目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第18話 ラフォン視点2

「……行ったか」

「如何いたしましょうか」

「そうだな……」


 昨日ラナの様子がおかしかった。


 大丈夫か? と聞いたがそれすら聞いてないようだったのでミーヌにラナの様子を探るように伝えておけばラナは我々が城を出たふりをするとすぐに部屋から出てどこかに出かけたと言うので何かあったのかとそのまま報告を聞いていた。


 その際着替えと荷物を持っていたというのでそのまま追跡すると森の中に入りしばらくすると大きな荷物を持って城を出て行ったとのこと。


 夜の内に報告は受けていたのでその日の内にラナに出来ることをしてやろうと三人でああでもないこうでもないと無駄に騒ぎながら彼女たちのために手を尽くし、今に至る。


 多分あの森にユリアがいたのだろう。


 ゼランにあそこに何があったのか探らせようとしたが、森に入ることすら出来なかったという。


 私も前に行ってみようとしたことはあったが、あの森は立ち入り禁止だと言われ王族だからと無理を言って入ろうとしたが見張りの数が増えただけで入れなかった。


 本当にユリアがあそこに閉じ込められていたのならば、二人が逃げ出した後にあそこの森に入れるようになるのかもしれない。


 だが、証拠になりそうな物は既に消されている可能性の方が高いだろう。


 けれど、万が一のこともある念のためゼランに調べさせてみてもいいかもしれない。


 だが、あそこには厳重な見張りがいた。


 それなのにラナはどうやって中に入れた? ラナ自身は祝福はないと言っていたがもしかしたら本当は何かしらの祝福があったんじゃないのか?


 妹の影に隠れて誰も気付かないようなささやかな祝福を。


 誰にも持っている本人ですら気付かないようなささやかな可愛らしい祝福を。


 ……もう一度ラナのことを調べ直した方がいいのかもしれない。


 ゼランとミーヌに後で調べさせるとしよう。


 二人の両親は逃げ出したみたいだが、ラナたちの両親からも話を聞きたい。捕まり次第私のところに連れて


 だが、今はその前にラナは我々に挨拶もせずに出て行ったことについてだ。


 彼女が我々に何も言わずに去って行ったのは少々寂しい気もするが、我々に迷惑を掛けないようにとラナが考えたのかもしれない。それならば我々もラナのために最大限してやれることをしようじゃないか。


「人形を出来るだけ用意しろ」

「かしこまりました」

「それからラナの行き先の警備を緩めておけ」


 従兄弟殿たちが二人の行方をと追って行ったのは私が用意した人形の方だ。


 ラナには言わなかったが私も祝福を持っている。私の祝福は人形さえあればそれを人に見せかけて操ることができるし、ミーヌは幻覚を見せることが出来る祝福を持っているので二人の力を合わせてラナたちにそっくりになるようにと作り、従姉妹殿がそれに引っ掛かるように誘導させてもらった。


 ラナが城を抜け出す前にミーヌがラナを隠すように幻覚を掛けて姿を従姉妹殿に見られないようにした。


 もし、見られていてもラナではない誰かの姿が従姉妹殿には見えていたのではないかとミーヌの報告にはあったがまだ油断はできない。


 私たちはラナが不審な動きをする前から城内を出たと周りに思わせるためにそれを纏わせていた。


 だから従姉妹殿にラナのことはまだバレてないはずだが、さらに用心することに越したことはない。


 ミーヌが特定の人物に幻覚をまとわせられるのは長くて数日。


 だが、その数日あればミーヌの祝福と私の祝福であちこちにラナとユリアの二人の行動ぐらいは簡単に撹乱できるだろう。


 他にも何か出来たらいいのだが、私たちにはそれぐらいのことしか出来ぬのは歯がゆい。本当ならば二人のところに駆け付けたいところだが、ラナは我々の手助けを望んでいない。


 手を貸したらば彼女は自分のせいでと己を責めるかもしれない。


 ならば、これ以上のことはするべきではない。それくらいの分別はついている。だから私はここで彼女たちの無事を祈ろう。


「従兄弟殿たちは?」

「つい先程城を出たと報告がありました」


 用意された十体以上の人形の一つを手を取る。


 どことなくラナに似た人形は愛らしい。


 ユリアの姿は知らないが双子だから似ているだろうと安直に同じ人形を量産させたが多分これでいいだろう。


 一つぐらいは自室に置いて置こうか。


「これ全てに幻覚をまとわせることは?」

「出来ますが、この量ですと数時間から24時間が限界です」

「撹乱が目的だからそれでいい」


 最初の二体は既に西の方角へと送った。


 それ以外のはどこに送ろうか? 王都には一組だけ置いて国内の至るところに送り一体は別の国に送るか。この周辺ならばどこがいいか。


 頭の中に地図をおこしてどの辺りがいいかと考える。


 それから──


「陛下はどうなさっている?」

「いつもとお変わりないご様子だったそうです」

「そうか」


 あの方は中々食えないお方だから気をつけておいた方がいいのかもしれない。


 このことには関与しているのだろうが、証拠もない。


 あの方のことだから証拠を持って行ったところでのらりくらりとかわされてる間に証拠ごと私たちが消されてしまうだろう。


 王位には興味はないがやりたいことは沢山ある。私はまだ死にたくはないのであの方を刺激し過ぎないように気をつけて行動しなくては。


「異変があればすぐに知らせろ」

「御意」


 これからの二人が幸せであることを願っている。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?