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第60話

「……う、うぅん」


「お、リリが起きた」


 アルファとレーナは先行して神のダンジョンに突撃してしまったが、私と司はここに残って状況報告をすることになった。

 というか司のパーティは先生も田中も黒龍王も神の威圧で気絶してたからな。

 こいつもとびだしたくて仕方なかっただろうに、我慢を覚えたようだ。


「よう、さっきまでのこと覚えているか?」


「えと、ジョブが進化して、神のダンジョンに挑むと……そうだ! 神様!」


「その威圧で気絶してたんだ。思い出したか?」


「……えぇ、なんとか。ユキ様は……」


「私と司、魔王とレーナだけは意識を保ってたよ」


 まぁやべー2人は意に介することもなく流してたけど。

 アレを受け流すとかなんだよ、理不尽な上司に説教された時の胃がせり上がってくる感じが止まらなかったぞ?


「あれを……耐えた……? ジョブが進化したばかりのお三方だけでなく、司様も?」


「こいつは平然としてた。レーナも平然としてた。私と魔王は気力振り絞って意識を保ってた」


「けど殴りかかってましたよね」


「そりゃ殴るだろ、糞野郎だぞあれ」


「平然と……? 殴りかかる……?」


 あ、ダメだ。

 リリが信じられない物を見る目で私達を見ている。

 いや、私に関してはどうでもいいんだが司にその視線は……あれ?


「司、化け物扱いの視線だが問題ないのか?」


「本物の化物と馬鹿者を見たらどうでもよくなりましたから」


「誰が馬鹿者じゃい!」


「いえ、あれを鬱陶しいと言えるのは十分に化け物ですし、そんなのに殴りかかるのは馬鹿でしょ。ちゃんと準備してから挑むべきじゃないですか? というかここのところずっと行き当たりばったり……いえ、僕たちがこの世界に来てから行き当たりばったりが多いですよね。想定外を想定するキリッとか言っていたのは誰でしたっけ。想定外の想定外は見えてないとか、そういう時に本性が出るんだなとわかりました」


 ……なんか、やけに饒舌だなこいつ。

 SANチェック失敗してたのか?

 いや、言ってる事はまともだし、マジで想定外が多すぎたから私もアドリブ仕事になるのが多かったのは認めるよ?

 だけど、司がここまで指摘するって相当アレなんじゃ……。


「あぁ、勘違いしないでください。僕は悟ったんです。世の中自分がどうにかすればいいやって考えてるとどうにもならなくなるって」


「嫌な悟りだな……」


「でもそう考えると僕が化け物扱いされてた理由も見えてきました。できるからやった、それについて来られない人たちが悪いと思っていた。でも違ったんです。僕の協調性の無さが化け物と呼ばせていたんだと」


「お、おう」


「だからこそ、今回も一人で先走らずにこうしてここで待っていたわけですよ」


 ……いい感じに成長したというか、やべーのが出てきて頭おさえられたというか。

 なんにせよ、司の本性は変わっていないが考え方には変化があったようだ。

 聞く限り悪い変化じゃなさそうだが……。


「ちなみに司、この状況で寝てる田中と先生と黒龍王。どんな風に協調すればいいと思う?」


「そうですね、まず神に対する素直な感想を言います。ドン引きされるの前提で話して、でもあのくらいの力を手に入れないと世界滅亡が確定している事と、それが何度でも繰り返されることを話します」


「うん、初手絶望の連打やめてやれ」


「でもいずれ知ることですし、このくらい乗り越えないとやってけませんよ?」


「それは……知らなくてもいい事実ってあるもんだ。とりあえず世界滅亡確定とリセットの話はお口チャックだ」


「なるほど、知らぬが仏という事ですね。その視点は無かった……」


 やべー奴がまともになったように見えて、やっぱり成長途中だったよ。

 でもマジで短い期間にだいぶ変わったなこいつ。

 少し接しやすくなった。


「あ、でも準備ができたら神殺しは手伝わせてくださいね」


 前言撤回だ馬鹿野郎!


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