僕たちは「冬の間」から探すことにした。夏央が僕たちを追って来るなら、まずはそこに向かうはずだ。
「それにしても、人に心配かけさせやがって。見つけたらガツンと注意するか」
「暁が言えるセリフじゃないと思うけれど」
「まあ、あいつは俺がトイレに行ったのを知らないんだ。問題ないだろ」
「そりゃあ、そうだけど」僕は釈然としない。
「冬の間」に着いたが、夏央の姿はない。
「あれ、いるとしたら、ここだと思ったんだけど」僕は首をかしげる。
「同感だ」
「次は『秋の間』だね」
「春の間」はあの一件以降、封鎖されている。秋、夏の順にまわれば、どこかで見つかるだろう。
その時だった。館中にけたたましくジリリリリーンと音が鳴り響く。
僕は暁と顔を見合わせる。
「火災報知器じゃないか? 火事に違いない。周平、どこから聞こえる?」
「かなり遠いから……『夏の間』かも!」
「よし、行くぞ!」
「暁、先に行ってて。僕より足が速いから!」
暁は手を挙げて了解の合図をすると、視界から消えた。
暁を追って「夏の間」へ向かう途中だった。T字路で、危うく誰かとぶつかりかけた。
「おっと」ギリギリでかわす。
それは天馬さんだった。自室からおりてきたに違いない。
「天馬さん、火事みたい! たぶん『夏の間』だと思う。先に暁が行ってる!」
「な、なるほど。一緒に行くよ!」
二人で走る。道が長く感じる。相変わらず警報は鳴り続けている。
「夏の間」に着くと、暁が呆然と立ち尽くしていた。スプリンクラーのおかげか、既に火は消えていた。一安心だ。ただ、異臭が漂っている。何かが焦げた臭いだ。
部屋の中をのぞくと、誰かが椅子に縛りつけられていた。その人物は――焼死していた。
「そんな……」
「暁さん、君がやったの?」
「そんなわけあるか! だって、だって……」
焼死していたのは――夏央だった。
しばらくすると、喜八郎さんが杖をついて、ゼエゼエと息を切らしながら向かって来る。
「とうとう殺人事件が起こってしまったか……」
喜八郎さんに続き秋吉さんたちがなだれ込む。
「いったい何事だ!」秋吉さんが怒鳴る。
「見てのとおりじゃ。ついに恐れていたことが起きてしまったということじゃ」
それ以降、僕の記憶はない。