ジゼルは王様にしばらく三人にして欲しいと言い、王様もそれに同意して他の人たちも連れて出て行った。
数人嫌そうな顔をされたけど、
全員が出て行き、三人だけになると室内はシンと静まり返り、何を言われるのかと怖くなってきた。
「あ、あのさ、あたしたちが逃げて来たことを言わなかったのは悪かったと思うよ。でも、本当はジゼルのお世話になることは考えてなかったし、出て行けって言うのなら出てくよ! あ、でも、あたしたちに使ったお金を返せって言われてもすぐには返せないけど、いつかは絶対に返すから! だから……」
「それ以上言わなくていいよ」
追い出さないでと口走ってしまいそうになって、慌てて唇を噛んで誤魔化していたらふわりと風が髪を撫でて、それに気を取られていたらジゼルがあたしとユリアをぎゅっと抱き締めて来た。
ジゼルに抱き締められるとは思ってなかったから、びっくりしてパニクってた頭が少しだけ落ち着いてきた。
そうだ。言おうか言わないかで迷っていたけど、それが今日になっただけだ。
今言ってしまえばいい。
「あ、あの……」
「……ラナの罪状は冤罪なんだよね」
「う、うん。あたしはユリアを連れて逃げただけ。もし、これで罪になるって言われてもあたしはユリアを連れて逃げたことは後悔したくない」
「お姉ちゃんが来てくれなかったらあたしの怪我はこれだけじゃ済まなかったはずなの。お姉ちゃんを怒らないで!」
ユリアと必死になってジゼルにあの時のことを伝える。
「僕が怒るなんてしないよ。ラナは家族を取り戻しただけだ。罪に問われるとしたらそれはあちらの国の連中だ。君たちは絶対に悪くない」
その言葉にホッとする。
ジゼルはあたしたちの噺を信じてくれた。
怖かったけど、話しをしてよかった。
その後、三人でもっと話したいと言われたが、王様をいつまでも待たせるのはどうかとなり、三人で話をするのはジゼルの屋敷に戻ってからすることを約束した。
「もういいか?」
外で待機している王様たちに声を掛けようとしていたドアが開いて、びっくりしてたら王様が顔を出して、さらにびっくりした。
外で聞いていたのかと聞きたくなったけど、聞くのもどうかと思って頷いたが、ジゼルは王様のことを睨んでるので同じことを思っていたみたいだ。
王様はジゼルの視線には興味がないみたいで、他に待機していた人たちを呼び戻してまたぞろぞろと中に入ってきた。
「話が出来たみたいでよかったよ」
「……言いたいことは色々とありますが、今は言いません。が、そろそろ隠居されては?」
「問題がありすぎて、隠居するにはまだまだ時間が掛かるな」
全員が席に座り直すのを横目に、王様とジゼルは小さい火花を散らしている。
一国の王様にあんなに軽口叩いていいのかと焦るが、他の人たちは対して気にしていないので、もしかしたらあの二人はいつものことなのかもしれないけど、あたしたち二人はそんなこと知らないからオロオロしっぱなしだった。
これは止めるべきよね?
「……陛下。そろそろいいですか?」
「ん? ああ、そうだな」
あたしが声を上げるより早く、陛下の右隣に座ったおじさんが声を掛けて、陛下が頷いたことにより、ようやく話が出来る。誰かは知らないけど、助かったわ。
「この二人は彼の国の被害者であり、証人である。彼の国は我が国以外からも神の祝福の子らを保護という名目で連れ去った。被害者は彼女たちにもいるはずだ」
ジゼルを見たが、こっちの意図は察してもらえずに頭を撫でられただけだった。
もう小さい子どもじゃないんだから恥ずかしいだけなんだけど。
ジゼルの手を無理やりどけてどういうこととジゼルにこっそり尋ねる。
「ユリアだけじゃないの?」
「違う」
ジゼルに聞いたのに答えたのは王様だった。聞こえていたのかとびっくりする。
「君たちはあの国からきたから知らないだろうがかなりの人数がやられている」
王様の話はあたしたちが知らないことばかりだった。
あたしたちはユリアだけがあんな非道なことをされているとしか思わなかったが、どれぐらい前からかは分からないが、実はあの国は、近隣の国から祝福の奇跡を解明したいという名目で祝福持ちを招き入れていた。
けれど、その人たちが戻ってくることはなく、祝福持ちたちの家族からの訴えであの国に問い合わせをしたが、すでに国を出たとしか返事はなかった。
それからもあの国は何度も祝福持ちたちを招き続けたが、彼の国から祝福持ちが帰ってくることはなかった。
そのため、各国の偉い人たちは祝福持ちたちにあの国に入る場合は注意するようにと注意喚起を始めたが、それでもなくなることはなかった。
この国を含めた国々があの国にどうなっているんだと何度も問い合わせたが、返事は知らぬ存ぜぬで改善策も出そうとしない。
それに違和感を覚えた国があの国に潜入した結果祝福持ちはどこかに連れ去らわれていることが分かった。
分かったが、どこに連れ去られているのかまでは分からずに、あの国に祝福持ちは入らせないようにするのが精一杯だったと。
だが、他の国が対策を取り始めると、あの国の偉い人たちは祝福持ちたちをさらいだしたらしい。
ユリアは自分に言ったことと逆だと青ざめていた。