目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第56話

 グロリアに連れられてやって来たのはお城。


 目的地はお城?


 会うのは王様? それとも違う人? あの話し合いに来ていた人たちの顔を思い浮かべるが、どれもしっくりこない。


 ジゼルも屋敷にいるはずだからお城に来たって意味がない。やっぱり会うのは王様なんだろうか?


 訳が分からないままグロリアに連れられて奥へ奥へとやって来た。


 この辺りはあたしが来たことのないエリア。さっきまでのエリアとは違って警備の兵士? 騎士? どっちか分かんないけど、その人たちがやけに多いなと思ったら歩いている内にすぐにその数は減ってしまった。


 さっきのは何だったんだろ? あの辺りだけ厳重な場所が集まっているとかだったのかな? よく分かんなくてグロリアに聞けば詰所の近くだったらしい。


 紛らわしい。


 てっきり重要な場所かと思っちゃったじゃないのよ。


 グロリアに続いてしばらく歩いて行くと、両開きの大きなドアの前に立った。


 さっき聞いたからか、グロリアは城の中の説明を軽くしてくれた。あたしはお城には興味なかったけど、グロリアの話は面白くてついあれもこれもとねだってしまった程だ。


 話をしている間にいつの間にかたどり着いてしまったことを残念に思っていたらグロリアがドアの前に立っていた鎧を着た騎士に向かって声を掛けた。


 ドアの前の騎士はグロリアと話したら後、中に向かって小声で話し出した。あたしには聞こえないけど、多分グロリアが来たことを伝えているのだろう。


「入れ」


 しばらくしたらドアが内側から開いた。


 グロリアに続いて中に入ろうとしたら冷たい視線があたしに注がれる。


 場違いなのは分かっているから睨まないで欲しい。


「来たか」


 中で待っていたのは王様だった。


 お城に着いた時から何となく王様なのかなと思っていたから驚かないけど、グロリアはどうして内緒にしていたのか。


 そっちの方があたしがびっくりすると思ったとか? ここは驚くべき? ちょっと迷ったけど、せっかくグロリアが場所を提供してくれたんだから喜ぼう。


 えっと、王様への挨拶しなきゃ。


「グレースの輝ける王にご挨拶申し上げます」

「よい、楽にしておれ。それで──」


 王様への挨拶が下手だったのか、挨拶を止められてしまった。


 やっぱり焼き付け刃のマナーでは駄目だったのだろう。


 両開きの部屋は王様の自室なのかと思えば、ここは執務室なんだそう。


 他にもたくさんの部屋があるらしくて、移動が大変そうだ。


 お城は権威の象徴だって言うから移動が大変でも仕方ないのかもしれないけど、あたしには無理だな。


 あっちのお城の知っている部分の話をしてから本題に入る。


 あたしが気になっているだけかもしれないけど、王様はいつもの話し合いでも話を聞いているだけだもん。


 王様がどういうことを考えているのか分からないので、聞ける時に聞いておきたい。


 だから、気になっていることをグロリアのところでしたようにつっかえながら聞いてみた。


 あたしが話している間王様はいつもみたいに黙って話を聞いていた。


 話している間も何も言わない王様にどうして何も言わないんだろうと、段々とムカついてくる。


 相手は王様だから怒っちゃだめだと思う反面、ジゼルは王様に結構怒っているのだから怒ってもいいのだろうか? あ、でも、ジゼルは貴族だから許されている部分もあるのかもしれない。


 だったらあたしが王様に怒ったら、外に立っている騎士に捕まって不敬罪で捕まっちゃう可能性もある。


 ようやく動けそうになったのに、捕まって人生終了とか嫌過ぎる。


 だったら王様が何も言わず、いつまでも何も変わらない話し合いに参加し続けるべき? そんなの嫌だ。


 せっかくあの国に復讐してやるチャンスが巡って来たのに、こんなところでもたもたしてらんない。


「王様はこのまま話が進まないままでいいんですか? あたしは嫌です。ユリアを助け出せたのは運が良かっただけ、ラフォン様や他の人のお陰でここまで来ることが出来ました。でも、まだあの国に捕らえられている人たちはたくさんいます。その人たちを早く助ける方が大事なんじゃないんですか?」


 他にも言いたいことはたくさんあるが、早くあの国に行って復讐したい気持ちの方が強い。


 こんなに話が大きくなるとは思ってなかったけど、乗りかかった舟だもん。あたしに協力出来ることはするよ。


 そう考えていたのに、あのおじさんたちはいつまでもあたしの出身がどうとかネチネチとしつこ過ぎる。


 あたしの出身や生まれなんてこんな時何の役に立つ?


 あたしが怪しい?


 あたしが逆の立場ならそうでしょうね。でも、今その話しは関係ないじゃん。


 使えるものがあったら使うべきじゃないの?


 そりゃあたしもジゼルに関わると捕まってしまうかもしれないと考えていたけど、それは自分の保身のためだ。


 ジゼルとはしっかり話し合ったし、ユリアの心配もする必要はなくなった。


 もしかして、あの人たちも自分たちのことが心配?


 でも、あの人たちはいちゃもんつけるだけで、今困っているのはあの国に囚われている祝福持ちだ。あの人たちではない。


 引っ込んでろと言ったところで、あの人たちはあたしの話なんて聞いてないだろうし、また騒いでくると考えただけで気が滅入ってくる。


 なので、王様が何か言ってくれたら何とかなると思うんだけど、王様はどう思っているのか。


 言いたいことは言った。王様はなんて言うか。


「……ふむ、では、行こうか」

「へ?」


 また移動するの?


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?