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 きっかけは何だったのか、今となってはあまり憶えていない。


 ただ言えることは、あいつらは俺のあり得たかもしれない未来・人生を理不尽に奪って、黒く塗り潰した。夢も踏みにじって、何もかもを壊したのだ―――



 小学生だった頃の俺は、クラスのカースト上位寄りの存在だった。そのお陰で発言力が強かったりもして、俺が良くないことだと言えばみんながそう思ってくれたり、遊びに誘われることもよくあった。あの頃の俺は、人望がかなりあった。



 しかし6年生が終わる頃になって、そんな俺が気に入らないと言った奴らが出てきた。あの時はまだ小さな揉め事としか認知されず、俺自身にも大して被害・危害には及ばなかった。発言力がまだあったのも功を奏した。1対1なら喧嘩にも負けない力と自信もあった。

 だけど、あの頃から俺が虐められるようになる予兆はあったことに俺は気付けないでいた。



 中学生に上がりしばらくしたら、小学の時に揉めた連中が新しい連中と組んで俺にちょっかいをかけてきた。そいつらは前の小学校ではスクールカーストトップに位置していて、性格も荒っぽく、悪い意味で有名だった。

 誰もがそいつらの機嫌を損ねないよう振舞っていたが、俺だけはそんなの知るかと我を通していた。



 それが連中の気に障ったらしく、俺は目をつけられ嫌がらせをされるようになった。プリントが回ってこなかったり教科書が汚されてたり机にゴミが入ってたりと陰湿な嫌がらせから始まり、止めてほしければ自分らに反抗的な態度をとるなと言ってきた。


 俺は屈することなくそれどころか、ちょっかいかけてきた生徒に制裁(=ぶん殴る)してやった。




 それが連中をさらに怒らせることとなり、教師たちがいないところで俺を暴行するようになった。一人と殴り合うならこっちに勝ち目はあったが、多数に勝てる程、俺にそんな主人公補正はなかった。数人に殴られて蹴られて制服を汚されて...何の罪を犯していない俺は、理不尽に虐げられた。


 当然教師や親にこのことを告げたが、効果が無かった。連中がクラスどもに脅しと圧力をかけて俺が虐められてることを黙らせたせいで、証拠不十分として学校は何もしてくれなかった。担任の先生はせいぜいみんなに厳重注意したくらいで何も助けてくれなかった。




 親はさらにひどいもので、よりにもよって俺がふっかけたからだの、もう少し身の振り方を慎めだのと言って、俺が悪いからなんだと全く意味の無い説教しかしなかった。

 いやいやおい、まてよ。はぁ?俺の有様をよく見ろよ。普通の喧嘩でここまでボロボロになるか?服がズタズタになるか?私物があんなに汚され壊されたのは仕方がない?俺が悪い??いや意味分からねーから。


 おかしいだろ。俺はあんな理不尽で意味不明な理由で多数から虐げられたんだぞ?ふざけるな!

 いくら俺がそういった気持ちを告げてもまともに取り合ってはくれなかった。こいつらは本当に家族なのかと、この時から俺の心は荒んでいった。学校も家族さえ味方が既にいなかったのだと気付いたのは、学生生活が終えてからだった。


 進級後はさらに虐めが酷くなった。相変わらず反抗的でいる俺に対して、今度は上級生にまで虐げられるようにもなった。連中が奴らの先輩に俺のことを悪く吹聴してそれを聞いた上級生が俺に暴行を始めた。最初は言ってもない連中への悪口に対する制裁で、後には面白がって理不尽に俺に暴力を振るった。殴打・ネットの晒上げ・タバコを押し付けるなど、連中はただただ面白がって俺を辱めて潰しにきた。


 上級生が卒業した頃には、俺のクラスでの地位は底辺の底辺だった。虐め主犯の連中全員が標的を俺に絞ってる為、自分は虐められないとどいつもこいつも安堵したような面をしてるだけで、誰も俺に救いの手を伸ばすことはしなかった。俺を虐げている連中もクズだが、目の前で理不尽に虐げられてる光景をただ見てるだけという他のみんなも同罪だ。自分らは安全な場所でただ俺が傷つけられているのを見てるだけのあいつらにも人の心が無いように見えた。


 虐めが原因で勉強に大きく支障をきたし、ロクな成績しか修められなかったせいで偏差値が低い高校へ進学するしか出来なかった。レベルが低いからこそ、当然虐めも横行している。不運にも、俺の進学先には中学での虐め主犯の一人がいて、そいつのせいで俺はまた理不尽な虐めに遭った。

 多数で俺を甚振って、ただ面白いからとかいう理由で他のクズどもも暴行に加わり、俺は連中のただ下らない感情の為に傷つけ辱しめられ、人としての尊厳を踏みにじられ続けた。クズで下衆なあいつらは、無駄に悪知恵を働かせて、学校に露見しないように隠蔽して自身の悪行を秘密にしてきた。

 暴行痕を教師に見せて虐められてると主張しても、主犯連中はメイクか何かで俺に暴力振るわれたとデタラメ吹聴して、お互い悪いという扱いを受けて奴らは正当な裁きを受けなかった。



 いくら俺一人が何を言っても、外面良くしているカースト上位の連中らの主張を優先されてしまって誰も俺の言葉を拾ってくれなかった。



 味方がいない......それを確信した俺は、ずっと反抗し続けてき姿勢を崩して、屈しなかった心も完全に折れて、ふさぎ込んだ。学校へは行かず、不登校のまま学校を卒業。中学同様...いやあの時よりも勉強に身が入らず、大学への進学は絶たれた。

 一度の救いも無いまま、理不尽でクソッタレな6年間を過ごしてしまった。俺の思春期のあの日々は、色など全く無い、ただ人の尊厳を踏みにじられ汚されただけの、消し去りたい過去となった。

 忘れたくてもふとしたことであの日々を思い出して何度も発狂しそうになった。俺も大学生活を送りたかった。そんな憧れを、連中のクソ下らない理由で全て潰された。




 なぁ......俺が何したってんだ?一度でも誰かを理不尽に虐げたか?誰かを下らない理由で傷つけたことあったか?お前らクズどもみたいに誰かを貶して酷いことしたか?

 何で俺はお前らなんかに潰されなければならなかったんだ?

 何で他のみんなは見てるだけでいたんだ?告げるくらい容易かったはずだろ?


 ?どいつもこいつも、から、虐げて、その有り様をただ見るだけに徹したのか?




 味方なんて、本当に最初からいなかったんだな......。



 ――だったら今度は、俺がをしても良いよな?

 散々人の人生滅茶苦茶にしておいて、自分らに何の正当な裁きが下されないなんてそんなご都合がはたらいて良い訳がない。


 随分遅くなったが、あの6年間で受けた痛み・苦しみ・屈辱を、全て増し増しにして返してやるよ...!








 「――だから、今からあの時の仕返し...復讐をしに来たぞ。

 まずは......お前からだ、清水博樹しみずひろき!」




 そして現在、目的の地に着いた俺は、虐め主犯連中のうち一人の家に押し入って、標的となっている人物の目の前に立ち、突然現れた俺を呆然と見つめるソイツの面を見て、俺は邪悪な笑みを浮かべてみせた...!

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