まず出向いたのが魔術師ギルド。
理由は城から一番近い所にあるから。
いや、こいつら王宮魔術師団と繋がってて、開発された魔術の実用性とかのチェックもしているから繋がりがあるのは全く問題ない。
なんなら一般人でも魔術開発して特許取得とか普通にやっているから、ギルド関係だと冒険者ギルドの次くらいに国とも民とも密接な関係にあると言っていい。
問題があるとすれば一部の奴が偉そうに振舞っている事と、エルフを見かけるたびにギルドに勧誘していることくらいだな。
てなわけで……。
「魔術師ギルドに登録しますよね! しますよね!」
「魔術師ギルドに登録すれば安泰ですよ!」
「今なら石鹸プレゼント!」
「トイレットペーパー上げちゃいます!」
滅茶苦茶勧誘されている。
そっかぁ、少し顔出さなかっただけでこんな風になるのかぁ……。
「どけどけ、お前らの勧誘に付き合ってる暇ないんだよボケ共。お姉さん、ギルマス呼んでくれ。ユキが来たって言えば伝わる」
「かしこまりました。身分証の提示を願います」
「ほい。あとこれ」
各種ギルドで発行されるカードがあるが、設立当初は全部バラバラだった。
ただ問題も多くて後に改良して統一カードになった。
なんていうのか、前世で言うところの免許証みたいな感じに落ち着いて、登録しているギルドがすべて表示されるようになった。
ほら、原付、大型二輪、普通、みたいな感じで魔術師、剣士、冒険者って表示される。
顔写真もついているし、魔力識別もするから本人確認の道具としては一級品として扱われている。
ちなみに犯罪歴なんかも表示されるけど、人間ってころころ国が変わって法律も変わるから私らみたいな長命種は結構な数の法律違反が見つかったりする。
罰せられる事は無いけど、普通の仕事はやりにくくなるんだよね……。
ある意味ではギルドはそういった長命種や犯罪歴のある人物の受け皿にもなっている。
そしてついでに出したのはギルド創設者メンバーだけが持っている特別なネックレス。
というかアクセサリーの類だな。
本人と血縁者しか反応させることができず、形状はみんなバラバラで知り合いの吸血鬼は黄金の指輪だったし、ドワーフはミスリルのハンマーだった。
「すぐにお呼びしますので奥でお待ちください!」
「こいつらも連れて行くから広い部屋とお茶も頼むわ」
「かしこまりました!」
受付の姉ちゃんが凄い速さで魔道具を起動させているのをしり目に奥に進む。
ギルドの作りは大体同じだから、この先には授業とかやる教室みたいなのがあるはずだ。
「ほれ、お前ら入れ」
「もしかしてユキさんって結構な大物?」
「そうだぞー。書庫組は歴史書で名前見たことあるんじゃないかねぇ」
「もしかしてあのハイエルフの?」
「300年前の戦争で森を焦土に変えた懐炎の魔導士!?」
「いやいやそれよりやべーのは200年前に国ひとつを一晩で消し飛ばした事件だろ……」
「そもそもこの世界の歴史書ってどれくらいの信憑性があるんだ?」
「少なくとも俺達の世界より記録関係はかなりしっかりしてるっぽいぞ……焦土からは未だに当時の魔力の残滓が漂っているとか」
「記録用魔道具だったら1000年くらいは普通に使えるらしいし……」
「はいはい、その話は後にしろ。気になるなら今度詳しく話してやるから。つーか森とか国焼いたのは反省しているからあまり口外しないでくれ……」
どこに関係者がいるかわからないからなぁ……。
森を焼いたのは邪神と契約したエルフ族がやべーこと始めようとしてたからだし、国を滅ぼしたのは捕まって奴隷にされそうになったからであって悪事とは言い切れないが……それでも関係者がいたらぶちぎれて報復してくる可能性は十分にあるんだよ。
「お待たせしました、ユキ様」
「あんたが今のギルド長の一人か。ふーん?」
見たところ30くらいの兄ちゃんだ。
魔術師としての実力はもちろん、人心掌握やら政治的なあれこれには不慣れに見えるが……腹の内は読めないな。
少なくとも魂を見るに悪人ではないけど、善人でもない。
必要ならなんでもやるって感じのタイプだ。
「若いが、いいね。あんたみたいなのは大成するか、途中で死ぬかの二択だがどうしてもヤバいって時は内容次第で手を貸してやるよ」
「ありがとうございます。して本日はそちらの方々の登録でよろしいですか?」
「おう。ちょっと待ってな?」
消音魔術を展開するついでに、盗み見防止と気配探知、外敵駆除の魔術も併用して部屋の中を探れないようにした。
「おぉ、これだけの魔術を一息に……流石ですな」
「おべっかはいいから本題だ。こいつら全員ユニークジョブ保持者で、異世界人。何が言いたいかわかるな?」
「………………なるほど、すぐに用意いたします」
話が早いな。
間があったとはいえ、並大抵の奴なら取り乱していただろう。
流石日夜謀略の渦中というかど真ん中に置かれている魔術師ギルドの長ってだけはある。
「お待たせしました。専用の水晶とカードの発行魔道具です」
「じゃ、魔法系ジョブの奴はあの水晶に触れて魔力を全力で流しな。ついでに司もやっておけ」
「では御指名なので一番手を頂きますね」
そう言って司が水晶に振れる。
魔力量と本質的にどの属性に向いているかを測るための道具なんだが、異世界人は平気でぱりんぱりん割りやがる。
だからその対策としてハイエルフの中でも創世の時代から生きているような奴でも問題なく測れるレベルの物を各ギルドに用意してやった。
100年くらい前の話だけど、思えばその少し前だから……150年前くらいから異世界人の数が増えた気がするな。
「ほほう、魔力量22万7千。……勇者!?」
あ、そこは驚くんだ。
まぁ普通勇者がこんな所に来るとは考えないよなぁ……過去の勇者も大体冒険者ギルドに登録して他は見向きもしなかったから。
とはいえだ、転移者の中でも23万弱って数字はかなりの物だ。
一般人のノービスが2000前後で、魔法系ジョブが1万くらいというのを加味すればその22倍以上という数字だ。
ちなみに転移者転生者の数値は大体6万くらいが平均で、魔法特化の奴が10万届くかどうか。
エルフは平均が10万で、ハイエルフは100万、私が色々なジョブを究明したうえでユニークジョブのレベルカンストさせているから500万くらいで、創世の時代から生きてる奴らは世界の魔力と繋がってるから測定不可能。
魔王に関しては推定だけど5000万くらいはあるんじゃないかな。
「ほい、次。せっかくだから指名してやるよ。占星術師ちゃん、いってらっしゃい」
「ぴっ」
「そんなに身構えるなって。司がおかしいだけだから」
「は、はい……」
水晶が輝いて、カードが作り出される。
「数値は?」
「優秀ですね、10万と4500です」
「悪くないな」
回復系魔法ジョブでこの数値だと王城の敷地内全域を回復魔法で覆えるくらいかな。
とはいえ魔力消費が大きい部類でもあるから持続時間は短いだろうけど、範囲や回復効果を減らせば長く続けることもできるだろう。
主戦力にはならないが、防衛ラインとしては十分助かる。
「はい、先生いってらっしゃい」
「はひっ」
今度は先生を送り出す。
「これは……!」
「あー、ジョブに関しては国家機密クラスだからな? で、数値は?」
「……300万と7万8千です」
「は……?」
「300万を超えています……」
「マジかよ……」
とんでもない数値だ。
聖女というジョブでこの数値なら国どころか王城から国境線まで回復魔法を展開できるぞ。
たとえそれが一瞬であろうとも、聖女が使う魔法なら大抵の傷はそれだけで十分だ。
致命傷だろうが、四肢欠損だろうが、一瞬でもその光に触れたら治る。
そんなレベルだ。
「わかっているな?」
「無論でございます」
「ならいい。もう指名はいいや、お前ら好きに並べ。魔法系ジョブじゃなくても登録は構わないからな。私が許す」
この後結局全員が受けたが、先生はもちろんの事、司に届く奴はいなかった。
ただ、逆に全員……ガーディアン女子ですら5万を超える数値を叩きだしていたので全員魔術適正はあると判明したのだった。