「そこのクズの傷は、所詮体の傷だろうが。全身ぐちゃぐちゃ、致死レベルの体の傷。そんなところだ。だけどこっちはなぁ!3年間ずっとお前らから心身共に学校で毎日傷をつけられてきた!3年間もだぞ!長期間に亘ってつけられて積まれた傷と、たかが数時間でつけられた体の傷。どっちも等しい程度だろうが...。というか、まだ俺の方が主に心の方での傷が大きいはずだろうが!!ああ!?」
ベキィ!ゴキン!「ぐげぇ!!」
とうとう短気を起こした俺は、井村の顔面に二発拳を入れて、壁に激突させた。鼻が陥没し左目が失明したみたいだ。さらに刃物が生えた靴で背中を何度も踏みつけて血だらけにしてやった。
「ぐあああ...!」
「ああ、お前は暴行には加わってはなかったなぁ。ただリンチ場面を面白がってただけだったなぁ。どうだ?それが、俺が見てた景色だ。少しは理解したか?地に這いつくばって暴力を受ける奴の最低な気分をよぉ?」
踏みつけが飽きたら次は蹴り上げだ!顎にハイキックを思い切り振り上げて天井へ吹っ飛ばした。天井にめり込んだ井村の足をジャンプして掴んで、今度は床に力一杯叩きつけてやった。
「が...あ”...!ぜーヒュー、ぜーヒュー...!」
肺が破れたか何かのせいで、苦しそうに呼吸する井村に容赦することなく、さっきの一連をもう一度やってみせた。叩きつけたらまた同じことを。上へ下へ、上へ下へ、上下上下上下...何回か繰り返して仰向けに倒すと、井村の顔は血で真っ赤になっていて、腕や脚が変な方向に曲がっていた。まるで拙い操り師によって動かされている人形のようで笑ってしまった。
「ぶっははははははは...!そうそう!お前らはそういう感じに横たわった俺を見て毎回笑っていたよなぁ、今の俺みたいに!俺はただお前らがしてきたことを似せて模したに過ぎねーんだよ。そこに生死とかは関係しない。ただ面白がってるだけだって」
「...!...!......」
「あ~~もう喋れないくらい壊れてる?しゃーねーな」
口をパクパク動かすだけの井村を少し治療する。ここで終わらせるのはまだダメだ。
「お......お前の心の傷と、青山の傷を、一緒にするな...!友を亡くした俺の心の傷の方が、お前なんかの傷よりも深いんだ...!おかしなことベラベラ並べてるお前は、ただの幼稚で――「 おい 」――っ!?」
聞き捨てならない一言を拾ってしまった俺は、氷のような冷たい声を放って井村の罵声を遮る。
「お前なんかの傷?一緒にするなだと?お前はさぁ!俺の心の傷がどれ程なのか、知ってんのかぁ!?知らないよねぇ!?冗談のつもりでずっと馬鹿にし続けてきただけのお前が!俺の傷の程度を語ろうとしてんじゃねええええええ!!!」
“苦しめ”
「~~!!うわ”あ”あ”!?」
怒りに任せて闇魔法を唱え、幻術にかける。様々な魔物によって肉を食いちぎられる幻覚を見せてやった。
“苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ”
「―――っ!?づあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!嫌だぁ!!いだい!!止めてくれぇ、やべでぐれえ”!!」
幻術をさらに重ね詠唱して、井村に地獄という地獄を体験させてやる。井村は頭を振りまくって止めてと絶叫を繰り返した。
そんな姿を見ても俺の溜飲が下がることなく、むしろさらに憎悪の念が強まり、こいつにはもっとたくさん苦痛を与えねばと思い、醜く肥えた腹に火をつけて炙った。
「!!ぎゃあああああああああ!!!痛い熱い痛い熱いいぃぃ!!!」
止めて止めてと泣き喚く井村の髪を掴んで持ち上げて、俺は努めて冷静な声音で話しかけた。
「あのな、さっきから止めてとほざいてるけど、お前はそんな俺になんて言ったか覚えてるか?
“冗談で言った 何マジになってんだよ” だったな?だったらこれも......冗談ってことで良いよなぁ?」
「そ、そんなわけあるかぁ!!!痛い!止めろ止めて下さい!!」
「でも冗談だったんだろ?便利だよなぁ冗談って言葉は。どんなことでもその言葉で色々治めようとする。
冗談で済ませて良いことなんて、全く無いっていうのによぉ」
「あ......あ、あ......ひぃ!!?」
「それでもアレは冗談じゃなかったって通すんなら......俺もいまやってることを、 “冗談だ!マジじゃないから”って感じで進めても文句無いよな!?だって冗談なんだからさぁ!!」
「ぎゃああああああああああ!!ア”ア”ア”ア”ッ!!」
火が付いた剣を、奴の肩に突き刺す。傷口に火がついてジュウウウ!と焦げる音がした。
「あとさぁ。お前忘れてない?塾のことさぁ。学校でつけた蔑称を、あそこでも呼んできてさぁ。嫌だってのに面白がって冗談で繰り返しやがって。で、俺がキレたら俺が退塾させられてお前はそのまま。その後勉強が上手くいかなかった俺はロクな高校しか通えずロクな将来しか築けなかった。
対してお前は何だ?塾とかで勉強して、大学行って就職して、今では社長の座を獲得か?人の勉強の場所を奪い、未来を潰しておいて、そうやって偉そうに社長とかやってんだ!?
青山同様、俺の人生を狂わせる原因をつくったお前らが、そうやって地位を上げてることが、すっっっっっごく、虫唾が走るんだよおおおおおおおおおお!!!!!」
ブシャァアアア!!ジュウウウウウウウ!!
「い”や”あ”あ”あ”あ”あ”!!!ごめんなさい!ごめんなさい!あの時杉山の勉強の邪魔をしてすみませんでしたあああ!!」
「そうだよ!!虐めが原因で学校の授業なんかまともに受けられなくて、成績を戻す処置としての塾だったのに、お前はそれすらも奪いやがったんだよおおお!!この最低腐れゴミカス野郎があああああああ!!」
“苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ”
「あびやあああああああ”あ”あ”あ”あgfん;Fビオhdふぃ;G;fh...!!」
ブクブクと血の泡を吹いて痙攣している井村を再度持ち上げて、その真下によく切れる剣を大量に召喚した。
「あり得たはずの将来はもう返って来ない!お前は取り返しのつかない罪を犯した!よってその汚れた命を散らすことで少しは償ってもらう!!!」
後頭部を鷲掴みにして、井村に大量の剣の山を見せつける。その光景に顔を真っ青にして全身をブルブル震わせる井村は、喧しく俺に叫びかけた。
「お願いだ!!赦して下さい!!今後一生はあなたに償いとして金を貢ぐ!会社の利益全てを杉山に回すから!理想の家とかも造るから!!奪った分を一生かけて返すからぁ!!お願いします!お願いします!!助けてぇ――
あ”あ”あ”あ”ああ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
聞くに堪えない命乞いを無視して、井村を掴んだまま真下へ急降下。剣に刺さる寸前、俺は嘲るように言ってやった――
「おいおいこれは冗談だって!マジになるなよクソ野郎www」
―――ブチャアアアアアアアァ...!!
ギリギリで剣から逃れて、その有り様を見る。
全身余すことなく剣に刺し貫かれて絶命した井村遼の姿がそこにあった。
「俺のことを馬鹿にして辱めた罪に対する当然の報いだ。こんな目に遭いたくなかったなら初めから下らないちょっかいかけてくるな。人間のクズが...!」
冷たく吐き捨てて部屋を出た。今回は現場はそのままにしておいた。別にバレても良いし、犯人なんて分かりはしないだろう。事前に監視カメラは破壊してるし。
とにかく同場所で二人殺すことに成功した。
学生時代、三人目復讐完了。