レイブンは1人、ガーネットが展示されている美術館の向かいのBARに来ていた。ポルックスは美術館の清掃員として潜り込んでもらっていた。
「久しぶり。レイちゃん」
レイブンは昔1人で日本に来た頃に、BARの店主にスカウトされて働いていた。店主紫水は天才詐欺師である。スカウト=同じような匂いを感じたから。意気投合して、こちらで仕事をする時は働かせてもらっている。
「久しぶりなのだよ。紫水」
「浮かない顔だ。いつものでいいか」
「マティーニを頼むよ」
まだ開店時間ではないので、カウンター席にレイブンは座りカウンターに突っ伏す。
「はい。マティーニ。何があった。仕事で来たんだろ」
「意志を持つガーネットを助け出し、あるべき場所に戻すために」
「ふーん。面白そうだから、盗む日は教えてください」
「別に教えても構わないのだよ。実は相棒が出来た。どうにもうまく話せない。仲良くなりたいとは思っているがね」
ガシャン。
紫水が珍しくグラスを床に落とした。すぐに破片を拾い冷静な表情で言う。
「失礼。きみが相棒を作るなんて、少々いえかなり驚きました。実は数年前におれも相棒を作りました。最初はそんなものですよ。仲良くなりたいなら、コミュニケーションとプレゼントが効果的です」
「プレゼント?」
「感謝のプレゼント。好きなものとか食べ物」
レイブンはまったく見当もつかなかった。