時間は少し遡り......ここは名前などいちいち覚えてない小さな建設会社。
正面から会社ビルに入り、人がいる方へ行ってみる。顔をみればすぐに分かった。
髭がだいぶ生えて横幅がけっこうデカい黒短髪の40代男......あいつが青山祐輝だ。
「どちら様でしょうか?社員じゃない方が勝手にここに入ってこら――」
非難が込められた口調で男が俺に詰め寄ってきたが、邪魔だと呟いて部屋の隅へ弾き飛ばした。壁にひしゃげる音がして、俺に弾かれた男は絶命した。まぁ殺すつもりで弾いたから当然だ。
異世界での大量虐殺のこともあって、俺は人の命...特にどうでもいい赤の他人どもの命を凄く軽く見るようになった。羽毛以下の軽さとして見ている。だから、これから復讐して殺すアイツ以外の人間も、殺して良いかなと思っている。
男が絶命してから数秒後、状況を理解した連中が次々悲鳴を上げる。うるさいので口を塞いで黙らせてから、俺が一方的に言いたいことを告げる。
「俺は杉山友聖って言いますー。今日ここに来た理由は、奥で間抜け面を晒してる青山祐輝君に復讐する為でーす。
今からアイツを残酷な目に遭わせるので、お前ら邪魔になるから早く消えて下さーい。早くここから出て行かないと、隅っこにあるあの肉塊みたいにしちゃうよ~~?」
さっき殺した男を指差しながら青山以外の社員全員に警告を発する。全員が真っ青な顔で隅にある死体を眺める。その中で青山だけが、俺を凝視して信じられない物を見るような視線を飛ばしてきたとりあえずアイツの口だけ開放してやるか。
「はっ!?お、お前...杉山か!?中学まで一緒の学校だったあの!?若い...!?というより、復讐ってどういうことだ!?意味分からないこと言ってわ、若木を殺しやがって...!」
解放されるなり、驚愕と質問と非難...忙しく俺に言葉を浴びせてきた。その間も社員たちは未だに混乱していて動こうとしない。
「はいはい早く消えた消えた!若木君とやらのようにに殺されたいのか?どうでもいい赤の他人であるお前らの命なんて何とも思ってないんだぞこっちは。とっとと......」
「俺の方を見ろ!いったい何のつもりだと聞いてるんだ、杉山友聖!!」
途中青山が俺の呼びかけを遮って怒鳴ってきた。それに合わせるように奴の近くにいた中年社員も俺に抗議するように声を上げようとする。やがてそれが伝播して皆が俺を睨んで抗議する者、取り押さえようと俺に迫る者、机にある電話や自身の携帯で通報しようとする者しかいなくなったので、俺は舌打ち混じりに呟いて...
「邪魔 消えて」
ビシャァア......!!
「.........は、ぁ??」
青山を除く部屋にいる人間を全て殺した。一人一人の周りの空気を真空に変えて頭を潰してやった。部屋中が彼らの血で赤く染まった。そして何が起きたのか理解できずにまた間抜け面を晒している青山に近づく。
混乱したままの奴は、脚をもつれさせながら逃げようとするが意味無し。一瞬で追いついて胸倉を掴み上げる。そしてその体を思い切り机に叩きつける。その衝撃に耐えきれなかった鉄製の机が割れるように壊れてしまった。
「がはっ...!」
「老いたなぁ...中学の時は野球部でありながら陸上部よりも速い瞬足の持ち主だった男が、あんなにもトロくなってしまっているとは。つーか逃がすわけないだろ?今からお前は俺に裁かれるんだよ」
「あ”......だから復讐だの裁きだの、何を言っでるんだお前!」
「はぁ...お前も忘れてるのか。お前らにとって俺にしてきたことは些細だったってことなのか。本当にクズだな。とりまあの時のこと思い出させるところからやな......ほいっと」
片手で記憶魔術を発動して俺が記憶している小学・中学時代のあの忌まわしい出来事をシンクロさせ、本人の当時の記憶も戻させる。
「......!?チン...!?そうだ、お前をそう呼んで、暴行もして...!ああそうだ。杉山はそうされることで学校中の笑いものにされていて――」
「したんだろうがお前が。俺を学校中の笑いものに、お前がそう仕立てたんだろうが、青山祐輝!なぁおい!?」
ドガッ!「い”...!?ぎゃああああああ!!」
壊れた机の破片を青山の額に思い切り叩きつける。その拍子に頭から大量に血が噴き出て、顔中があっという間に血まみれと化した...まるでトマトだ。
「どうせお前は、 “あの時の俺はまだガキだったから、人の気持ちを考えずにあんなこと言ってしまった。虐めにも加担してしまった”...とか何とか言いたいんだろ?.........で?それではい終わりにしましょうって?馬鹿ですかお前は。軽はずみで人を傷つけておいて、口だけのごめんなさいで済む問題じゃねーんだよこれは」
バキィ!バキィ!「ぐおぉ!!」
破片で奴の頬を何度も叩く。骨が折れる音がしたが構うことなく続ける。
「......勝手な......」
「あ?」
「勝手なこと、べらべら言ってんじゃねーぞお前!ガキだったから?ああ確かにお前の言う通りなのかもしれない!あの修学旅行をきっかけにクラスの中心にいたお前をイジってやろうという気持ちから始めてしまった!」
「......で?」
「ぐ...!そ、それで中学に入って本山や谷中、あとは中村あたりから虐めらてるお前を見て、面白さからあの時のイジりをエスカレートさせたんだ。虐められてるお前を見てると何故だか面白かったからな...」
ガンッ!「ぐあ...!」
「それは......“俺”だったからか?」
「......!!な、何を!?」
苛つき様に再度額に破片をぶつけてさらに血を流させた。俺の問いかけに顔を青くさせながら青山は困惑する。
「気に食わない、恨みがあった、這いつくばらせたい等々。特定の人物に対してあそこまでの悪意を向けるには、色々理由があったはずだ。小学の時の俺はクラスのカースト上位にいた存在だったからなぁ。単にそれが気に食わなかったから、お前は俺にあんな蔑称で呼んで馬鹿にして辱めて、暴行に加わったのか?
それとも......“俺”だからそうしようと思ったからなのか?
どっちだよ答えろよコラ」