ポルックスは驚いて、飛び起きた。昨日の記憶は居酒屋という場所で途切れている。しゅわしゅわするビール。飲み物を飲んで。気絶した。おれはまた、レイブンに迷惑をかけた。そうでなければ、ベットに寝ているはずがない。ポルックスは部屋を出て直ぐに階段を降りた。
「目玉焼きはこのぐらいで、フライパンから出すのかね。焼かなさすぎでは」
「レイちゃん。これ以上焼いたら真っ黒焦げになる。やめなさい。十分ですから」
「皿に移せば良いのだな」
朝食を作っているレイブンと誰か。レイブンと親しそうな所を見るに知り合いなのだろう。2人に向かってポルックスは挨拶をした。
「おは、おはようございます」
「おはよう。ポルックス。まったくおまえは。
もう少し警戒をしなさい。ビールは飲むな。
おまえにお酒は身体に合わない」
「申し訳ありませんでした。失態を」
「言わなかったのは、わたしだ。悪くわない。
気を付けなさい。未知なものに手を付けるのは危険だ。何も調べ物せずにね。彼は紫水。わたしの友人だ」
「よろしく。ポルックスだから、ポルちゃん」
「紫水さん。おはようございます。よろしくお願いします」
誰なんだ。ポルックスの中で今まで感じた事のない感情が生まれた。どうして、レイブンは何も話してくれない。おれが頼りないから。暗い感情が心を埋め尽くす。感情の名前をポルックスは、まだ知らない。