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第40話 『ライトニング・バスター』


 マッハ。それは、──音の速さである。

 音の速さと同じであればマッハ・一となり、その二倍の速さがあればマッハ・二となるのだ。

 それを身近のモノで例えるのならば、新幹線の速さがマッハ・四分の一であることだろうか?

 つまり新幹線は、音の四分の一の速さを持つのだ。

 そして今、僕の目の前に居るラビバードも、新幹線と同じマッハ・四分の一の速さである。

 要はこの状況。小さな新幹線が僕へと目掛けて、飛び掛って来ているのも同然なのだ。


 しかし今の僕は、雷の精霊と合体したことにより、音速と同じ速さを出すことが可能なのである。

 であるならば、マッハ・四分の一のラビバードの攻撃を避けることなど、もはや何でも無いのだ。


「ふんっ! これくらい余裕なんだからね!」


 迫り来る敵を縫う様にして、華麗に回避した僕。

 そんな僕の、髪が、瞳が、バチバチと揺らいだ。


 あれ? なんでツンデレみたいになってるんだろう?

 ・・・・・・まぁ、いっか! 別に困ることないし!


 敵を背に置いて来た僕は、敵の方へと向き直す。

 するとラビバードは一斉に、地面を蹴りつつ羽根による加速を重複させて、此方へと肉薄して来た。

 肉薄して来るラビバードは、三十匹が一斉に飛び回るのことで僕を撹乱させ、交互に頭突きと蹴りをしてくる。


『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』『プープー』


 その速さも然る事乍ら、一番に連携が素晴らしい。

 確かにこれはチート持ちの僕や、そもそも最強クラスに強いエマ達でなければ、ソロクリアは難しいだろう。


 てかこれ、一階層で出て来て良い敵じゃなくない?

 これがゲームだったら、バランス調整おかしいって、運営が叩かれているレベルだよ?

 ラビバードが強過ぎて、白の死神なんて物騒な異名を持っているのも、超高速で頷ける。


 でもね……

 幾ら速く、そして連携力が凄まじかろうと、

 ──当たらなければどうということはないのだ!


「兎さんなんかに速さ負けしないんだから!!」


 地面を踏み締めて加速した。

 本来ならばこの速さに対して、言葉通り全身が追い付かないのだろうが、何故かそんなことは無い。

 ならば・・・音の速さで敵に肉薄しつつ、その隙に魔法を詠唱することなど、蔵座も無いのだ。


「シングル・雷魔法」


 ラビバードが止まって見えた。

 そんなラビバードはそれぞれ、殺意の込もった足と頭を僕に向けている。


 体感、あとほんの数秒くらい……。

 いや……一秒も無いかも知れない。

 刹那の一瞬を過ぎった僕は、此方へ攻撃して来ているラビバードと、衝突をしてしまうのだ。


 そんな僕は今、ラビバードの一匹と目が合った。

 その瞳は淀んだ紅色で、僕の血肉を欲していた。


(僕は絶対に負けられ無いんだ!)


 瞼が落ちたことにより、一瞬の暗い闇が訪れた。

 無意識的に瞬きをした僕は、睫毛の影が落ちている目をガッと見開き、──超広範囲の雷魔法を唱える!!


破壊の雷剣ライトニング・バスターッッッ!!」


 魔法を唱えたとき・・・

 僕は雷で出来た一振の直剣を、手に握っていた……。

 音を超えた光の速さで、戦場を駆け抜けていた……。

 僕が駆け抜けた経路が、摩擦熱で融解していた……。


 攻撃時に生じた閃光が、外界から周囲を隔離している。

 ──バーンッッッ!!!!!

 少し遅れて、ダンジョンの第一階層中に爆音が轟いた。


「じゃーね、兎さん」


 薙ぎ払う様に雷の剣を振り翳した僕が、剣を素早く動かすことで血振りをした、そのとき……。

 雷の剣から放たれた強力な電撃が、個々のラビバードを伝う様にして、全体に広がっていった。


 そんな、電撃を食らったラビバード共はみな・・・

 電撃によって血肉が朽ち果て、──灰すらもが遺ってはいなかった……。


「雷が最アンド強なんだから!」


―――


作者が体調崩したので、文字数少なくてすみません

新作書くので、1週間くらい休載します


【ゆるっと豆知識】


①この作品、本当は異世界恋愛モノの予定だった


②ラビバードは時速300km。これは新幹線と同じく、マッハ0.25に相当する

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