(ここはどこだ……)
シリウスは指先一つ動かせないまま、心の中でひとりごちる。
土や草の匂いが鼻をつく。うつ伏せに転がるシリウスの視界は暗く閉ざされていて、寝返り一つ打つことができない。
特に拘束されているというわけではない。ただ動けない。まるで金縛りにでもあったかのように、意識だけがある状態だ。とにかく身体が重い。物理的にも、髪も身体も湿っていて不快でしかなかった。いや、正しくは湿っているどころではなくびしょ濡れだ。汚れ方もひどく、身体といわずどこもかしこもどろどろのべたべたで、これ以上ないほどのありさまだった。
それもそのはず、数日前、シリウスは集団でカラスにつつかれ、さらわれて、かと思えば仲間内での奪い合いの末に高所から落とされ、あげく、あろうことか大雨の中に放置された。
さらにはそこを野犬に見つかり、そのままじゃれるような甘噛みが続くこと半日、おおいに気に入ったとばかりに涎まみれで連れ回されていたのに、ふと目があった雌の野犬に興味が移ったが最後、手のひらを返したようにうち捨てられてしまった。
さながら嫌悪感すら抱いたかのようなその態度は正直不本意だったが、それでもその時のシリウスにできることなどなにもなかった。
「――……」
そんな中、どこからか歌が聞こえた気がした。意識が混濁していたため、空耳だったのかもしれないとも思う。思いながらも、そのどこか記憶にある歌詞と歌声に、シリウスは一人のおさななじみの顔を思い浮かべていた。
小柄で、不器用で、察しが悪く、空を飛ぶことだけが取り柄の女の子。まるで小動物みたいなその相手は数人いるおさななじみのうちの一人で、そしてある意味シリウスの天敵だった。
「あれ……? きみも迷子になったの?」
自宅へと向かって空を飛行するさなか、リーゼロッテは界隈のカラスに悪戯された。それだけならままあることだったが、今日はあろうことか付けていたぬいぐるみまで落とされてしまい、急遽日の落ちかけた森の中へと降り立つことになってしまった。
幸い、探していたぬいぐるみはすぐに見つかった。残っていた水溜まりに落ちていたため、だいぶ汚れてしまってはいたが。そしてついでのように目についたのが〝それ〟だった。〝それ〟は草むらの中に転がっていた。一見するとゴミのようにも見えるそれを、リーゼロッテは見逃さなかった。
「なんかすごいぼろぼろだけど、……かわいい」
頭の先から足先まで黒づくめの手のひらサイズ。リーゼロッテが探していたぬいぐるみと同程度の大きさのそれは、つり目が印象的な男の子のぬいぐるみだった。
(……は?)
シリウスは思わず絶句した。不意に目の前がひらけたかと思えば、少し前に頭に浮かべたばかりの相手の顔が視界いっぱいに広がっていた。確かめるまでもない。例のおさななじみ――リーゼロッテだった。できれば一番会いたくなかった
「
言うなり、リーゼロッテは摘まみ上げた