最上階にある美術館。見所は血のように赤いガーネット。人々とから注がれる視線。綺麗綺麗のありきたりな言葉。うんざりしていた。他に言葉は無いのか。美しいだけじゃない。私を入手するために沢山の血が流れた。知らない呑気な顔した人々が私を見ている。毎日毎日。同じ。つまらないつまらない。
他の者と全く違う視線。うっとりと恋人を見るかのような表情。ハンターのようにも見える。人の隣には獰猛な猟犬を思わせる紫の瞳。
「美しい。実にいい。脚本を書かなければ」
「予告状ではないのか?」
「分かっていないのだよ。まぁ少し待っていたらいい。観光でもしながら」
「ゴミゴミした場所を観光」
「もしや、わたしと観光したいのか。それなら……っ」
目の前で殴られている人を見たのは、初めてだった。言っている意味は分からない。見られるだけが終わるなら、ここから連れ出してくれるのなら。違う世界を見たい。見ている者の違いなんて分からない。いつか見た空が見たい。海賊と呼ばれた人の手に渡った時に、青く広がる空と雲を見た。眩しくて暖かかった。見れたらいいなと思いながら、今日もまた綺麗だ。美しいなどと変わり映えのしない褒め言葉を聞きながら、じっとしているのだ。