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第27話

「──!」

「……」

「──」

「待って──ラナ! ラナ! あたしたちが分かる?!」


 何か騒がしい気がする。


 あれ? 何で寝てるんだろ?


 確か仕事をしていたはずだったんだけど……もしかして居眠りしちゃってた?!


 そうだ。仕事しなくちゃ。


 その前に何か騒がしいから先に怒られるかも。


 怒られるのは嫌だけど、居眠りしてたあたしが悪いんだから仕方ないよね。


 ボーッとする頭で起き上がろうとしたけど、何かあちこち痛い。


「……うっ」

「ラナ! 起きたのか?!」

「どこか痛いところない?!」

「お姉ちゃん大丈夫? 梯子から落ちたって聞いて、あたし……」

「な、何……?」


 あちこち痛い。一番痛いところは頭だけど、もしかして変なところで寝ちゃったのかな?


 その割にはみんな騒いでるし、何でか知らないけど、キュリアさんまで居るの?


 もしかして、仕事中に居眠りしたせいでクビとか?


 いや、でも、一回居眠りしたぐらいでクビにはならないよね? せいぜい注意される程度だよね?


 居眠りぐらいでトップが来て怒られる訳?


 そんなに悪いことした訳じゃないよね?


 今まで一回でクビになったところなんてなかったし。


 キュリアさん、リズ、ユリアまで矢継ぎ早にわーわー言って来るから何が起きてるのか分からない。何でみんなこんなに騒いでるんだろ?


 そんなに悪いことだったのかな?


 よく分からないけど、怒ってるんだったら謝った方がいいよねと寝転がったままだと反省している感がないと起き上がろうとした。


「いっ……」


 何でこんなに痛いの?!  


「お姉ちゃん、動かないで!」

「ラナそのままでいいからこっちの話を聞いて」

「団長の言う通り。あんたは安静にしてなくちゃいけないから話を聞いたらさっさと寝て」


 リズに寝ていろと押し戻されてしまった。


 とりあえずぼーっとしながらも状況を把握しようとしたが、ユリアが泣きそうになってるのが気になって、ユリアを泣き止ませるのが先とユリアに手を伸ばそうとして腕を伸ばそうとしたら、いきなり予想外の痛みが走ってびっくりして泣きそうになった。


 何でこんなに痛いんだろ。変なところで寝ていたからっていう痛みじゃない。


 もしかしてキュリアさんが居るのもそのせい?


 何があったんだろ?


「動かないで。あんた梯子の上から落ちて頭と肩を思いっきりぶつけたんだから」

「落ちた?」


 あたしが?


 意味が分からなくてキュリアさんの顔を見たが、茶化してる風でもなく、至って真面目な顔をしていたので嘘ではないんだろうけど、さっぱり記憶にない。


 覚えてないけど、その内思い出すかな?


 でも、痛い時の記憶思い出しても、辛いだけだから思い出さなくていいか。


「覚えてない? 自分の名前は言える?」


 ぼんやりとそんなことを考えていたので、心配したのかリズに名前を確認されてしまった。


「名前? ラナだよ。あたし、仕事してて……」

「そこまで。今は休みなさい」


 心配そうな顔のリズにそれくらい言えるわよとちょっとムッとしながら答えていたらキュリアさんに止められた。


 事故のことを思い出そうとするよりも先に、痛みの方が来て考えが纏まらない。


 本当にあたし落ちちゃったの? 


 自分じゃ覚えてないけど、キュリアさんやリズの話では結構派手に落ちたらしく、しばらくは安静にしている必要があるんだとか。


 あたしの怪我そんなに酷いの? 自分じゃよく分からないと言えば、今は薬が効いてるから分からないだけと言われた。


 薬? でも、痛いよ?


「ラナはしばらく安静。ユリアはラナの看病だけど出来る?」

「あ、はい。もちろんです」

「何かあればあたしらも手伝うからさ」

「リズありがとう」

「ラナは寝てて。その間にちょっと元凶の馬鹿懲らしめて来るから」

「元凶?」


 にこやかに言うリズに何のこと? と聞くけど、リズは気にしないでと笑ってキュリアさんを連れて行ってしまった。


「ユリア」

「お姉ちゃん。気持ちは分かるけど、今は休んで」


 ユリアなら何か知ってるかもと思って聞いてみたけれど、ユリアは怒ったような今にも泣き出してしまいそうな複雑な顔をしてたので深くは聞けそうにない。


 でも、さっきまで眠ってたからあんまり眠くないし、ここんとこ忙しかったからボーッとするのもすぐに飽きてしまいそう。


 ユリアは普段はあたしがお世話する側だからか、少し嬉しそうにしてるけど、顔に出さないようにしている。


 こんな風に寝てるのっていつぶりだったっけ? と考えだけど、記憶にない。


 もしかしたら初めてかもしれない。


 うんと小さい頃だったら熱を出して寝ていたかもしれないけど、ユリア優先だったからあたしのことまでかまってくれる人なんていなかった気がする。


 そう思ったら不謹慎かもしれないけど、ちょっとだけあたしもわくわくしてしまいそうになって安静にしてろって言われていたのに少しだけだけど、興奮してしまいそうで自重しなくちゃいけないよね。


 でも、この日の夜は普段ないことで二人で珍しいよねと言って笑っていたらリズがやって来て早く寝なさいって怒られちゃった。


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