レイブン達が次獲物を決める数日前。レイブンは水晶を覗き込んでいた。
「ガーネットを知っているかい。ポルックス」
「ガーネット。もっとも強固な宝石」
「それだけかね。全くおまえは宝石に興味がないな。ガーネットは美しさ故に不吉な事件を引き起こす。何人もの血が流れた。素晴らしい」
「恐ろしいではなくてか」
「恐ろしい。何処がだ」
ポルックスにはレイブンが理解出来ない。どうしてレイブンについて来てしまったのか。今でも分からない。不思議と後悔はなかった。価値観が違い過ぎるから遠慮せずに話せるのが、良かったのか。
「いいです。ガーネットがどうした?」
「ニッポンの美術館に展示されているらしいのだよ」
「ニッポン?水晶に映る場所ですか?」
「そうだよ。楽しみだねぇ。行くの」
「ゴミゴミとした建物が立ち並ぶ場所に。
まさか、お得意の時空転移でか」
時空転移。レイブンだけが使える魔法。水晶から見える他の惑星から、違う時間軸の世界までありとあらゆる別の場所に転移することが出来る。ピンポイントでその場所に転移出来ない。位置がずれる時もある。時空酔いがポルックスの悩みでもある。
「わたし1人で行くから気にしなくて良いのだよ」
「いえ。1人で行かせて、問題を起こされても困ります。目的忘れて遊び惚けられても困る。準備します」
「信用ないな」
「前科しかないからな」
ガーネットを巡る物語が始まろうとしていた。