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おとぎばなしにはほど遠い -ぽんこつ魔法使いはそれでもおさななじみを助けたい-
いちのせゆき
異世界恋愛ロマファン
2024年11月07日
公開日
1.6万字
連載中
かわいいものが大好きなリーゼロッテは何でも屋を営む魔法使い。幼馴染の一人であるシリウスのことが好きだけど、それは親友にも内緒の秘めた想い。そんなある日、道端で拾った薄汚れたぬいぐるみがシリウスそっくりで、ひとまず落とし主が見つかるまで、と持ち帰ってお世話することに。
一方でシリウスもリーゼロッテのことが気になっていたが、自尊心の高さから自分でそれを認められないでいた。そんな中、大魔法使いのいたずらでぬいぐるみの姿に変えられてしまい――。
拾ったぬいぐるみに魔法がかけられていると知ったリーゼロッテは、その正体がシリウスだとは知らないまま、それを解くための旅に出る。

そんな二人のどたばたほのぼの?コメディです。よろしくお願いします。月木更新予定です。

00.Prologue

 柔らかな歌声が風に乗る。少し高めのその声は、やがて鳥のさえずりに紛れて消える。


「昨日の雨が嘘みたい」


 背の中ほどまでの銀髪をなびかせながら、リーゼロッテは雲一つない青空を見上げる。


 腕に下げたかごの中にはふわふわとした綿毛がたくさん入っている。こぶし大のたんぽぽのようなその綿毛をさらに一輪分採取して、リーゼロッテはゆっくり立ち上がる。


 常緑樹の多い森の中、ひらけたその場所にはきらきらとした太陽光が降り注いでいる。再度頭上を仰いだリーゼロッテは眩しげに目を細め、それから片手をくるりとひるがえす。そこにぽんと現れたのは、濃紺のリボンの結び付けられた一本の箒。リボンの結び目には、小さなぬいぐるみも添えられている。うさぎをデフォルメした桃色のそれは、自分で用意した服を着せ替えることもできる、リーゼロッテお気に入りのものだった。


 小さく揺れるそれに目を細め、リーゼロッテは掴んだ柄の端にかごを通す。そこに慣れた所作でまたがると、次には血の巡りを意識して魔法を発動させた。


 身を包む浮遊感が心地いい。まもなくふわりと波打つ濃紺の法衣。背中へと落とされたフードは先が二股に分かれており、ともすればうさぎのようにも見えるデザインだった。そこに柔らかな銀髪が流れる。その全てをはためかせ、リーゼロッテは軽やかに地を蹴った。

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