対象 中林大毅
中林大毅は悪賢い男だ。教師や警察など、バレたら騒ぎになってまずい大人たちから見えない場所で、俺に対する虐めを行った。
中学時代での虐めが露見されず大して問題に挙げられなかったのは、中林大毅の巧妙な隠蔽によるものだった。
「おいお前ら、顔面ばっか狙うのは止めときや?先生たちに勘付かれるからなぁ。あと10分したらそろそろ戻るで!」
「うーい」
「じゃあ腹狙うか~~w」
「無様やなぁクソ野郎。ぎゃははははは!」
暴行痕がバレるのを防ぐ為の顔以外への暴行指示と撤退タイミングの良さ。奴はそうやって教師どもから上手く逃れながら俺を潰しにかかった。
「お前、らなんか...いつか裁いて、潰してやる......(ドカっ)ぐあっ!」
「はぁ裁く?やれるもんならやってみろや雑魚が!お前程度の声で誰かが助けてもらえると思うなや!?証拠をロクに押さえられない雑魚が何したって無駄じゃアホがぁ!あっはっはっは!」
「つーか死ねよゴミ虫が!お前が死んだって誰も悲しまへんわ!オラぁ!!」
「っが...!だま、れクソ野郎...!」
「まだ言うか雑魚がぁ!!」
常に多数で取り囲み、一斉に殴られ蹴られて、後は袋にされて終わる...。集団で甚振るようになったのも、中林大毅が考えたことだ。小学生の時から俺を敵視していた本山純二、中林とはいちばん仲が良い谷里優人を中心に、俺は暴行を受けていた。
時々もう一つの虐めグループも加わることがあるが、そいつらがいてもいなくても俺はいつも惨めに無様に傷つけられて終いだ。
「はははっお化けみたいなキモい面しやがってw なぁお前......何で学校に来てるわけ?いつも俺たちに惨めにボコられてるのに懲りずに登校しやがって。いい加減目障りだから、自殺するか不登校になるかして消えてくれへんかなぁ?誰もお前が学校に来るなんて望んでへんって気付けよなクソ野郎」
本山らが主に力による暴力、そして中林はそうやって言葉の暴力をぶつけてくる。
「るせー......お前らみたいにコソコソ隠れて下らない虐めをしやがる、卑怯者のお前らこそが、学校から消えるべきだ!!このクズや――」
「そうやって未だに反抗してくるのがムカつくってんだよボケぇ!!雑魚で何の人望も無いカスのお前が、俺をディすってんじゃねーぞ!!」
(ゴス...!)「ゔえぇ...!」
ムカつくことに、悪賢いだけじゃなく喧嘩も強かった。サッカー部で鍛えた蹴りは、俺をよく傷つけた。同じサッカー部の谷里も同じくらいの威力があるが、中林は的確に鳩尾や肺部分を突いてくるという精度の高さもあった。受けた痛みの中で、いちばん物理ダメージが大きかったのはこの中林だった。
「ほら、またいつもみたいに先生たちに通報してみろや?どーせ意味ねーけどなぁ。だぁれもお前を味方する奴はおらへんっちゅー話や、ざまぁ!!
あっははははははははは...!!」
そうやって見下して甚振って傷つく言葉を吐いて嘲笑う中林に、俺は一度も報復できなかった。ただ悔しがることしかできなかった...。
*
「あーぁ、お前には本当にしてやられたよ。いくら俺が声高に叫んでも味方は現れない。お前らによって調教でもされたからか。教師どもも全く機能しないクズばかりで、孤立無援の日々だった。お前さえいなかったら、中学での虐めは簡単に無きものにできていたやろうなぁ。
お前がいた、せいで...!!」
「っ......!!」
いつも通勤途中で通るとしているこの公園で待つこと十数分、思ったよりも早く現れてくれた次の復讐ターゲット...中林大毅に、俺は一人でに長々と過去の話をした。なるべく本人が俺に何をしてきたのかを思い出せるように話してやった。
その甲斐あってか、俺が誰であるかを理解した中林の顔色が悪くなっていく様は、滑稽で笑えたね。
「杉山、か...!?まだ20代に見えるな...。
――ハッ!あの低脳な雑魚が、まだそうして生きてるなんてな...」
「...ほう?」
これは意外だ。この状況でまだ俺をディスる余裕があるとは。いや、よく見ると平静ではないみたいだ...。さっきから俺に恐怖しているのが丸分かりだ!
「それより......それっ、それだよ!!何やそれは!?ひ、人のく...!?血だらけで!お前まさか、人殺しを、したんか!?バ、バラバラにして...!!」
「おいおい大阪訛りと標準語が混ざってんぞ?どっちかで喋れや。で?ああ、このゴミか。いやさっきも言ったろ?ここ禁煙区域じゃん?なのにここで屯して喫煙してやがったもんだから、待ってるついででゴミ処理の一環で殺した。分かったか?」
あっけらかんと答えた俺を、中林は理解できないと言わんばかりの顔を向ける。額からは冷や汗らしきものを流し、即座にスマホを操作する。ああ通報するのね。頭の回転が悪い方で良いのは相変わらずか。
けどなぁ...生憎だが、今の俺は中学生だったあの無力少年とは違うんだよな...!
スパン...!「ぇぁ...!?~~~~~~っ!!?」
瞬時に中林の真横に移動して、スマホを持ったその右手を斬り落としてやった。激しい出血音とともに中林の声にならない絶叫が公園中に響く。因みにこの公園には人払いの結界を張っており、さらにはしっかり防音細工もしてあるので、誰もこの光景を目にすることはない。まぁいつもの対策だな。簡単に失血死とかされたら困るのでなるべく治療は施してあげる。まずは......そうだ、サンドバッグにして遊ぶか。ここは公園だし、たまには体をしっかり動かさないとな!
「というわけで...オラぁ!!加減してあげてるから、簡単に死ぬなよっ!!」
ゴッッッ!!「あ”...!!」
ガスンンンンンン!!「ぐおあっ!!」
ゲシゲシッ!ドカッッ「がっ!ごっ!え”あ”...!」
本気で数発殴っても死なない程度まで弱体化してから一人リンチを繰り広げる。10分間殴り続けると、この寒空の下でもけっこう汗をかくものだな。
「ハァ、ハァ、ガフッ!ォエ...!」
そしてさっきから一方的に殴られ続けていた中林は、前歯が全て折れて、鼻が陥没、両頬は腫れあがっていて、スーツは土と泥で汚れて破けていた。
「ははは、無様だな。お前らが俺にしたことを今一人で全て再現してみたんだが......あ~~思い出すなぁ、あのクソッタレな日々を。俺はこんな風に無様を晒して倒れていたんだな?そらお前らも嗤ったわけだ!だって今のお前、すげ~~~無様で笑えるんだからさぁ!あーーーはっはっはっはっは!!」