僕の目に映るは、チーターの見た目と、ヒョウのしなやかなでしっかりした体を持つモンスター、チヒョウ。
チヒョウの特徴は群れを作ら無い点と、体に幾つもの黒色斑点があり、爪が露出していることだが。
しかしチヒョウ最大の特徴は、他にある。
それは、──殺気と気配を完全に消せることだ。
チヒョウは気配を消して近づき、時速百十五キロメートルを超える速さで、獲物が気づく前に狩る。
そして・・・そんなチヒョウが、アルテミスさんに牙を向けて襲い掛かってきたのだ。
しかしそれに対して、十八歳組は誰も反応しない。
むしろ全員が心の中で、チヒョウに合掌していた。
それは何故か?
チヒョウがアルテミスさんを襲ったからだ。
「オメェよ。ネコの分際で、ワシの大事なアルテミスに牙向けてんじゃねーよ」
アルテミスさんが腰を抜かしたのか、尻餅をついた。
怒っているヘファイストスさんの右手が、チヒョウの喉元を手で握り潰していた。
アルテミスさんはそれを、ただただ見ている。
「すげぇ……」
「流石っすよね……」
「うん……」
ヘファイストスさんの動きが、何も見えなかった。
いや・・・正確には見えてはいたのだが、その行動を理解出来なかったのだ。
あ、滅茶苦茶速く立ち上がった……。
あ、ヘファイストスさんの手が動いた……。
この程度でしか、認識出来なかった。
ただただ感銘の言葉だけを漏らした。
そんな自分を情けないとは思わない。
どちらかと言えばそう、ヘファイストスさんスゲェと言う方が正しい反応だろう。
まぁ……僕以外のメンツは全員、全部が見えているんだろうけどさ。
『ニャー……ニャァ……二ャ・・・・・・』
グギッ……………………。
やがてチヒョウは、腕に血管が浮き出る程のヘファイストスの握力で、その首をへし折られ息絶えた。
チヒョウだったモノの体は力無く垂れ、ヘファイストスの手によってブラブラと宙に浮いている。
バタッ……………………。
ヘファイストスさんはチヒョウを捨て、尻餅をついているアルテミスさんに、逆の左手を伸ばした。
その手をアルテミスさんが取ると、ゆっくりと地面から立ち上がり、ヘファイストスさんが心配を呈す。
「大丈夫か、アルテミス? 怪我は無いか?」
「うむ、大丈夫じゃ……。なんだ、助かったぞ……」
「ふぉっふぉっふぉっ。そうかそうか……それなら良かったわい。やはり、アルテミスは素直じゃのお」
そう言ったヘファイストスさんは、地面に落としたチヒョウを手に取って、此方の方に微笑んだ。
「ヌボアは焦げてるし、今日はコイツを食おう」
「ヘファイストスさんありがとうございます。本当は、僕が殺るべき? だったのに……」
「気にせんでも良いわい。ただただワシがやりたくて、勝手にやっただけじゃよ」
ヘファイストスが左手で、僕の頭を撫でる。
ふへへ……なんか、くすぐったいや……。
僕が頬をポリポリとかくと、ヘファイストスさんが頭から手を離して、みんなの方に視線を向ける。
「早くエリアボスの部屋まで行こうぜ。
「アイツラ、滅茶苦茶エグいっすよね……」
「ボクは神器との相性が良いから大丈夫だったけど、ハルトは最悪死んじゃうよね……」
「そうか? 私は勝てると思うが……」
「そも。余は勝てる勝てないより、会わないに越したことは無いと思うがのう」
「「「それはそう」」」
みんなはアルテミスさんの言葉に、満場一致で頷いた。
その光景にハッとした僕は、みんなに問う様にして答え合わせをする。
「もしかしてさ。みんなが話してるアイツラって……」
さっきからみんなが話しているアイツラとは……。
必ず三十匹程度の群れを成し、小柄なモンスターでありながらも、チヒョウや人間を食らう最凶の存在……。
「
―――
【世界観ちょい足しコーナー】
『チヒョウ(食べれる)』
▶︎チーターの見た目と、ヒョウのしなやかな体を持つ
▶︎運動神経が良く、泳ぎから木登りまで出来る
▶︎チーターの様な爪をしており、かなり鋭利
▶︎殺気と気配を消せる
▶︎時速115kmを一瞬で出せる加速
▶︎群れは作らない
▶︎実は第1階層の食物連鎖の頂点だったりする
▶︎筋肉が凄く筋があるが、美味い