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7-1

対象 青山祐輝




 殺した瀬藤やⅯバーガー店で絡まれた男二人に言われたことなんだが、俺の顔年齢は、結構若く見えるらしい。転生してからの今の年齢は24~25才なのだが、中年層やちょっと年上の人間たちからみると、俺は大学生あるいは高3くらいに見えるらしい。

 これは生前の頃もそうだったようで、仕事してた頃も新しく入ってきた年下の奴からタメ語使われて苛ついたことが何回かあった。異世界でもガキガキと言われてクソ冒険者どもから舐められてたな。全部この童顔性質のせいだ全く...!



 (――でも、私は友聖のその整った顔、可愛くてカッコいいって思ってるよ!目が少し怖いけど、イケメンの部類に入ってると思うなぁ)



 ......ついでに余計なことまで思い出しちまった。この話は終わりにしよう。


 昨日は清水博樹への復讐を遂げ......まぁゴミ2体を処理して、Ⅿバーガーを堪能したってところか。

 ―――今日はガンガン復讐するぜ!!

 時刻は午前8時。今日も平日なので世の社会人は出勤しているところか。復讐リストに載ってる奴らの同行は筒抜けであるので、ここからいちばん近くにいる奴を次としようか。

 ノートを広げて一覧を確認する。そして......

 次の標的を決めた俺は、早速家を出てソイツのところへ向かった!






 「おいチ〇デカー。お前だよ杉山友聖。チ〇デカ!」

 「......黙れよ。クソ、がぁ!」

 「ほんまのことやろーがクソチ〇デカがwwこの―」

 「俺を!!そんなふうに呼ぶんじゃねぇ!!!」



 直後取っ組み合い、だが転がされたのは俺だった。やはり俺は多数には未だ勝てないでいるレベルだ。


 「本当のこと言われて切れるとかマジ笑えるわーこのフランクフルト野郎w」

 「ほんそれなww」


 俺のことをあんな侮蔑で...それも女子もいるところでも最初に呼ぶようになった――青山祐輝あおやまゆうき。野球部だった。

 その青山に乗っかって少し呼び名を変えて、でもそこに明確な悪意を込めて俺を侮辱しやがった――井村遼いむらりょう。同じく野球部。

 野球部でもう一人俺を虐げた男がいたが、そいつはこの二人以上のことをしやがった主犯者だ。後のエピソードで挙げるとしよう。

 とにかく青山・井村......このゴミカスどもは、俺の身体部位を貶して馬鹿にして、不快極まる蔑称をつけることで俺を辱め、害してきた。きっかけは小学6年生のスキー実習行事の風呂時間だ。当時自覚が無かった俺は何の躊躇いも無く全裸で風呂場へ。そこに青山が俺のアレを目にした途端...


 「うっっっわ!杉山のソレのサイズ何!?デカ過ぎない?キモぉww」


 それを聞いた他の生徒らが俺のアレを目にして笑いやがった。そこまで反応するものなのかと他の奴らのアレを見てみると、小さい。おかしいのは俺だったみたいだ......当時は。


 「デッカwキモww杉山のソレ、キモ過ぎww」

 青山の侮蔑が込められた発言に他の生徒も俺をおかしなものを見るような目を向けてきた。後に虐めの主犯格となる川路、本山、前原なども小学校卒業するくらいまでは俺の股間部のことで馬鹿にしやがった。

 全部、青山祐輝のせいで...。


 「チ〇デカ!チ〇デカ!チ〇デカ杉山!!」

 「......!!(無視してもこれだ...殺したい)」



 この頃から青山祐輝に対する殺意のボルテージは頂点に達しようかというレベルだった。男のシンボルが大きいことは、大人世代になると却って憧れの対象になってくるものだ(偏見)が、ガキ世代にとってはソレは異物混入として認識される、珍妙なものと見られるようだった。

 今にして思えばむしろ誇ってみせて聞き流すのが最善策だったと思うが、当時の俺にとっては堪え難い屈辱であると捉えてしまった。あの時青山や虐め主犯格どもだけじゃなく、他の多くの生徒からも驚きと異物を見るような目を向けられたのだ。ああやって多数の視線に晒されたことで、“おかしいのは俺なんだ”――と、思い込んでしまったのだ。


 あの出来事があって以降、高校生になるまでは自分の局部の大きさをコンプレックスとして捉えてしまった。そう思うべきじゃないのにそうなってしまった。

 全部、全部全部あのクソ野郎が騒いだせいで...!

 中学に上がっても、青山による侮辱は止まなかった。そのせいで、中学から一緒になった...青山と同じ野球部の井村遼が、奴が俺をそう呼んで馬鹿にしているのを見て悪ノリするようになり、いつしかあのカス野郎も俺の股間のことで馬鹿にするようになった。

 井村遼に至っては、俺のアレを見てすらいないのに、勝手な憶測で俺のアレがデカいだのあり得ないだのとホラを吹いてるようなものだ。だが時期が悪かったせい(虐めの件で)か、周りの生徒どもはそんな俺のことをただ面白がって囃し立てるクズもいた。女子生徒には変な奴を見る目で見られるなどマジで嫌な思いをさせられた。



 「おいフランクフルト。お前のは粗挽きか?ジューシーか?wwなぁ―」

 「黙れよクソ野郎...!」

 「痛っ!?おいおい、暴力は無いんじゃないのー?みんなー!杉山が暴力ふるってきたでー!?」


 虐めで心に余裕が無かった俺は、井村の易い挑発とクソ絡みに短気を起こして制裁という名の暴力を起こした。教師に注意される(悪口言われたこと言っても大して効果無かった)し、井村を殴った報復とかで陰で青山や本山から暴行を受けた。

 人の尊厳を傷つけて何がそんなに楽しいのか...。いや、あいつらは人を傷つけること、辱めることを悦楽と捉えているのだろう。その標的を俺に絞っただけだったのだろう。

 俺が本格的に虐められるようになったきっかけは、ある意味では青山祐輝だった。赦さない......絶対復讐する...!!


 井村遼......お前も赦さない。お前は俺の勉強の道を妨げたという大罪がある。

 中学2年から俺は塾に通った。虐めが原因で成績が学年で下位に落ち、このままでは進学が危うくなったからだ。お陰で成績は何とか持ち直した。

 が、ここでも俺は理不尽な目に遭うことになる。


 「あ...ジューシーフランク!いや粗挽きフランクか?なぁww」

 「......いい加減にそうやって俺を貶してんじゃねーよ、このクソガァ!!!」


 3年になった春に、よりにもよって井村遼が俺が通ってる塾に入って来やがった。そして学校と同じように、塾生たちの前で俺を蔑称で呼んで侮辱して笑いものにして...!!中には俺の虐められ事情を知っている生徒もいたので余計に腹を立たされた。

 そして度重なるストレスによって、メンタルが未熟な中学生だった俺の堪忍袋は完全にキレて、場所と人目憚らず暴れてしまった。何も知らない奴らからにしてみれば、些細なちょっかいが原因で暴力に走った危ない少年に映ったのだろうな......俺はそのせいで塾を辞めさせられた。俺を侮辱したあのクズ野郎は辞めさせられたりはしなかったくせに、俺が悪者扱いかよ...!


 そして俺をさらにぶち切れさせたのは、後日あのクソ野郎に「自分が悪かったごめんなさい」的なことを言わせるべく、声を大にして謝罪を求めさせた時のことだ。憤怒の表情で、本気の言葉をぶつけた俺に対するあのクソ野郎の返事は――




 「は?冗談で言ってたことを、何マジになってんの?馬鹿じゃねーの?フランクフルトwww」


 「―――――殺す」



 そうやって俺の心を傷つけて嗤いやがる。そのクソ面に拳をぶち込む。俺が悪者になる。で、報復だと言って主犯連中から暴行を受ける。俺は許されずあいつらは許される。意味が分からない世界だここは。


 井村遼。お前はクズだ。軽い気持ちで他人が悪意持って言ってることを同じように真似て輪唱し、嫌がってるにも関わらず繰り返し、周りに面白がって拡散させネタにしてさらに面白がる。

 対象が俺だから、何でも言っていいと思い込んでやがる、無責任に下らない悪意をばら撒きやがる。

 で、こっちが本気でぶち切れて止めろと叫んだら、「冗談だから」「本気で言ったわけじゃないから」などと自分は悪くないと主張して罪逃れしようとしやがる。そしてそれを許容する有象無象ども...!


 あり得ない。信じられない。どうしてこんなことが赦される?冗談で人を傷つけることが野放しにされている?

 その下らない冗談に本気で傷つけられる人がいるということを本当に理解していない......そもそも理解しようとすらしていないんだな?

 軽はずみな発言・その場での悪ノリ・無責任な囃し立てetc...ガキも青年も大人も中高年も、どいつもこいつもそういうことを何も考えずに平気でしやがる。その“些細”で深く、深く傷つく人間のことを知ろうともしないで。真剣に考えようとしていないのだ。部外者だから、無関係でこっちには何の危険も無いから。

 だから俺が傷ついて苦しんでる姿を見ても、そうやって笑いものに仕立てて嘲笑いやがるんだ...!本気で嫌がってることに気付かずに冗談だと捉えて全員マジになってくれないんだ...!


 これを虐めと呼ばずして何と言うのか!!?


 だから絶対に赦してはいけない。その被害者だった俺が言うのだから間違いじゃない。復讐するんだ......正当な制裁を下すんだ...!!








 「―――分かったか?俺がこうしてお前を正当に痛めつけて苦しめることが、理不尽でも何でもない...当然のことだってことが―――青山祐輝」

 「が......ぼがっ...!」


 顔面血だらけになって苦しそうに呼吸する...青山祐輝の頭を鷲掴みにしながら、俺は冷淡にそう告げた。

 俺たちの足元には、奴の汚い血溜まりができていて、周辺は色んな奴の血で真っ赤になっていた―。


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