「おやつ買ってきますね!」
「はーい!」
ユミは今日も仕事終わりに近場のコンビニでおやつを買う。毎回コンビニで何かを買っているため、正直そろそろ飽きてきてしまい、これといって食べたいと思えるものが無くなってしまっていた。
ユミは仕方なくフラフラと歩き回り、期間限定のものや新商品などもくまなく探す。一通り見終わったところで、改めて今日は何にしようかなと考える。アヤメを外で待たせているので、あまりのんびりは出来ない。サクッと決めていきたいところだ。
「ユミちゃん! 今日は何にするの?」
突然背後からアヤメの声がした。ユミはビクリとして振り返る。
「あれ? アヤメさんも今日は何か買うんですか?」
いつもは外で待っているアヤメだったが、今日は何か買うのかもしれない。
「たまには私も一緒に買い食いしよっかなって! 何かオススメある?」
「そうですね……。先週食べた新作のおにぎり達は結構当たりでしたね。ここは暖かいものならホットスナック系はハズレがないと思います」
「なるほどー! おにぎり行ってみようかなー!」
アヤメはおにぎりコーナーへ向かう。ユミもアヤメに続きおにぎりの棚へ移動した。せっかくなら自分もおにぎりにしようかなと思う。
「え!? 唐揚げが入ってるの!? おにぎりってなんでもありじゃん! これにしよーっと!」
ユミもアヤメが選んだものと同じものを選んだ。唐揚げが入ったおにぎりは、先々週食べたなと思う。安定の美味しさだったと記憶しているのでリピートするのは悪くない。
2人はコンビニをでて、ユミは早速おにぎりを食べ始める。隣を歩くアヤメもおにぎりに海苔を巻いて、黙々と食べ始めた。
「んー! 仕事終わりのおやつは最高!」
アヤメは満足そうだ。
「ユミちゃんってさ、好きな食べ物って何? いつも私が食べたいものばかりだからさ」
「うーん……。そうですね。ひとりの時は、魚をよく食べるかもです。刺身も煮魚も好きですし」
「へぇ! そうなんだ! 私もブリ照り好き!」
「ブリ照りいいですね。今度作りますね」
「わーい! 楽しみ!」
ブリ照りは久しく食べていないなと思う。今度スーパーで良さそうなブリがあれば作るのはありかもしれない。
「あ! あとさ、ユミちゃんって好きな色って何色?」
「色……ですか?」
「うん!」
好きな色は何色だろうか。あまり意識したことは無い。自分が持っている小物類も特に色が偏ったりしていないので、無意識に好きな色を選んでいるということも無さそうだ。
「好きな色っていうと難しいですが、パステルカラーの配色は好きかもしれません。柔らかい感じとか可愛らしいので」
「成程! パステルカラー可愛いよね! そういえば、ユミちゃんの部屋にパステルカラーの小さいぬいぐるみがいくつかあるよね。癒されそう!」
「そうですね。素材も柔らかくてふわふわなので、いつも癒されてます」
「ちなみにアヤメさんは何色が好きなんですか?」
「私は赤かな!」
「赤……」
あまりアヤメが赤い物を身につけているイメージは無い。強いて言えば血しぶきの中で戦う姿だろう。
小物類は黄色やオレンジや黄緑と言った元気なイメージの物が多い気がする。赤色も好きだというのは少し意外だ。
「うーん……」
ユミは唸りながら立ち止まり、背負っているソフトケースからチェーンソーを取り出した。そして手際よくエンジンをかけた。
「え。ユミちゃんどうしたの?」
「本当私どうしたんでしょうね。さっきから頭がズキズキと痛いんです」
「……」
「ええと。アヤメさん。ここ、どこですか?」
「……」
「見知った風景なんですけど、どこか分からないんですよね。それに足音。なんで砂利の音がするんでしょう? 住宅街のアスファルトを歩いてるのに足音が砂利って……」
「……」
「それに、アヤメさん。私アヤメさんがうちでご飯食べる時、絶対ぬいぐるみはクローゼットにしまうんですよ。いつ見たんですか? ぬいぐるみ。14にもなってぬいぐるみ抱っこしてるなんてちょっと恥ずかしくて、人が来る時は絶対隠してるんです」
「……」
「あぁ、あと。アヤメさんは魚食べませんね。お刺身位は少し食べますが基本お肉が好きな人ですからね。それに、買い食いは絶対しないんですよ。私の作るご飯が好きすぎて絶対お腹を空かせるって意地はるんですから。本当に可愛いです」
「……」
「極めつけは好きな色ですか? 赤は無いですね。絶対。赤って血のイメージですよね。血のイメージを雑に引っ張り出したかったって事なのかなって私は推測してます」
「……」
「あぁ、それと。その笑顔。アヤメさんの笑顔はそんな不器用じゃありません。もっと無邪気で可愛いんですよ。だからもう、いい加減にして。私の大好きな人を愚弄しないで」
目の前に立つアヤメは目を丸くして立っている。しかし、直ぐに不器用な笑顔を見せた。そして……。
「なぁんだ。もうバレちゃったか」
アヤメの皮を被った人間はそう言ってニヤリと笑った。
「まぁさか、バレちまうとはな。もう意味ねぇし、解いちまうか」
アヤメの皮を被った人間は突然、パン! と胸の前で手を叩いた。