彼女のダンスにつられるように、会場に招待された人々も踊りはじめた。レイグリスことレイブンが彼女に出会ったのは、勇者パーティーが気絶し、逃げ帰った日。廃墟の病院に入ったレイブンは骸骨医者、看護師にもてなされた。最後に彼女の元に連れて行かれたのだ。
「見えるうえに、怖がらないのね」
「まったく怖くはないのでね。わたしが興味あるのはおまえの胸元に輝く素晴らしい宝石だけだ」
「潔いのね。素直な人。嫌いじゃないわ。
でも、この宝石を渡すわけにはいかないわ。この宝石があるから、病院に未だ居続けられるの。
ただ、願いを叶えてくれたら宝石は渡すわ」
「幽霊の嘆きには興味はある。幽霊からの依頼こんなに面白い事はない。新鮮味に欠ける日常よりよっぽど面白い。嘆き、願いはなんなのだ」
「難しいことじゃないわ」
彼女はダンスパーティーをしたいと言った。出来れば陥れた人々に復讐がしたい。
「復讐は簡単。虚しいだけなのだよ。終わってみればこんなものかって、それでもやるの」
「やるわ」
彼女が現れただけで、動揺して墓穴を掘った。まさか誰がやったのか全て自白してくれるなんて思ってもみなかった。思ってもみない行動、言葉を言ってくれるこれだから人間は面白いとレイブンは思う。
「気が済みましたか。お嬢様」
「見た。あいつらの顔。もう1つ心残りがあるの。私のお墓ないのよ。骨はベッドにあるわ」
「建てるのはここで宜しいですか?」
「ええ。約束「ダメですよ。お嬢様。わたしは怪盗。渡された貰ったことになってしまう。これからがわたしのお仕事です」
音楽が止むと同時に、会場の電気が再び消された。