私にしがみつく幼女達はみな、大きく揺れています。

いえ、揺れているのではなく震えているようです。

どれだけ、おびえていたのでしょうか。可哀想に。

でも、もうすぐ自由ですからね。


「皆、逃げますよ。まずは、甲板に出ましょう」


船倉には重く分厚い扉がついていましたが、それは拘束具を鉄人ゴーレムにした時に、一緒に木人ゴーレムにして撤去してあります。

苦も無く甲板に出られました。


「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」

「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

「ぎゃあ!!」

「ぐわあ!!」


船着き場の広場では、戦闘が始まっています。

ゲンシン軍と、治安隊でしょうか。

でも、すでにほぼ制圧されています。

武器をもったゲンシンさん達は、無敵のようです。

戦国の侍は、最強のようです。


「タイゼン!! 策を出せ!!」


「ゲンシン様、策など不要! 敵の準備が整わぬうちに、素早く城を攻めればよろしいかと」


「よし! わかった! 野郎共ーー!! 城を取るぞー!! つづけーー!!!!」


「おおーーっ!!!!!!」




「じゃあ、行きましょうか」


私の書いた絵図は船着き場で奴隷達に反乱をしてもらい、その混乱に乗じて誰にも見つからずに逃げ出す作戦です。ここまではうまくいっています。

私は、ロリッ子達を鉄人ゴーレムに抱っこさせました。

残った、鉄人ゴーレムは船の食糧などの詰まった樽を持たせます。

魔力を少し残して、船の船体から木人ゴーレムを造り出し、鉄人ゴーレムと同じように樽を持たせました。


船から飛び立つときに、ゲンシンさんに見つかりました。


「おーーい!! 嬢ちゃーん! 行くのかーーーって、すごい数だなあ!! また再会しよう! 達者でなー!」


「はい!! ゲンシンさんもお元気でーー!!」


「おうっ!!」


この時には、奴隷達は皆下船しているので、私は最後の魔力で船底を木人ゴーレムにしました。

船底に大きな穴の開いた船は、ギーーィィィと大きなきしむ音を出して次々沈んでいきます。


「タ、タイゼン! 見て見ろ船だ! 船が沈む!!」


「ゲンシン様、あの少女は船を沈める魔法まで……凄いものですなあ。あの嬢ちゃんがいれば、艦隊戦でも無敵ですなあ。何しろ大砲がいりません」


「ふぁははは! ちげえねえ! 再会が楽しみだ」


私達は、夜空を北にむかって飛びました。

鉄人ゴーレムが四十体と無数の木人ゴーレムが樽を抱えて飛んで行きます。

今はまだ、これが私の目一杯の魔力です。

ですが、もっと精進して、より多くの魔力をゲットして見せます。


「見ろ! タイゼン!」


「おおおー!! 美しい物ですなあ!!」


「ああ! 天の川に支流が出来た見てーに、月の光を反射してキラキラ光っていやあがる。あんなにあるのなら、木で出来た方も,もう二十体ぐれーもらっとけばよかった」


「ふふふ、で、ありますなあ……」


「おい! タイゼン!! いつまで見とれている。行くぞ!!」


「ははっ!」


全く、まだ聞こえていますよ。

城攻めなんて大丈夫でしょうか?

ゲンシンさん死なないでくださいね。

私達は、山を目指してゲンシンさん以外には気づかれる事無く移動が出来るようです。

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