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第3話

 廃墟の病院に辿り着いたレイブンとポルックス。先日の勇者パーティーの失態の一部始終を見ていたであろうレイブンに、ポルックスは問いかけた。


「ここで、勇者パーティーは何をされた。

気絶して帰って来て何も覚えてないの一点張りで話さなかった」


 レイブンがポルックスの問いかけに答えるでもなく、声を殺して笑いはじめた。ポルックスは経験上知っている。面白いから笑っているのではない。レイブンにとってかなり刺激的で実験レポートに加えられる結果だったので、嬉しくて笑っているのだ。レイブンは冒険者パーティーが次々と廃墟の病院へ行く事を止めなかった。止めなかった理由。依頼をそのまま貼っていた理由。最高のレポートを書き、奪った宝石を本の背表紙に埋め込むためだ。誰が依頼を張ったのかもレイブンは知っている。毎回ポルックスには話してはくれない。最終的には話してくれるのだが、クライマックスを書き終えてから、毎度の事だ。ポルックスも答えてくれないと分かっているから無駄質問はしない。


「聞きたいかい。物好きだねぇ。おまえも」


「一部始終をストーカーのように観察していたあんたは俺以上に、物好き、変態なんだな」


「うん。まぁ、そんなに褒めないでくれ照れるだろ。褒めてもチョコしかあげられないぞ」


「褒めてない。いらない。物好き、変態のどこが褒め言葉だ。きみはおかしい。話を脱線させるな」


「おっとすまない。何の話、ああ、そうだ。勇者パーティーの話だった。恥ずかしくて話せないだろう。入って直ぐに現れた。あれなのだよ」


 廃墟の病院の扉を開ければ、奥の方から青白い光がゆらゆら近付いてくる。レイブンとポルックスの前で止まり、青白い炎を纏い白衣を着た骸骨に姿が変わる。


(やっと来ましたか。ベット片付けました。掃除は良いのかな。ぼくは人の体を切り刻んで治す事をしか出来ないから。掃除は苦手なんだ)


「何度か、このアルベルド医師と話してね。

 青白い地獄の炎はわたしの魔法なんだが、ポルックスにも見えるようになっている。勇者パーティーは青白い火の玉を見て泡吹いて気絶。驚いたアルベルドがベットに寝かせて介抱した。勇者パーティーが目を覚ました」


今度見たのは恐ろしい骸骨。女子のような馬鹿でかい甲高い悲鳴をあげた。


「ポルックス。悲鳴をあげ、今度は失禁をして気絶したわけだよ」


「プライドだけは高い勇者パーティーが報告出来ないわけだな」


「その通り。今は芸術的な気絶はどうでもいい、さっさと掃除をするよ。ポルックス」


レイブンが指を鳴らせば、箒とちりとり、モップを持った骸骨看護師が5人現れた。あまりの非現実的な光景に、ポルックスは頭を抱えた。

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