自分たちの生まれた国の歴史やらなんやらを調べていたが、肝心の復讐方法が思いつかない。
やっぱりあたしが馬鹿なせいなのか。誰かのアドバイスが欲しくなる。
でも、そんなこと言ったってまともな人なら止めてくるのがオチだ。
復讐なんかしたいって言っても、協力してくれる人が現れるだなんて夢のまた夢だ。
安全に暮らせるだけでも夢みたいなものなのに、誰かの協力まで求めるのは、
ユリアが無事に暮らしているならそれでもいいんじゃないかと思う時もあるけど、夜中ふと目が覚めると、未だにユリアが悪夢を見ているのか何度もうなされてる姿を見れば、復讐してやりたい気持ちに火がつく。
今はこの国にいて見つかってないからいいけど、その内ここにいることもすぐにバレてしまうだろう。
その時、ユリアを連れ戻すのに沢山の兵を連れて来るようなことはないだろうけど、それでも安心は出来ない。
しばらくしたら再び引っ越しすることも視野に入れておくべきなのかも。
せっかく見つけた住むところに、職場まで変えるのは大変だけど、それでも出来るだけ危険は排除しておきたい。
この国の人たちはいい人が多いみたいだから、その優しさで次の引っ越し先もいい人たちが多いといいなと願うしかない。
あたしが居なくなってもユリアの安全が保証される訳でもないし、誰かユリアのことを守ってくれる人がいたらいいんだけど。
そういう人も見つけないといけないし、雇うんだったらお金がいる。
貴族の屋敷とかで働けたらお給金もいいけど、そういうところは背景も調べると聞いた。
お城で働いていた時は、ラフォン様の推薦とゼランの親戚ってことにしてもらったけど、この国ではそんな後ろ盾なんてないから背景を調べられたらすぐに隣の国から逃げて来たってバレるでしょうね。
今は近所の食堂と宿屋の掃除の掛け持ちでやってるけど、今後のことを考えるともうちょっと増やした方がいいかな。
ユリアも繕い物の仕事をしてくれているから一旦このぐらいでもいい気がしなくもないけど、やっぱり金払いがいいところを狙いたい。
地方の弱小貴族ならあまり背景を気にしないみたいなことも聞くけど、それだとお給金は庶民の仕事に毛が生えた程度しか貰えないから中央の貴族のところで働けるようになるまでの繋ぎと考えたらいいのかな。
そうなると出稼ぎで行くのもありっちゃあり。
だけど、ユリアを一人残して行くのは気がかりだからやっぱり誰か雇うか、連れて行けたらいいけど、二人一緒に雇ってくれる優しい人は居ないものか。
そんなことを考えながら今日もお金を稼ぐために働く。
帰りにいい求人がないかと探してみると老婦人の身の回りのお世話を探していると聞いたが、詳しい話を聞いてみたら男性がいいとのことであたしとは関係なかった。
他の求人もあまりいいものがなく、今日も今日とて同じ仕事をするしかない。
「あ!」
仕事の帰り道。
夕飯の食材を買って帰ろうと思って市場に来て鞄の中身を見たところで、図書館に返却するつもりで持って来てた本を見つけて、すっかり図書館に行くことを忘れていたことを思い出した。
返却期限日は確か今日までだったはず。忘れて怒られるのは嫌だ。
図書館にも行かないと。本には最近のことも国内の詳しい地図もなかった。
部分的に切り取ったような地図しかなくて、それらを繋げたとしても国内全体は分からないだろう。
あの国を出る前に地図も買っておけばよかった。
どうせ指名手配されているから、まともな街道は使えない。裏道とか憲兵が居ない道とか色々探しておくとか、その前にそのまま行ったってすぐに捕まる。何であたしは後からこういうことを
変装とかして入国しないと。他に必要な物ってなんだろ。路銀に地図に、もう一度お城に入るために人脈も見つけないと。
普通に生活していたら変装もだけど、復讐しようとすると今まで縁のないことをすることになるんだから、何をどうやって何をすればいいのかも分からないない。
分からないことだらけで叫び出したくなる。
でも、そんなことはしない。したら変な人だもん。ようやくここに慣れてきたところなのに、今さら変な目で見られるのは嫌だ。ユリアのためにも自重しておかなくちゃ。
復讐系の本を読んでみたけど、どれもあたしたちの状況に似た作品はなくて参考になりそうもない。
色々と考えなきゃいけないことがありすぎて、多少げんなりしたが、
なら、今ここで弱音なんか吐いたって現実は変わらない。
もっと動いてから弱音吐けってんだあたし。
両ほっぺを叩いて気合いを入れて図書館に本を返しに行った。今回は貴族に絡まれることもなく、すんなりと本を返却できてよかった。
新しい本は借りなかった。
あたしが必要な情報は本になんか書いてあることじゃない。あの国に戻って王子を倒す。それだけだ。
それまでは、ユリアのために生きよう。あたしに出来ることなんてそれだけだ。