対象 本山純二
拠点に戻ってすぐに寝て、次に目を覚ました時にはもう夕方になっていた。随分不規則な生活だ。適当に食事を済ませて、今日殺しに行く奴の居場所を確認する。
時刻は17時。もうそろそろ定時退勤の時間だな。今日もお外での復讐タイムといこう。
「お前は...特に赦しちゃあいけねー糞ゴミカス野郎だ。昨日くらいに張り切ってぶち殺しに行くからな......
ドカッ「痛っ!なに、すんだゴラァ!!」
ドスッ「な......おい、杉山テメっ......何反抗してんねんボケが!!」
「はぁ?そっちが理由も無く殴ってきたんやろが何やねんこのクソが!!」
「ああ!?杉山のくせに逆らいやがってぇ!!」
ドカッバキッドンッ!
「っで、え......杉山の、くせ、にぃ!!」
「俺のくせにって何やねん!誰もがお前なんかの言う通り...思い通りになると思うなや!?本山純二!!」
この頃の奴は、何の脅威にもならなかった、ただの弱い者虐めが好きなクソ野郎だ。
本山純二。低学年の頃はただのうるさい奴・面白いことを言うガキだった。あの時はそんなに害が無い奴だったのだが、喧嘩っ早い性格ではあった。
学年が上がるにつれてその性格とともに、自分は強い...みたいなガキ大将思想が強くなって、イキり度が増していった。6年生になると度が過ぎる行動を起こすようになった。
唐突に他の生徒を殴る(その際文句すら言わせない態度をとる)、授業中に前の男子の席を蹴る、給食のデザートを近くの男子の分も奪い取るなど、下らないことをたくさんやってきた。
奴のクズなところは、自分より弱い奴にしか威張らないことだ。6年の時は川路というサッカークラブに通ってた男がいて、低学年時で本山がその男に喧嘩で負けて以降は、その男にはちょっかいをかけないようにしてる。川路がいないところで威張り散らすという、なんとも小物で下らないクソガキであった。
話を戻すが......当時6年生で最悪にも本山や川路、さらには前原と青山とかと同じクラスになってしまった俺も、本山にちょっかいをかけられることになったが、当然そんなのは良しとしない俺は、やられたらやり返して反抗した。周りの生徒とは違って言いたいことを言って殴り返して、徹底抗戦をしいて本山を退けた。あんなクソ野郎なんかに屈するなんて間違ってる、馬鹿げている。俺は何も間違ってなんかなかった。
だが......俺はツイてはなかった。当時は川路...川路雄太とも仲が悪く、奴とは敵対していたのだ。奴も本山の行動と似たことをすることがあった。「断ったら許さない」...といった態度をとって宿題を写させたり、水筒の中身を求めたり、掃除当番を押し付けたりなどをしていたから、俺はそんな川路とは相容れないと判断して喧嘩の一歩手前までいったこともあった。
川路が俺を敵視したのを良いことに、本山や前原なども奴に助長して俺をクラスで孤立させやがった。それがきっかけで、俺のクラスでのカーストは下落していった。
今にして思えば、あの時がやはり虐めを確立させた原因だったんだな。
で...中学に上がって、谷里や中林なんかを唆して、本山は俺に攻撃してきた。
「小学の時はよくも!恥かかせてくれたな!!陰キャラのテメェが俺に逆らいやがってボケがぁ!!」
「がぁ...!この、小物野郎が!自分一人じゃ勝てないって分かったらそうやって群れて威張り出すのか、この小物クソ野郎が!!」
「ま...だ......言うかぁこのォ!!!」
ガッ......!!
中学にあがってさらにデカい顔をするようになって、不良化もしたことで学年内では逆らってはいけない奴認定されて、本山の俺への虐めを止める奴はいなかった。俺自身ロクに友達がいなかったのも原因あるが。
「いい気味やなぁ!お前なんかが俺に逆らうからこうなるんや杉山ぁ!!お前はずっと俺らに虐められ続けるんやボケぇ!ぎゃははははは...!!」
あ~~~~~ムカつく、苛つく、腹立つ............殺したい。
すっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっごく、ぶち殺したい!!!
こいつは殺すべきだ!弱いくせに...一人だと俺に勝てないくせに自分は強いと威張り散らして、狭い世界で偉そうにしてただけの、ただの雑魚が...!
3年間ずっとそう思い続けたが、あの害児野郎を消すことは叶えられなかった...。
*
(さて......まさかこんなモンを立ち上げていたとは...)
目的地である大阪市の西成区に着いて歩くこと数分、とある事務所の前で俺はその看板を凝視する。
“本山組” 字面の通り、ここは裏の世界に突っ込んでる業界の事務所で、その職種は金貸し…それも「闇金」と呼ばれる質の悪い部類にあたるそれだ。
その事務所を現在運営していて、この区域の闇金を取り締まっているのが、今回の標的である本山純二だ。奴は前原と繋がっていて、組員を補充してもらったり事務所立ち上げの支援もしてもらっていたとか。確か前原は本山にはデカい面はしてなかったな...逆らうことしてなかったような...どうでもいいか。
こいつが運営しているこの事務所だが...検索したところ相当質が悪いらしいな。人の尊厳などガン無視した商売を当たり前としている。武闘派としても有名で、目をつけられたら終わりだとか。
まぁ一般の人間にとってはそうなんだろうな、俺にとってはただのアリの巣だ、一踏みですぐ壊れる雑魚の集合体だ。だがすぐ殺しては復讐にならない。
力の差をきっちり教え込んで、後悔と絶望の淵に落としてやろう...!
この事務所は定時17時30分で、退勤前は必ず組員全員集まることになってる。今はまさに全員集合の時間帯なので、早速行動に出る。ドアを無遠慮に蹴破って、お邪魔しまーすと言って事務所に突入する。中はタバコの臭いが充満していて気持ち悪い。
「ったくヤニ臭い!!消臭・除菌!!」
ザバァ―――!!「「「「「ごがぼぉ!!?」」」」」
水魔術で巨大な水渦を発生させて事務所内を洗濯した。水を消した時には、臭いはしっかり消えていた。
「な...なんやお前!?どこからあんな水出してきたぁ!?」
「ここが本山組と分かってのかちこみかぁ!?」
「おいすぐに締めるぞこのガキを!!」
判断が早い組員数人が俺に攻撃仕掛けてきた。武器はそれぞれ刃物や木刀といった物か。挟み撃ちしてきた二人の首を乱暴に掴んで、床に力一杯叩きつけた。
「「がはっ...!!」」
二人は昏倒...させたままにはぜず、ナイフで刺し殺した。
「こっコイツ...躊躇無く殺しを...!」
他の組員数名は怯むも、幹部らしき男の命令で一斉に武器を向けてきた。しかし組員全員その場から一歩も動かなかった。全員その場で膝を着いて息を荒げていた。重力を操作してくっそ重くしているからだ。
動けないでいる組員どもをスルーして、洒落たデスクで着席したままでいる組長......本山純二のもとへ向かう。オールバックの髪ででっぷりとしたデブ体型、茶色のスーツを着ている当の本人は啞然として俺を見ることしかできないでいた。
「よぉ本山純二くぅん。俺が誰だか分かる~~?俺だよ俺っ」
「な、にを......お前の顔、など.........おま、えは......!?杉山...?」
「ピンポーン!中学の時は低脳だったくせに、記憶力良いじゃ~ん。一人だと弱くて強い奴には決して逆らわず・弱い奴にはひたすら威張って虐げるだけの小物クソ野郎だったお前が、こんな事務所を運営して組長やってるとか驚きだなぁ~~ええ?」
再会早々自分への侮辱に青筋を立てる本山に構わず、俺は一方的なお喋りを続ける。
「そんなクソ野郎が汚い手段を使って創り上げたこのクソ闇金事務所だが...本山純二、お前への復讐とともにぶっ潰させてもらいまーす☆」
そう宣言したと同時に、本山の顔面にストレート打ちで繰り出した拳をぶつけた!