冒険者ギルドの2階。従業員用の部屋。先ほど看板を睨んでいた紫の瞳をした男。ポルックスが部屋のドアを開けて、窓の側にある紐を引っ張る。本来ならカーテンが閉まるだけ。カーテンが閉まると同時に天井の一部が開き階段が現れた。その階段を登り、外観から想像つかないほど広い屋根裏。魔法で空間がいじられている。万が一誰かが屋根裏に入っても魔力を登録していないと、埃だらけで小汚い物置のような場所に見える仕組みだ。屋根裏部屋に巨大なクッション。囲むように正方形の色とりどりのクッション。クッションに埋もれるようにして体を丸め、気持ちよさそうに眠る男。髪色はアイスブルー。耳はエルフ特有の尖った耳。彼が寝返りをうち、露わになった無防備なお腹を容赦なくポルックスは踏んだ。
「ふぐ。何するんだ。人類最高傑作」
痛みで彼が目を覚ました。目がかなり細い糸目。開いてるか開いていないのかいまいち分からないが、緑色の瞳が微かに見える。
「呼び方。不快。変えることを要求する」
「ふ、ぐえ。がは。分かった。分かった。ポルックス。降参。何を怒っている。愛するおまえに。待って、何故よけいに力一杯踏む」
「愛する。違う。ホムンクルスの体をだろ」
「そこか。分かった。端折らずに言おう。
おまえの「言わなくていい。早く起きろ。レイ」
ここはレイブンがオーナーを勤める冒険者ギルド。オーナーのレイとして出資し人を雇いギルドを作ったのだ。後は、優秀な会計と受付嬢。ホムンクルスのポルックスに運営を任せ、日がな一日ぐーたらしている。
「はいはい。どうした」
寝癖がついた髪。大欠伸をしながら、レイブンは起き上がった。
「予告状出した」
「出したが、言ってなかったか?」
「言ってない。言ったはず。あんたの予告状。急過ぎる。今宵とは今日か」
「ああ、そのとお、ぐふ。首が締まる。胸倉掴まないでおくれよ」
「準備。大変なんですが」
「わたしが今から行って準備をだね」
「もう昼ですが」
「魔法があればなんとか、分かった今すぐ行く」
「懸命な判断。おれも行きますから」
ズボンに灰色のジャケット。帽子に眼鏡をかけて、レイブンは屋根裏から屋根の上に。続いてポルックスが屋根の上へ。屋根から屋根に飛び移り移動して廃墟の病院へ向かった。