「怪盗がどうして、掃除する。意味が分からない」
ポルックスの言葉に、レイブンはまた笑う。今度は本当におかしい。面白いというように。
「そうだね。下準備さ。ダンスパーティーの。怪盗にも盗む前の準備は必要」
「どうして、ダンスパーティーなんですか。
今回盗む宝石と関係があるのか」
「どうだろう。盗むものと、ここがどんな場所かは教えてあげるよ」
廃墟の病院はたった1人の病弱な貴族令嬢のために建てられた。ベットから出る事も出来ず、咳をすれば血を吐くほど虚弱な体。彼女を医者も看護師も見守り、なんとか完治出来るように努力した。
「どうなった。死んだ」
「治療出来ずに死んだ。話しの腰をぽっきり折るのはやめなさい。ポルックス。貴族令嬢が唯一持っていた宝石インペリアルトパーズ。今回の獲物だ」
「インペリアルトパーズ?」
「宝石を知らないな。オレンジの地色。見る人によってはピンク色の宝石なんていう人もいれば、イエロー、ブラウンという人もいる。宝石はグラデーションが素晴らしい。彼女が持つに相応しい、希望の意味を持つ宝石」
「何処にある。今から探せばいい」
「分かっていないな。おまえは。今探しても何も出ないよ。全てを叶え、元に戻してあげないと。
怪盗は全てをハッピーエンドにするのが仕事だからね。さっさと掃除するよ」
どうしてダンスパーティーをするかはレイブンは答えてくれなかった。ポルックスも答えてくれないなら深くは追求はしない。これ以上聞けるようなことはないので、掃除に集中することにした。