元気よく王都を出発したまではよかった。
問題はそれからだった。
王様に一人でやるようにとは言われたが、馬車や宿ぐらいは問題視はされないよね。お城に行く時も何度も使ったけど文句言われなかったしと解釈して、馬車に乗ったのが間違いだった。
最初に乗った馬車が、あたしが行く予定の場所とは全然違う方角に行ってしまって慌てた。
乗る前に御者にちゃんと聞いたのに、なんで間違うのよ。というか、御者はどうして気付かなかったのよ。
あたしが気付いたのは、馬車から降りて宿に泊まろうと街中をさ迷っていた時だったので、文句の一つも言えなくてくやしかった。
事前にリサーチしておいた宿が見つからず、途方に暮れて街の人に聞いたのがきっかけ。
その時には馬車はとっくに姿を消していてどうにもならなかったわ。ここまでのお金無駄にした。
お金は大事なのに!
しばらく落ち込んだけど、仕方ない明日からの移動を間違えなければいいやと思っていたらら二度も三度も同じようなことが続いて、さすがにこれはおかしいと馬車を利用するのを止めた。
何であんなことが立て続けに起きるんだと、首を傾げざるおえなかったが
、後で聞いたら最近ああいう詐欺が増えているんだとか。
聞いてしばらくはふざけんなよと暴れたくなったが、暴れたってお金は戻って来ない。
通報したところでお金が戻って来ることは殆どないそう。
みんな泣き寝入りするしかないだなんてあり得なくない? 国の偉い人たちは何してんだって話しよ。帰ったら絶対にこの事は文句言わせてもらおう。
最近はああいうのが増えたせいで、揉めることが増えてるそう。他にも似たような詐欺のことを
多分あたしが女の子一人で文句を言われても大したことは出来ないと踏んでやったのだろう。地獄に落ちやがれ。クソ野郎共が!
しかも、もう騙されたくないという気持ちから歩いて行こうと考え、ずっと歩き通しだったから余計に時間が掛かってしまった。
とても疲れたけど、それでも、旅の間に見た光景はとても綺麗でいつかユリアと一緒に見たいと何度思ったことか。
この国の西にある山は現在二十から三十ぐらい。
直接剣がないかって聞きくのもどうかと思って、少しぼかしながら聞いてみたけど、いい反応が返ってくることはなかった。
それらをしらみ潰しに探して行くのは面倒だったが、地元の人に山に何かないか聞いて回ったが、それらしい物を見たという人はいなかった。
やっぱり自分で探すしかないよね。
あの本がどれぐらい古い本なのか分からないが、それでも剣を誰かが持って行ってしまったらこんな風に探しに行けなんて言わないだろうから、どこかの山にまだあるはずなんだ。
あちこちで山に行くと言うと狼や熊が出るからやめておけという人もいる。それはありがたいが、あたしにはしないと行けないことがあるから今日も山に入る。
山に入って一週間。王都を出てから一月。
長いちゃ長いが、短いと言ったら短い時間。
多分そろそろジゼルにもあたしの不在がバレる頃だろう。
一回手紙送った方がいいかな? と思いつつ夜は疲れきって宿に戻ればすぐに眠ってしまうのでそんな時間取れそうにないや。
時間があるんだったらあっちこっち探し回った方がいい。
一週間かそこらじゃ見つからないとは思っていたが、こうも見つからないと本当に探し出せるのかと不安になってくる。
その度に諦めるにはまだ早いと自分を鼓舞して山を駆け回る。
「……にしても、こんな風に山をうろつくの後どれぐらいしたらいいのか」
もっと簡単に目的の物が見つかったらいいのに。
「こうピカピカ光るとか……祝福を無効化するんだからまがまがしいとか?」
想像してみるとそんな剣近寄りたくはないな。
メルヘン過ぎかもしれないが、どうせ近寄るのならいい匂いがするとか、怪我が治るとかの方が嬉しい。
……そんなのがあったらすぐに噂になっているか。
そんで誰かが持ち返って騒ぎになっている。こんな山奥なんかに残っている訳がない。下手したら王室に献上されていたっておかしくないもん。
王様がわざわざ山に探しに行くようにって言ってきたからその線はないはず。
ジゼルは王様のことを嫌っているみたいだったけど、多分そこまで悪い人ではないと思いたい。
お城に行くと忙しそうだけど、あれこれと気を使ってくれたり、分からないことはヒントぐらいはくれるので、あたしはこの国の王様のことは嫌いではない。
それなら、どこかの山奥にひっそりと存在してるか、土の中に埋まってる可能性だってある。
そうなったら穴を掘ってでも見つけ出さなきゃいけなくなる。
「……って埋まってたらこの山だけでもかなり広いってのに、どこの山かも分かんないのに掘る?」
何年掛かる? というか、そんなのあたし一人じゃ無理だ。
なら、誰か雇うってなるけど、そんな大金ある訳じゃない。
ユーリスのくれた路銀だっていつまでもある訳じゃないんだし。
すぐに見つかるとは思わないけど、どうか山奥のどこかでひっそりとある方であってくれ!
山をいくつも掘り返す資金も労力もあたしにはないのだから。