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第37話 『白の死神とは遭遇するな』


 僕の目に映るは、チーターの見た目と、ヒョウのしなやかなでしっかりした体を持つモンスター、チヒョウ。

 チヒョウの特徴は群れを作ら無い点と、体に幾つもの黒色斑点があり、爪が露出していることだが。

 しかしチヒョウ最大の特徴は、他にある。


 それは、──殺気と気配を完全に消せることだ。


 チヒョウは気配を消して近づき、時速百十五キロメートルを超える速さで、獲物が気づく前に狩る。

 そして・・・そんなチヒョウが、アルテミスさんに牙を向けて襲い掛かってきたのだ。

 しかしそれに対して、十八歳組は誰も反応しない。

 むしろ全員が心の中で、チヒョウに合掌していた。


 それは何故か?

 チヒョウがアルテミスさんを襲ったからだ。


「オメェよ。ネコの分際で、ワシの大事なアルテミスに牙向けてんじゃねーよ」


 アルテミスさんが腰を抜かしたのか、尻餅をついた。

 怒っているヘファイストスさんの右手が、チヒョウの喉元を手で握り潰していた。

 アルテミスさんはそれを、ただただ見ている。


「すげぇ……」


「流石っすよね……」


「うん……」


 ヘファイストスさんの動きが、何も見えなかった。

 いや・・・正確には見えてはいたのだが、その行動を理解出来なかったのだ。


 あ、滅茶苦茶速く立ち上がった……。

 あ、ヘファイストスさんの手が動いた……。


 この程度でしか、認識出来なかった。

 ただただ感銘の言葉だけを漏らした。

 そんな自分を情けないとは思わない。

 どちらかと言えばそう、ヘファイストスさんスゲェと言う方が正しい反応だろう。

 まぁ……僕以外のメンツは全員、全部が見えているんだろうけどさ。


『ニャー……ニャァ……二ャ・・・・・・』


 グギッ……………………。

 やがてチヒョウは、腕に血管が浮き出る程のヘファイストスの握力で、その首をへし折られ息絶えた。

 チヒョウだったモノの体は力無く垂れ、ヘファイストスの手によってブラブラと宙に浮いている。


 バタッ……………………。

 ヘファイストスさんはチヒョウを捨て、尻餅をついているアルテミスさんに、逆の左手を伸ばした。

 その手をアルテミスさんが取ると、ゆっくりと地面から立ち上がり、ヘファイストスさんが心配を呈す。


「大丈夫か、アルテミス? 怪我は無いか?」


「うむ、大丈夫じゃ……。なんだ、助かったぞ……」


「ふぉっふぉっふぉっ。そうかそうか……それなら良かったわい。やはり、アルテミスは素直じゃのお」


 そう言ったヘファイストスさんは、地面に落としたチヒョウを手に取って、此方の方に微笑んだ。


「ヌボアは焦げてるし、今日はコイツを食おう」


「ヘファイストスさんありがとうございます。本当は、僕が殺るべき? だったのに……」


「気にせんでも良いわい。ただただワシがやりたくて、勝手にやっただけじゃよ」


 ヘファイストスが左手で、僕の頭を撫でる。

 ふへへ……なんか、くすぐったいや……。


 僕が頬をポリポリとかくと、ヘファイストスさんが頭から手を離して、みんなの方に視線を向ける。


「早くエリアボスの部屋まで行こうぜ。が来る」


「アイツラ、滅茶苦茶エグいっすよね……」


「ボクは神器との相性が良いから大丈夫だったけど、ハルトは最悪死んじゃうよね……」


「そうか? 私は勝てると思うが……」


「そも。余は勝てる勝てないより、会わないに越したことは無いと思うがのう」


「「「それはそう」」」


 みんなはアルテミスさんの言葉に、満場一致で頷いた。

 その光景にハッとした僕は、みんなに問う様にして答え合わせをする。


「もしかしてさ。みんなが話してるアイツラって……」


 さっきからみんなが話しているアイツラとは……。

 必ず三十匹程度の群れを成し、小柄なモンスターでありながらも、チヒョウや人間を食らう最凶の存在……。


のこと?」


―――


【世界観ちょい足しコーナー】


『チヒョウ(食べれる)』

▶︎チーターの見た目と、ヒョウのしなやかな体を持つ

▶︎運動神経が良く、泳ぎから木登りまで出来る

▶︎チーターの様な爪をしており、かなり鋭利

▶︎殺気と気配を消せる

▶︎時速115kmを一瞬で出せる加速

▶︎群れは作らない

▶︎実は第1階層の食物連鎖の頂点だったりする

▶︎筋肉が凄く筋があるが、美味い



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