「東和は認められたい人はいるか?」
東和と一緒に赤井(ポルックス)は、今度は居酒屋ではなくレストランに来ていた。ファミレスという名のそこは安い値段で食事がとれる。まだ給料が出ていない。レイブンに少しだけお金をもらった。
「認められたい人か。父かな」
「父。いた事がないから分からない。レイに、認められたい。おれはまだ信頼すらされてない」
探らないといけない相手に相談するなんて、どうかしている。ポルックスは自分で自分が分からなくなっていた。
「信頼は相手を深く知る必要がある。
だから、俺に話してよ。大丈夫。俺は味方だから」
何故だろうか。頭がくらくらする。この人に全てを委ねたい気持ちになってきた。甘い匂いがする。レイブンの言葉が頭の中に聞こえてきた。
目に見えるもの、聞いたものを、全て信じたらそこで負け。分かったか。お前は人を信じ過ぎる。
「ちっ」
舌打ちが聞こえて、意識が浮上した。東和が舌打ちをしたようで、怒らせた原因はなんだろう。
「どうした」
「なかなか、手強いねぇ」
「手強い?」
「ごめんごめん。こっちの話。気にしないで。
レイはどんな人。会ったとき、怖そうだったから」
何故、レイの事ばかりを気にする。こちらから情報を得ようとしていると感じ、その場合のマニュアルとして完璧に覚えていることを、そのまま話した。