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第38話

 シェスタ・マーベレスト国の歴史は数百年前にまでさかのぼる。


 建国の祖となったのは一人の祝福持ちだった。


 その祝福持ちの祝福は何かははっきりと残ってないけど、あの国よりも前にあった腐敗した国の王を倒して、その祝福持ちが国を興したんだとか。


 それよりも前にあった国は結構酷い政治だったとか。興味なかったからその辺は読み飛ばした。


 で、その祝福持ちは前の王を倒すために人々のためにと行動を開始し始めると、その祝福持ちの崇高な精神とやらにのところには人が集まり、その人たちと力を合わせて悪い王様を倒し、新しい国が出来たことを喜んだ。集まった人たちが貴族となり、あの国を動かしていたんだとか。


 ちょっとした英雄譚みたいな話しにちょっとだけムカついた。


 英雄の子孫のくせにどうして悪いことをするの?


 英雄の子孫なら英雄の子孫らしく誰にも後ろ指さされないような態度を誰にでもすればよかったのに。


 あの国では代々祝福持ちの伴侶を娶ることがいつからか分からないけど、いつの間にか代々の国王は祝福持ちを伴侶にするねが慣習になって行ったと。


 なら、あいつがユリアを連れ去ったのも納得は出来る。出来るけど、それがユリアを傷つける理由になんかならないと思うからやっぱりあの王子は滅べばいいと思う。


 今シェスタ・マーベレストの王族が祝福を持っているのは王と姫、それから親戚筋に数人いるらしい。ラフォン様は祝福があったのかな?


 本人にお会いするまで王族の親戚の顔も分からなかったから、かなり失礼なことをしてしまった。あの時のことは今思い出すとかなり恥ずかしい。


 そして、ラフォン様の優しさにかなり救われた。


 ラフォン様がいなければ、お城に潜り込むこともユリアを救い出すことも出来なかったもん。


 そろそろあたしたちの状況も落ち着いて来たから、手紙の一つでも送りたいところだけど、あたしが書いた手紙がラフォン様のところまで届く訳がない。


 あのクソ王子は祝福はないが、国王の息子という地位のお陰で次の王にと決まってるけれど、祝福を持っている他の王族の方がいいんじゃないかって言う声もある。


 クソ王子じゃなくてラフォン様が次の王になるのなら、あたしたちみたいな市民は救われるのに、どうしてあんなクソが王に一番近い場所にいるのか不思議で仕方ない。


 王の祝福のことはあたしは興味なかったから知らないけど、姫の祝福は広く知られているし、大人たちが悪いことしたら姫が見張ってると小さい子に脅している姿はそこかしこでされていた。


 国に戻った後はそれも調べなくては。こっちじゃそういった情報も規制されているのか、全くと言っていいほどそういった情報も入ってこない。


 姫様の祝福は脅威になるだろうが、あたしたちが小さかった頃、最初に住んでいた田舎ではわりかし法に触れていそうな人とかいたし。


 それに、あたしたちが働いてたお店とかもね。


 だけど、そういうことのために国の兵が来るかと言われたらほぼない。


 だから、聡い子ならすぐに大人の脅しか、嘘だと分かる。


 分かるけど、本当に姫の千里眼の祝福を使って捕まる人もいるらしい。


 捕まる基準とかは分からないけれど、戻る時は千里眼の祝福はかなり厄介なことになるだろう。


 姫様の祝福のお陰で、悪い人はあまり居ないと他の国から評判がいいらしいと聞いたのはランプル一座に居た時にリズから聞いた。


 だけど、それでも悪い人は居る訳で、キュリアさんが喧嘩したって人もそういった人なんだろう。


 久しぶりにキュリアさんのことを思い出して会いたくなったが、彼女たちが今どこを旅しているのか分からないから、あたしたちから連絡を取ることは出来ない。


 出来たとしても厄介者から連絡が来たら、人のいい人たちだけど、迷惑に思うかもしれない。


 あたしたちは、というか、何故かあたしだけだったけど、やっぱりシェスタ・マーベレストで指名手配されていた。


 罪状は宝物庫から国宝を盗んだってことになってたが、あたしが宝物庫の場所なんて知る訳ないじゃん。馬鹿じゃないの。


 ユリアが指名手配されてなかったのは、ユリアを拐ったのが王子で、ユリアという存在が必要だからかもしれない。ユリアだけでも指名手配されてなかったのは不幸中の幸いだったのかも。


 でも、ユリアのことをあんな風にして必要とかある? あの状態で生きていたってだけだって奇跡的だったのに。


 あたしがユリアのことをあそこから連れ出さなかったら、下手したらユリアは死んでいたかもしれなかった。それ程に酷い怪我だったから。


 そんな人がユリアを必要だと言って来ても、あたしは絶対にユリアを渡さない。


 変わりにあたしが行って王子の首を取ってやる。


 借りて来た本のページがくしゃりと音を立てた。慌ててページに破れがないかとか、シワになっちゃってないか確認する。


「よかった……」


 破れてたら弁償しなくちゃいけなくなるところだったから焦ったけど、強く握ってはいたものの、どこも破れなんかはなくてホッとする。


 本はあたしたちみたいな庶民にはお高いし、こういう他国のことを扱ってる本はそれなりに値が張ると聞いたことがあるので弁償しなくてよさそうで、胸を撫で下ろすしかなかった。


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