目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
0002 港へ到着

「気をつけろーー!! 壊れたらすぐに直せー沈むぞーー!!」


「ちぃ!! 奴隷船は、だから嫌なんだ。ポンコツばかりだー!」


「しかたがあるめえ、奴隷なんか乗せたら、もう臭くて他に使えねえんだからよう!!」


どうやら、外は嵐のようです。

船倉についた小さな窓から、風と共に雨が入り込んできます。

風は、ビョオォォーーと化け物の泣き声の様な音をたてて、私のまわりの幼子をおびえさせます。

おかげで、日課の運動は中止のようです。


「レイカ姉ー……恐ーい」


ヒジリが私の体にしがみつきます。


「大丈夫よ。この船は沈まないから」


「ほんとう?」


今度はシノブです。


「本当です。私を信じて下さい」


「……」


二人は、いえ、同じ鎖でつながれた皆がしがみついてきます。不安なのでしょう。

でも私には、この船が沈まない事には自信があります。

うふふ、なぜなら私がゴーレム魔法をこの船にかけているからです。

もう一艘の後ろの船にもかけてあります。

船が揺れると酔ってしまいますので、出航の時にあまり揺れないようにかけておいたのです。


「お、おかしい。この海の荒れ具合に対して船が揺れていない」


「波が当たっても壊れねえ。どうなっているんだ?」


ようやく船員が異変に気付いたようです。

奴隷船の船員も命がけの仕事です。

給料はそれなりに貰える様ですが、今回も無事航海を終える事が出来るのは何割なのでしょうか。

すでに何人もサメの餌になっています。

船員も奴隷より少しましなだけで大変です。







航海は二ヶ月ほどで終わりました。

船は港に入ります。

シュサリアという国の、エンイカプという街の港に入りました。

奴隷という立場で無ければ、気持ちのいい素敵な港です。

ここで、私達奴隷はセリにかけられると船員が言っていました。


まだ、空は真っ青で見張りの人員以外の船員は船を下りていきましたが、私達奴隷は相変わらず薄暗い船倉です。


「時間は丁度良いわね」


「えっ!? なに?」


港に着いてから、薄ら自分たちがどうなるのかを感じているのか、皆が私にしがみついて震えています。

でも、私の独り言が気になったのか、みんなが私の顔を見つめてきます。

全員可愛い顔をした美人さんばかりです。


「うふふ、独り言です。みんな、心配しないでね。皆の事は私が何とかしますから」


こんな可愛い子供達を不幸になど絶対にさせません。

おじさんが絶対守って見せます。


――えっ……おじ……


私の前世っておじさんなのでしょうか?

そんな事より今は状況確認が先でした。

私は、船体から、木製の海鳥と、ネズミのゴーレムを造り出します。

そして、港の状況をくまなく調べはじめました。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?