再び会場の電気がついた時、お嬢様は消えてインペリアルトーパーズが空中で輝いていた。
「会場にお集まりの皆様。インペリアルトーパーズはレイブンがいただきます。騎士団の皆様。貴族の皆様。参加者の皆様。パーティーはお楽しみいただけましたでしょうか。最後に幽霊の嘆きをお聞きください」
給仕をしていた人全員にかけられていたレイブンの魔法が解かれた。混乱は避けるため、お嬢様の親族だけには、給仕全員が骸骨に見えていた。ずっと彼女を治療してきた医師が母親、父親につめより、右手を母親の顔。父親を左手の顔に当てた。
「お嬢様はずっと一緒にいた。待っていた。家族が謝罪してくれる事を。お嬢様はわたしと婚約し、わたしの腕の中で死んだ」
恐怖で腰を抜かし2人は床に座り込んだ。見届けて医師も消え、他の給仕たちも次々と消えた。
「おい、レイブン。てめぇは何がしたかった」
ジンはレイブンがお嬢様の復讐に手を貸すなんて、わざわざそんな面倒な事をしたのが信じられなかった。逮捕されるかもしれないのに。
「何とは。物語は完結した。宝石にまつわる物語はハッピーエンドにしなければならない。廃墟の嘆き。宝石の現代での物語のタイトルだ。良い響きだろ。実に素晴らしい。ただ盗むのはわたしの美学。怪盗としての美学が許さない。分かってもらおうなんて思っていない。理解出来ないだろう」
「分からねぇな。何がしてぇ。怪盗でなくても良いだろう。俺は思うがな」
「今回は名前を覚えてもらえれば、それでいい。
ジン団長とギーシュ副団長。帰るよ。ポルックス」
ギーシュの近くにいた給仕が、いつの間にかレイブンの隣にいた。変装も解けている。顔に、ギーシュは見覚えがあった。
「王室のホムンクルス」
「おや、知ってる人がいた。良かったではないか。ポルックス」
「茶化すな嫌味か。レイ。それに嬉しくない」
「素直じゃない奴だ。また、お目にかかれる日を願って」
レイブンが指を鳴らせば、2人と宝石は煙のように消えた。