「気をつけろーー!! 壊れたらすぐに直せー沈むぞーー!!」
「ちぃ!! 奴隷船は、だから嫌なんだ。ポンコツばかりだー!」
「しかたがあるめえ、奴隷なんか乗せたら、もう臭くて他に使えねえんだからよう!!」
どうやら、外は嵐のようです。
船倉についた小さな窓から、風と共に雨が入り込んできます。
風は、ビョオォォーーと化け物の泣き声の様な音をたてて、私のまわりの幼子をおびえさせます。
おかげで、日課の運動は中止のようです。
「レイカ姉ー……恐ーい」
ヒジリが私の体にしがみつきます。
「大丈夫よ。この船は沈まないから」
「ほんとう?」
今度はシノブです。
「本当です。私を信じて下さい」
「……」
二人は、いえ、同じ鎖でつながれた皆がしがみついてきます。不安なのでしょう。
でも私には、この船が沈まない事には自信があります。
うふふ、なぜなら私がゴーレム魔法をこの船にかけているからです。
もう一艘の後ろの船にもかけてあります。
船が揺れると酔ってしまいますので、出航の時にあまり揺れないようにかけておいたのです。
「お、おかしい。この海の荒れ具合に対して船が揺れていない」
「波が当たっても壊れねえ。どうなっているんだ?」
ようやく船員が異変に気付いたようです。
奴隷船の船員も命がけの仕事です。
給料はそれなりに貰える様ですが、今回も無事航海を終える事が出来るのは何割なのでしょうか。
すでに何人もサメの餌になっています。
船員も奴隷より少しましなだけで大変です。
航海は二ヶ月ほどで終わりました。
船は港に入ります。
シュサリアという国の、エンイカプという街の港に入りました。
奴隷という立場で無ければ、気持ちのいい素敵な港です。
ここで、私達奴隷はセリにかけられると船員が言っていました。
まだ、空は真っ青で見張りの人員以外の船員は船を下りていきましたが、私達奴隷は相変わらず薄暗い船倉です。
「時間は丁度良いわね」
「えっ!? なに?」
港に着いてから、薄ら自分たちがどうなるのかを感じているのか、皆が私にしがみついて震えています。
でも、私の独り言が気になったのか、みんなが私の顔を見つめてきます。
全員可愛い顔をした美人さんばかりです。
「うふふ、独り言です。みんな、心配しないでね。皆の事は私が何とかしますから」
こんな可愛い子供達を不幸になど絶対にさせません。
おじさんが絶対守って見せます。
――えっ……おじ……
私の前世っておじさんなのでしょうか?
そんな事より今は状況確認が先でした。
私は、船体から、木製の海鳥と、ネズミのゴーレムを造り出します。
そして、港の状況をくまなく調べはじめました。