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第30話

「えっ!?」


 怪我が治るまで大人しくしておくようにと厳命されて数日、キュリアさんからお見舞いだと色々もらっただけでも驚いたのに、さらにお金が入っててびっくりして声が出た。


 お見舞いに届いた品をおおざっぱに仕分けしていたところ。キュリアさん以外からもお花に食べ物や可愛い小物なんかも入っていてちょっと嬉しくなった。


 傷がよくなったらお礼に行こう。


 ユリアに相談しようにしても、ユリアは繕い物が終わったからリズのところに持って行くと言って今は居ない。


 ユリアが戻って来てから相談に乗ってもらおうと思っていたら、あたしたちの天幕にキュリアさんがやって来た。ユリアに相談するつもりだったのに、先にキュリアさんが来たからキュリアさんに聞いた方が早いよね?


「痛みは?」

「は、はい。だいぶよくなりました。それより……これ……」


 怪我の傷はかなりよくなってきた。


 触ったり、動いたりすると痛いけど、じっとしている分には全く問題ない。そろそろ動いてもいいんじゃないの? と思うけど、まだ誰も許してくれないので、横になっているしかなくて暇。


 でも、それよりも気になってるお金のことを聞こうとしたらキュリアさんがいきなり頭を下げてびっくりした。


「えっ、あ、あの……」

「すまない。ラナが怪我をしたのは私の責任だ」

「キュリアさんの?」


 あの時近くにキュリアさんは居なかったはずだけど? と不思議に思って聞き直せばキュリアさんは頭を下げたままあの時のことを教えてくれた。


「あの時ラナが乗っていた梯子の下にケントが居て、あいつが梯子をこかしたんだ」

「ケントが……」


 前にさっさと出ていくように言われたけど、あれから何もなかったし、忙しさにかまけてすっかり忘れていたが、あいつのせいで怪我をしたのか。


 ケントのことをすっからり忘れていたからか、思ったよりも冷静にキュリアさんの話を


「すまないラナ。私は団長として団員を守るべき立場にあったのに、あいつが馬鹿なことをしでかすことすら分からなかった。それは、せめてもの」

「キュリアさんは悪くないです! ケントが梯子を倒さなきゃよかっただけなんですから謝らないでください!!」

「しかし……」

「じゃあ、お金はありがたくいただきます。その代わりこの話は終わりで!」

「いや、それは駄目だ。ケントにはけじめをつけさせなければ他の団員に示しがつかない」

「それは?」


 あたしにどうしろと──


 思わず疑問系でキュリアさんに問いかけると、キュリアさんはあたしもケントに復讐する権利があると言われてどきりとした。


 どきりとしたのは、ケントにじゃない。あたしがこの国の王子に復讐をしようと思っていたから、それを言われてるような気になってどきりとしたんだ。


 でも、キュリアさんはあたしたちの事情を知る訳がないはず。だから、たまたま偶然だ。


 それとも、もう指名手配してあるのだろうか?


「ラナ?」

「えっ、あ、何でもないです……」

「そうか。それで、ラナはあいつのことどうしたい? 私は最終的にはあいつのことを追放するつもりだが」

「追放ですか?」

「ああ、あいつは先代のお気に入りだったから今までは目を瞑れた。というか、それぐらいの嫌がらせしかしてなかった。だが、今回は下手したら死んでいたかもしれない」

「そんな大げさな」

「大げさではないだろう。今回は近くに人が居たからよかったが、これが人気のないところだったら誰にも気付かれないまま……そんなこともあったかもしれない。決して大げさなんかじゃないんだ」


 キュリアさんの顔はとても真剣でとてもじゃないが、どうでもいいなんて言えそうにない雰囲気だった。


 あたしはこの国の王子のことは恨んでいるが、ケントのことは正直どうでもいい。


 嫌みを言われたのは覚えてるけど、怪我の時のことは覚えてないし、あたしは今生きているんだもん。


 だけど、それはあたし目線の話で団長としてのキュリアさんは違う考えなんだろうな。さっき追放って言っていたし。


 そこまでしなくていいと言ったところで、キュリアさんとしては納得出来ないだろうし、何か考えた方がいいのかな?


「今は考えがまとまらないだろうからゆっくり考えておくといい」


 キュリアさんは言いたいことを言ったからか、天幕を出て行った。


 あたしは再び寝転ぶと大きく息を吐いた。


 お見舞いの品の仕分けはまた後でいいや。色々と聞いたからか疲れてしまった。


 あたしの怪我の原因がケントだったのか。起きた時に何があったのかみんな言わなかったけど、あの時にはケントが犯人だったって知ってたってことよね?


 なんで教えてくれなかったんだろ?


 ユリアも知ってるんだよね? キュリアさんがわざわざ来たってことは知ってるって考えてもいいよね? 後でユリアが戻って来た時にでも、聞いてみようかな? 


 そう思ってユリアが戻って来てから聞いた、らユリアは全く知らなかったらしくて、話を聞いたユリアが泣いてしまって宥めるのに大変苦労した。


 みんなユリアに教えてなかったのなら教えてないって一言言ってよ! あたしだってユリアが知らないのなら聞かなかったのに!


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