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 王宮内に入ろうとしたら、兵士たちに囲まれて剣や弓矢を向けられる。派手に暴れていたから流石にバレていたようで、既に事情を把握している様子の兵士たちは全員俺を魔王軍を見る目で睨んでいる。その中にはかつて共に戦ってきた討伐隊の兵もいた。

 こいつらも......俺を見ようとしなかったただのゴミだ。かつて共闘してきた者だろうともはや何の情も無い。ただそこにいるから...ぶち殺すだけだ。


 「―――」

 「――――」

 「―――――」


 息をするように兵士どもの命を消していく。魔王を倒した頃には、討伐隊の中で俺に敵う奴はいなかった。ギルド同様に圧倒的な力の差がある俺は、傷を負うことも無い。



 「勇者ぁ!お前はどうして...!?」

 「何で仲間を殺すんだぁ!?狂人め!!」

 「君はそんな人間じゃないはずだ...!!」

 「正気に戻れぇ勇者!!」

 「これ以上仲間を殺すな!!止まれ!!」



 同い年の兵が、おじさん兵が、少し年上の副隊長が、いつも隣で戦っていた女兵が、孫が生まれたとか言っていた隊長が...俺を止めようと、言葉を投げかけてくる。

 全て無視、無視無視無視無視...耳を貸す事無く、斬って燃やして殴って消し飛ばして潰して、彼らの命を奪っていった。



 「仲間...?心からそう思っていないクセによく言えたね?結局は都合の良い道具としか見ていなかったくせに。俺がいちばん貢献したのにお前らばかりが褒賞たくさんもらっちゃってさぁ!家庭が裕福な坊ちゃんお嬢ちゃんオジサンたちはそうやって優遇されてるけど、俺はそうじゃない!みんなみんな俺をハブって除け者にして美味い汁すすってさぁ!!」



 絶望や恐怖、怒りなどが混ざった目を向けるかつての同胞どもを、怒りと嫉妬と怨嗟の念がこめられた言葉をぶつける。

 しばらく経つと、俺に立ち向かってくる兵士が現れなくなった。どうやらみんないなくなってしまったらしい。だったら次だ。

 無理矢理討伐隊に引き入れて魔王軍と戦えとか命令して、そのくせ偉そうに見下して、道具扱いして、こっちは命懸けて頑張って働いているのに、労いの言葉さえかけずでいてそれどころか蔑みの言葉しかかけない。

 そんな腐った人格をした、ゴミ溜めを、処分しに行こう。


 大臣、使用人..みんな殺していった。特に大臣どもは、この期に及んで俺を口汚く罵るものだから、誰よりも惨い殺しをした。


 「下賤な者が、こんなことが許され――」

 「この犯罪者が――」

 「やっぱりお前など勇者にふさわしくなか――」


 「俺がこうなったのは全部お前らのせいだ。死ね」


 罵声も命乞いも全てどうでもいい。ただこのどす黒い感情のままに、俺が今いちばんしたいことを叶える為に動く。


 そして――




 「友聖……あなたはなんて、ことを……っ」



 次は......俺をいちばん最悪な形でどん底に突き落としてくれた王女、リリナ様だ。



 「友聖、自分が何をしたのか――」

 「もちろん自覚してるし理解もしてる。でもさぁ、俺をこんな風に変えてしまったのは、リリナ様たちじゃないか。お前たちが選んだことじゃないか。

 優しくしておいて......結局はお前もあいつら汚い豚どもと同じ、俺のことはただの道具としか見ていなくて、魔王を倒して平和が確立したと知った途端に用済みだって冷たく突き放してさよならかよ」


 「な、何を...!?」



 「まだ惚けるんだ、さすがだな!?数年間、表面は優しい顔を向けてきて、役目が終わった瞬間あんな風に冷たくしてくれて!まんまと騙されたよ!お前も、心の中では俺のこと平民だからと蔑んで、幸薄い貧相な男だと見下していたんだろ!?」



 「そんなこと思ってない!私は――「もうお前の嘘しか無い言葉なんて聞きたくねー」

 ――ぁ......!!」



 風魔術で空気を操り、リリナ様の周囲の酸素を無くして呼吸を奪ってやる。もう彼女の耳障りな声を聞かないで済む。あとは、その命を奪うだけだ...。



  「異世界でお利口さんでいたのが間違いだったんだ。こんな世界でそういう性格をしていても結局は損をする。初めからこうしていれば良かったんだ......お前らから学ばせてもらったよ。そうやって人を騙してどん底に突き落とすっていう、最低な詐術を教えてくれてどうもありがとうな!!!

 じゃあな...今まで嘘でも俺を励まして労ってくれて嬉しかったよ。

 さようなら......リリナ様」


 ドシュ......「ぁ......あ」



 お別れの言葉をかけ終わると同時に、リリナ様の腹に剣を突き刺して終わらせた。窒息死か失血死かなんてどうでもいい。ゆっくりと苦しんでもらえるよう心臓は外した。嘘つきには当然の報いだ...!




 そしてその後も俺は殺戮を行い、残虐の限りを尽くして―――王国を滅ぼした。

 残っていた貴族や国民どもを、老若男女関係無く殺して、殺し尽くした。


 俺を最初に捨ててくれた国王は、特に酷い目に遭わせた。娘であるリリナ様を殺してやったと言い、お前のせいで死んだんだと何度も言いまくって心を壊してやった後、イエスキリストのように十字架で磔にして手足を杭で刺して固定させてからそのまま国中引きずり回しを行って、最後は火炙り刑に処して殺した。

 国王の苦悶に満ちた声は、俺のこの怒りを少しは鎮静させてくれた。



 「まだだ。俺に優しくしてくれないこんな世界は要らない......全部、滅ぼしてやる...!」




 王国だけでは飽き足らなかった俺は、さらに三日三晩にわたって世界中を蹂躙して回り、このクソッタレな異世界を滅亡させた...!


 「は、はははははは...。へはははははははははははぁ!!!そうだ、俺以外の人間なんて要らない!どうせ見ようともしない優しい世界にならないのなら、全部滅ぼしてしまえば良い!!みんな死ねば良かったんだぁ!!

 ひゃあはははははははは...!!」




 俺以外の人間を絶滅させてからしばらく、声が枯れるまで嗤い続けた。こんなに心の底から笑ったのは、前世から含めて何十年振りだっただろうか。 

 他人を不幸と絶望のどん底に突き落とすことが、こんなにも愉しくて快感なことだなんて、初めて知った。



 「そうだ......も、ここにいた奴らと同じ目に遭わせたら、いったいどれだけ愉しめるのだろうか...」


あいつら――前世で俺を虐めた同級生ども、俺を理不尽に仲間外れして鬱になるまで追い込んでくれた上司や同僚ども。

 憎くて殺したくてしかたないあのクズどもも、今回のように憎しみをぶつけて甚振って残虐の限りを尽くせるなら…。復讐ができるなら。

 俺はどれだけ救われるのだろう...。前世では果たせなかったあいつらへの復讐が、この力があれば簡単にできるはずだ!


 しかし、ここは異世界。前世のあの現実とはそもそも世界が...次元が全く異なっている。果たして元のあの現実世界に干渉など――





 「......いや。やるんだ。俺は今や何でも出来るようになった万能チート人間。普通の人間だったらできないことでも、俺ならできるはずだ。



 別の世界へ干渉する魔術を、俺が創るんだ!!」





 それは言わば次元魔術。ワープホールか何かを、こことあの世界とで繋げる。誰も実現したことが無いであろう幻の魔術を、俺が創り出してやる...!





 全ては 俺の復讐の為に!!!





 転生してから初めて、明確な目標ができた俺は、王国へ連行される前...冒険者を始めたばかりの時振りに、生き生きと行動した。誰かに強制されてやるのと自分の意思でやることがこんなにも違うなんて!忘れていた、この久しい感覚。

 何年経っても、俺は飽きることなく研究と開発の毎日を過ごした。



 その間もずっと、俺は前世の殺したい連中に対する復讐心を消さないままでいた...!

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